九州で飛んで話題となった“未来の旅客機”、早くも軍用機に!? 防衛市場参入の納得のメリット

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2026年4月に日本で実証飛行した米BETA社が、3か月後に軍用機を発表。民間機メーカーが防衛市場に力を入れる背景とは。

日本で電動機を飛ばしたメーカー、3か月後には「軍用機」

 2026年4月、アメリカの電動航空機メーカーであるBETA Technologiesが、日本で実証飛行を行いました。そのわずか3か月後、同社は世界的な航空ショーで軍用のVTOL(垂直離着陸機)を初公開しました。民間向けの航空機を開発してきたメーカーが、防衛市場にも力を入れる背景には何があるのでしょうか。

 イギリスで2026年7月に開催されたファーンボロー国際航空ショー。その会場でBETA Technologiesが初公開したのが、軍用ハイブリッドVTOL「ALIA MV250」です。

 BETAはアメリカの新興航空機メーカーで、電動航空機「ALIA」シリーズを開発しています。日本との関わりも深く、2026年4月には通常離着陸型の「ALIA CX300」を九州へ持ち込み、実証飛行を行いました。

 今回のファーンボローで筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)がBETAの関係者に話を聞いたところ、九州での試験に対する反応は非常に良かったそうです。しかし、今後の日本国内における試験や事業展開については、現時点では未定とのことでした。

 そんなBETAがファーンボローで大きくアピールしていたのが防衛事業であり、その目玉となった機体がこのMV250だったのです。

 BETAが防衛市場にも力を入れる背景には、民間航空機と軍用機では実用化までの仕組みが異なるという事情があります。

 民間航空機は、試験機が無事に空を飛んだからといって、すぐに商品として販売できるわけではありません。安全性を証明するための認証「型式証明」を取得し、量産体制を整えて顧客へ引き渡すまでには、長い時間と多額の資金が必要になります。特に電動飛行機という新しいカテゴリーの機体となれば、新たなインフラの整備や運用方法の確立も不可欠です。

 BETAはALIAシリーズのVTOL機について、型式証明の取得を2027年末から2028年初頭に目指している段階です。日本で試験を行ったALIA CX300にしても、まだ本格的な商業運航には至っていません。

 一方、防衛分野では事情が異なります。

飛行機は「飛べても売れない」!? 軍用機なら事情が違う

 軍用機には民間機とは異なる承認制度があり、正式な承認を得る前から、一定の試験や実証を行うことが可能です。メーカー側から見れば、研究開発の段階から政府との契約によって資金を得られるという大きなメリットがあります。

 実際、BETAは米空軍や米陸軍とVTOL、ハイブリッド推進、自律飛行などの研究開発を以前から進めています。同社によると、米軍との研究開発契約はこれまでに約5000万ドルにも上ります。つまり、民間機がまだ型式証明を目指している段階で、防衛事業ではすでに収益を上げているのです。

 今回発表されたMV250は、パイロットを必要としない無人航空機です。完全なバッテリー式ではなく、GE Aerospaceと共同開発するターボジェネレーターを搭載したハイブリッド・エレクトリック方式を採用しています。さらに、Sikorskyの自律飛行システム「MATRIX」にも対応する計画です。性能としては、2000ポンド(約907kg)の物資を搭載し、250海里(約463km)以上の作戦行動半径が想定されています。

 この機体に期待される任務のひとつが、敵の攻撃を受ける可能性がある危険な地域への無人補給です。有人ヘリコプターで人員を危険にさらす代わりに、弾薬や燃料、補修部品などを運びます。

 もちろん、これはBETAが民間航空機を諦め、軍用機メーカーへ転身したことを意味するわけではありません。民間型と軍用型では機体構造や推進システムなど多くの技術を共有できます。一方の開発で得られた成果を、もう一方へ生かすことも可能なのです。

 九州で好評を得たものの、日本での次の展開がまだ決まっていない電動航空機ALIA。その技術を利用した軍用機は、すでに米軍から開発資金を得ながら、MV250という具体的な姿になりました。民間向け電動航空機が認証を取得し、本格的な商業運航に入るまでには、まだ時間がかかりそうです。その技術が一足先に実際の運用へ近づく場所は、軍事分野になるのかもしれません。