明治安田J1百年構想リーグではEAST5位、最終順位は10位と悪くない結果を残した東京ヴェルディ。その後、深澤大輝(→アビスパ福岡)や稲見哲行(→徳島ヴォルティス)らが移籍したものの、鹿島アントラーズから溝口修平、川崎フロンターレから神田奏真をそれぞれ期限付き移籍で獲得。堅実な補強とこれまでの積み上げを生かし、2026/27シーズンを迎えられたはずだった。
しかしながら、チームの大黒柱であるキャプテンの森田晃樹を筆頭に、齋藤功佑、山見大登が立て続けにケガで離脱。開幕に間に合わず、第3節終了時点で2分け1敗とスタートダッシュに失敗してしまった。森田は天皇杯2回戦のザスパ群馬戦で復帰したものの、今度は福田湧矢、宮原和也が今節の鹿島アントラーズ戦のメンバーから外れた。こうした苦境に追い打ちをかけるように、森田が左足首付近を痛めて負傷交代。非常に困難な状況に直面した。
このタイミングのボランチの交代カードは山本丈偉だったが、後半28分には平川怜に代わって柴戸海が登場。30歳のMFが新天地でのリーグ戦デビューを果たした。すでに鹿島が2−0とリードしていて、ヴェルディは一方的に押し込まれる展開を強いられていたが、柴戸は「しっかりボールを取りに行かないと始まらないと思うので、そこを意識しました」と発言。アグレッシブさを押し出そうとした。それでも、流れを引き戻すには至らず、結果的に0−2のまま敗戦。これで開幕から2分2敗の勝ち点2でJ2降格圏の19位に沈んでしまった。
それでも「自分自身としてはもっとコンディションを上げて、チームに貢献したいと思います」と柴戸は気丈にコメント。開幕4戦未勝利の名門クラブを活性化に持てる力の全てを注ぎ込む構えだ。ご存じの通り、柴戸は計7年半という長い月日を過ごした浦和レッズとの契約が解除となり、その後の動向が注視されていた。「一体、何が起きたのか」。「どうしてこのタイミングで契約解除なのか」。疑問の声もあちこちから噴出し、本人も非常に不安定な時間を過ごしたことだろう。
発表から12日後、ヴェルディ入りが正式決定。江尻篤彦強化部長が明治大学の大先輩だったこともプラスに働いたと見られるが、彼のキャリアが宙ぶらりんにならなかったことは幸いだった。「本当に自分がプレーできるかどうか分からない状況の中で、いろんな方のおかげで今こうしてサッカーを続けていられるのはすごく有難いこと。感謝の気持ちはあります。このエンブレムやユニフォームを着てプレーすることは当たり前じゃない。これだけ多くのサポーターの方が温かく迎え入れてくれて、雨の難しいゲームでも応援してくれていた。だからこそ、少しでも早く応えたいと思います」と神妙な面持ちで言及。心機一転、ヴェルディのために戦い抜く覚悟を強めた。
目下、ケガ人続出で選手のやりくりに苦労している印象も強い。そういう時こそ、柴戸のような新たな戦力が起爆剤にならなければいけない。ボランチに目を向けると復帰したばかりの森田が再び離脱。食野壮磨が欠け、山本も思ったようなパフォーマンスを見せられていないだけに、経験豊富な柴戸にはより大きな期待が寄せられるところだ。
2024年には浦和からFC町田ゼルビアへの期限付き移籍を経験し、22試合に出場している。当時の黒田剛監督と今の城福浩監督は、強度や球際の強さを重視する点で通じるところがある。柴戸の状態が上がってくれば、中盤でボール奪取力や1対1のバトルのところでかなり大きな役割が託されるのではないか。「城福監督とはコミュニケーションを取っていますし、練習やミーティングでの要求も理解しています。今のヴェルディは若さがある一方、日々の練習から自分の100%を出すというところが少し足りないのかなと。鹿島の選手たちは自分たちでピッチ内で修正したり、どう戦うかを意思統一することができている。チームをそう仕向けていくのが、ベテランである自分の一つの役割でもあると感じています。今は自分の持っている良さをまだまだ出せていないと思うので、次の神戸戦を含めて、今後に期待してもらいたいと思います」。柴戸はここからが本番だと闘争心を燃やしている。
契約解除というショッキングな出来事を経て、自身を拾ってくれたヴェルディで一体、何ができるのか……。それは柴戸のフットボーラー人生を大きく左右する命題である。持ち前の泥臭さとしぶとさを存分に発揮してチームを救い、自分の存在価値を証明することでしか、明るい未来は開けてこない。その重要性を本人が誰よりもよく自覚しているはずだ。
取材・文=元川悦子
【ハイライト動画】東京ヴェルディ×鹿島アントラーズ