【ビドゥール(ネパール中部)時事】3階建てに見えた住宅は5階建てだった。ネパール中部ヌワコット郡ビドゥール地区にある集落は土石流がもたらした泥で埋まり、川沿いの建物が軒並み破壊されていた。
◇鉄橋も崩壊
首都カトマンズから車で約2時間半。29日訪れたヒンズー教聖地として知られる町デブガットでは、踏み入れた足がくるぶしまで地面に沈み込んだ。中国側から流れるボテコシ川に架かっていた鉄橋は根元からもぎ取られたかのような無残な姿。町では十数人が犠牲になったという。水牛の死骸が横たわり、異臭が漂う。
「すべて消えてしまった。何も残っていない」。住人のトラック運転手ビシュヌ・プラサド・パクレルさん(39)は憔悴(しょうすい)した様子でそう繰り返した。
土石流の発生時は荷物を運送中で、上流のラスワ郡に住む友人から「すぐに避難させろ」と電話を受けた。慌てて連絡を入れ、家族は難を逃れた。「もし電話がなかったら逃げ遅れていた」と振り返る。
一方で自宅や家財は消失。今は家族で一時避難所の学校に身を寄せている。「政府には食料や仮設住宅を用意してほしい」と声を詰まらせた。
損壊した自宅に戻り、家財を運び出す住人の姿も。親族の片付けを手伝っていたカトマンズ在住の玩具店経営スマタ・バスコタさん(33)は「とてもきれいな市場があったのに。ここにはもう二度と住めないのでは」とこぼした。
◇再来懸念
同じビドゥール地区の町ドゥンゲも大きな被害を受けた。中心部へ向かう道は通行止めに。重機が稼働し、上空には別の被災地へ向かうとみられるヘリがひっきりなしに行き交っていた。
主婦パルバリ・バッタライさん(37)は上流にある水力発電施設が破壊されるのを目の当たりにし、急いで高台に避難した。「地震のような大きな音が聞こえた。生き残れるとはとても思えなかった」と恐怖を語る。
心配しているのは「せき止め湖」の決壊に伴う土石流の再来だ。「ここも安全ではないが、自宅を空けて他の所には行けない」と不安そうに話した。