世界的な抹茶ブームの波が日本に押し寄せている。国内外からの強い引き合いを背景に、抹茶の原料となるてん茶の出荷価格は2倍以上に高騰。茶農家や関連企業には熱気が漂うが、バブルのような状況の余波を懸念する声もある。
「在庫がある分だけ買われた」。鹿児島県の老舗茶商「池田製茶」の池田研太社長は、抹茶人気の手応えをこう語る。ブームが始まった昨秋、30グラム入りの抹茶を販売サイトで「在庫あり」と入力すると注文が殺到。わずか数分で品切れになる状態が続いた。一部の客が買い占めるような状況は解消された今も、国内外から強い引き合いがあるという。
2024年に荒茶生産量日本一となった鹿児島県の茶業会議所によると、世界的なブームは米コーヒーチェーン、スターバックスが06年、「抹茶ラテ」を発売したことがきっかけ。健康的なイメージが注目を集め、米国を中心に人気が高まった。価格高騰を続けるコーヒーの代替として、インフルエンサーがSNSであざやかな色味が「映える」抹茶を取り上げるようになったことも追い風となり、昨年、人気が爆発した。
業界団体「全国茶生産団体連合会」によると、てん茶の平均出荷価格は5年連続で上昇を続けており、昨年は前年比2.6倍の1キロ8562円を記録した。鹿児島県内でも海外バイヤーと茶関連企業の商談が急増。ブームに乗り遅れまいと、茶農家は日本茶の中で最もポピュラーな煎茶から、人気が高まるてん茶へ転作を加速させている。
一方、抹茶シフトが進んだことで、煎茶の生産量は激減。価格が高騰して手に届きにくい存在になりつつあり、日常的に急須でお茶を入れる行為がぜいたくになりかねない事態となっている。
県茶業会議所の光村徹専務理事は、煎茶価格の高騰は客離れを招いており、「スーパーマーケットの日本茶の棚は、麦茶などほかの飲料に置き換えられている」と指摘。煎茶などを愛飲する日本茶ファンを失えば、茶農家は抹茶ブームが去った後、窮地に立たされかねないと危機感を示している。
〔写真説明〕ブームで売り切れが続いた抹茶缶について話す老舗茶商「池田製茶」の池田研太社長=7月17日、鹿児島市
〔写真説明〕抹茶の原料であるてん茶の取引会で、入札する茶を吟味する茶商=7月16日、鹿児島市
〔写真説明〕茶業界の現状について話す鹿児島県茶業会議所の光村徹専務理事=7月15日、鹿児島市