「低っ!」 “走る展望台”の2階建てバス、眺望が売りなのに全高を抑える意外なワケ

オフィス需要活発化でREIT注目

2階建てバスの最新型は、全高をきっちり抑えています。眺望が売りのバスなのに、なぜ高さを抑えているのでしょうか。

決め手は「3.8m」という高さの上限

 高速バスや観光バスの花形といえば、眺めが良くて気分が上がる2階建てバス、いわゆる「ダブルデッカー」です。近年は海外メーカー製の新型車両が各地の路線でじわじわと増えています。

 近年導入されている2階建てバスのなかには、日本の道路を走りやすいよう、全高を3.8m未満に収めたモデルがあります。眺望が売りのバスなのに、なぜ高さをここまで抑えているのでしょうか。

 答えのカギは、日本の道路に設けられた「高さの上限」にあります。道路を通れる車両の大きさは道路法などで決められており、高さの一般的な制限値は原則3.8mです。これを超える車両を通すには、原則として特殊車両通行許可が必要になります。

 この3.8mは、道路の構造を守り、交通の危険を防ぐために設けられている制限値の一つです。一定の条件を満たして指定された「高さ指定道路」では4.1mまで通行できますが、すべての道路で認められるわけではありません。

 多くの道路を特別な手続きなしで走りやすくするには、この3.8m以内に収めることが重要になります。なお、実際の運行では、道路ごとの高さ制限や経路の条件も確認する必要があります。

 この3.8mという上限は、2階建てバスを日本で走らせるうえで大きな条件になります。背を低くすれば道路の制限はクリアできますが、今度は車内が窮屈になってしまうからです。

それでも車内の高さが欲しい

 2階建てバスは、限られた高さの中に1階と2階を収める必要があります。かつて高速路線などで使われた三菱ふそうの「エアロキング」は、全長約12m・3軸の大柄なボディを持つ車両でした。2010年に生産を終えたあとは、国産の新車2階建てバスがない状態が続きました。

 その空白を埋める存在として登場したのが、スウェーデンのスカニアとベルギーのバンホールが手がける「アストロメガ」です。はとバスなどの働きかけを受け、日本向けモデルが開発され、2016年に輸入が始まりました。

 ここで注目したいのが、サイズです。日本向けの「TDX24」は、日本の道路事情に合わせて寸法が抑えられています。日本バス協会の記事によると、はとバスの新型2階建て「アストロメガ」は、全長11.990m、全幅2.490m、全高3.780mと紹介されています。高さ3.8mの一般的な制限値を、わずかに下回る寸法に収めているわけです。

 それでも車内空間には工夫があります。アストロメガは、エアロキングと比べて2階席の有効面積が広く、前後12列の座席を配置しても、通常車両の10列とほぼ同じシートピッチが確保できるとされています。高さを抑えながらも、座席配置に余裕を持たせる工夫が見られます。

 ちなみに、かつて高速バス「つくば号」などで活躍したドイツ製の超大型2階建てバス「メガライナー」は、全長が約15mと長く、一般的な制限値の12mを超えるため、特殊車両通行許可を得て運行されていました。海を越えてくる大きなバスたちは、それぞれ日本の道路のルールに合わせる工夫を重ねてきたのです。

 次に2階建てバスに乗る機会があれば、その堂々とした車体が、3.8mという制限値を意識して設計されていることを思い出してみてください。背を抑えつつ車内空間も確保する、細やかな設計の工夫が、足元ならぬ“頭上”に隠れているのです。