「あれ、車掌がいない!」首都圏の“大動脈”で拡大するワンマン運転、その安全を支える「縁の下の仕掛け」

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地方だけでなく都市部の鉄道でも、車掌がいない「ワンマン運転」がじわじわ広がっています。運転士一人で本当に大丈夫なのでしょうか。安全を支える仕掛けが、ホームや運転席に隠されています。

都市部にも広がるワンマン運転

 通勤や通学で列車に乗ったとき、「あれ、車掌さんの放送がない」と感じたことはないでしょうか。運転士一人だけで列車を走らせる「ワンマン運転」が、今、地方だけでなく都市部の路線にも広がっています。

 例えばJR東日本は、首都圏の主要な路線で2030年頃までワンマン運転の導入を進める計画です。その第一歩として、2025年3月に常磐線(各駅停車)と南武線でワンマン運転を始めています。

 背景にあるのが、「人手不足」や働き方の変化です。JR東日本は、人手不足や社員の就労意識の変化などに対応し、鉄道をより効率的でサステナブルな輸送モードへ変えていくためにワンマン運転を拡大すると説明しています。働く人が減っていくなかでも、鉄道を維持していくための工夫というわけです。

 とはいえ、ここで気になるのが安全面です。車掌がいなくなって、列車の安全は本当に守られるのでしょうか。

 一般に車掌は、ドアの開け閉め、ホームや車内の安全確認、車内放送などを担っています。ワンマン運転では、こうした乗降時の確認や案内の一部を、運転士や設備が担うことになります。

 とりわけ大事なのが、ドアを閉める際の安全確認です。乗客の乗り降りを見落とさないため、ワンマン運転には様々な仕掛けが用意されています。

 昔ながらの方法が、鏡(ミラー)です。ホームに設置したワンマンミラーなどで、運転士が乗り降りやホーム上の安全を確認します。ただし、編成が長くなると鏡だけでは確認しにくくなります。

 そこで使われるのが、カメラとモニタです。カメラの映像を運転台などのモニターに映し、運転士の乗降確認を支援する仕組みです。JR東日本の車両搭載型ホームモニタシステムでは、車両側面に取り付けたカメラの映像を乗務員室のモニタに表示し、乗降確認を支援すると説明されています。

 この方式は地上の設備を必要としないため、比較的両数の多い列車にも適用しやすく、列車両数や停車位置の変更による制約も受けにくいという利点があります。運転士は乗務員室のモニタで、ドア付近の様子を確認できます。

ドアだけじゃない! 「もしも」に備える指令室との直通ライン

 安全を支えるのは、乗り降りの確認だけではありません。電車を正しい位置にぴたりと止める仕組みも欠かせません。

 ホームドアのある駅では、列車を決まった位置に止める精度も重要になります。そのため、列車を決まった場所に自動で止める定位置停止装置(TASC)などが使われます。

 JR東日本は、輸送の安定や運転士の負担軽減のためにTASCを整備し、京浜東北・根岸線ではATO(自動列車運転装置)も導入すると説明しています。機械が運転操作の一部を支えることで、運転士の負担を減らす狙いがあります。

 心配なのは、車内でトラブルや急病人が出たときです。車掌がいないなか、こうした「もしも」に備えた仕組みも整えられています。

 その一つが、指令室との直通ラインです。車内で非常事態が起き、乗客が非常通報装置(SOSボタン)を押したあとに運転士が応答できない場合でも、輸送指令室に直接つながり、乗客と指令員が会話できるようになっています。さらに、運転士が車内放送できない状況のときなどには、輸送指令室から列車に向けて車内放送を行うこともできます。

 また、防犯面の備えも進んでいます。国土交通省は、2021年8月の小田急線車内傷害事件や同年10月の京王線車内傷害事件などを受け、防犯関係設備や非常用設備に関する技術基準の検討を進めました。その後、対象となる新造車両などでは車内防犯カメラの設置が義務付けられています。万一の際に、車内の状況を把握しやすくするための備えです。

 こうしてみると、ワンマン運転の電車には、車掌が担ってきた確認や案内を補う仕掛けがいくつも組み込まれていることが分かります。鏡やカメラ、自動で止まる装置、そして指令室との直通ライン。一人の運転士の背後で、たくさんの技術と運行管理の仕組みが安全を支えているのです。