JR岡山駅には、鉄道好きであれば名前を聞いただけでちょっとテンションが上がってしまう“知られざる食堂”があります。実際に行ってみると、令和の駅前とは思えないほど価格が良心的でした。
社員食堂でありながら一般客も歓迎
JR岡山駅といえば、山陽新幹線と山陽本線、瀬戸大橋線などが乗り入れる中国・四国地方屈指の鉄道拠点です。もちろん駅周辺には多くの飲食店がありますが、実はこの近所に、鉄道好きであれば名前を聞いただけでちょっとテンションが上がってしまう“知られざる食堂”があります。その名も「貨物JR食堂」。社員食堂でありながら一般客も歓迎しているという、ちょっと珍しいお店です。しかも実際に行ってみると、令和とは思えないほどコストパフォーマンスに優れていました。
店内ではメイン料理だけでなく、天ぷらや小皿料理なども並んでおり、好きなものを組み合わせて食べることができます。この時点で筆者のような「いっぱい取った方がお得だろう」という間違った思想を持つ人間には危険なシステムです。しかも、一品一品がかなりリーズナブル。気が付けばトレーの上が大変なことになりそうなので、理性を保ちながら選んでいきます。
まず手を伸ばしたのはカレー。価格はなんと500円です。見た目は具材がゴロゴロ入っているタイプではなく、ルーの中にしっかり溶け込んでいるタイプ。しかし、よく見ると細かなお肉が入っています。こういうのでいいんです。いや、こういうのが食べたかったんです。
一口目で感じるのは、意外にもしっかりとしたスパイシーさです。しかし、食べ進めていくと今度は玉ねぎ由来と思われる甘みがじわじわと追いかけてきます。奇をてらった味ではありません。かといって単調でもない。「社員食堂のカレー」と聞いて想像する安心感を、そのまま一段レベルアップさせたような味です。毎週食べても飽きなさそうな、誰が食べても「うまい」と感じられそうなチューニングでした。
追加料金で小皿の肉団子と玉ねぎを甘辛い餡で炒めたものもチョイスしました。価格は失念してしまいましたが、こちらも良心的な価格です。雰囲気としては酢豚に近く、こちらもいい意味で家庭的です。社員食堂に来たはずなのに、なぜか実家へ帰ってきたような感覚になります。こういうおかずとカレーを交互に食べると、もう箸が止まりません。さらに卓上のコショウと一味をビタ掛けすると、一気にパンチが増します。優しい味を自分で優しくなくしていく。最高です。
その後さらにもう1品追加してしまいました。200円のそばです。
200円の「社食そば」食べてわかった衝撃
そばのつゆは関西圏らしい透き通った色合いで、麺は白っぽく、やや太め。細いうどんのようにも見えます。そこへネギ、天かす、かまぼこという非常にシンプルな布陣です。見た目からして「毎日食べられる食堂のそば」という雰囲気が漂っています。
早速いただいてみると、見た目通り非常にあっさり。強烈な個性で殴ってくるタイプではなく、誰が食べてもホッとできそうな優しい味です。しかし、ここで仕事をするのが天かすでした。あっさりしたつゆを吸った天かすから油のコクがじわっと広がり、シンプルなそばにちょうどいい厚みを加えてくれます。天かすを入れた人、神采配です。
500円のカレーに200円のそば。そこへ小皿料理を組み合わせても、一般的な駅ナカや駅前の飲食店と比べればかなりリーズナブルです。それでいて、「安いからこれでいい」という味ではありません。毎日の仕事の合間に食べることを考えたような、派手すぎず、それでもしっかり美味しいです。昭和の食堂を思わせるノスタルジックな空気も含め、岡山駅周辺にこんな場所が残っていたこと自体が驚きでした。
たしかに、観光客向けに派手な名物料理を出す店ではありません。しかし、「そう、こういうのでいいんだよ」と言いながら日常的に通いたくなる安定感と、令和とは思えないコストパフォーマンスが詰まった、知られざる名店でした。
ただし、ひとつだけ問題があります。安すぎます。
カレーが500円、そばが200円。さらに目の前には小皿料理や天ぷらまで並んでいます。「安いからもう一品くらい大丈夫」という悪魔の計算が簡単に成立してしまうのです。これを毎日のように繰り返せば、財布には優しい一方、ただでさえ手に負えないほど育成されている腹囲には、まったく優しくない可能性があります。
筆者の場合、毎日通える距離にないくらいが、むしろちょうどいいのかもしれません。