首都高速道路が、地震防災訓練の一環として「道路啓開訓練」を報道陣に公開しました。
首都直下型地震を想定して訓練
首都高速道路は2026年8月26日、地震防災訓練の一環である「道路啓開(けいかい)訓練」の様子を報道陣に公開しました。
道路啓開とは、施設の破損や車両などでふさがれた道路を応急的に復旧し、緊急救援ルートを確保する一連の作業のことです。最近では2026年7月末に発生した「令和8年熊本地震」や翌月の「令和8年8月千葉豪雨」の被災地などで、破損した道路の応急復旧や、水没した車両の撤去といった道路啓開の作業が注目されたのも記憶に新しいところです。
首都高は首都直下地震をはじめ、大規模災害の発生時に警察や消防、自衛隊の救助部隊がいち早く被災地に向かうための通行ルートとして使用が想定されています。今年3月には、災害時に関東地方の関係機関が連携して、通行機能を確保するための「関東ブロック道路啓開計画」も策定されました。
この計画では、周囲8方向から都心へ向かう優先ルートを設定し啓開する「八方向作戦」などが示されており、このうち首都高は東名高速や国道246号などとともに、南西方向から通行する際の広域ルートに位置付けられています。
今回の訓練は、関東地方整備局および川崎国道事務所との連携・協力のもと、最大震度7の首都直下地震が発生した場合を想定して実施されました。
東名高速が川崎付近で通行不可、国道246号も瀬田交差点(東京都世田谷区)付近で上下線とも不通にーーという想定です。優先啓開ルートとして、東名高速から国道246号を経由し、首都高3号渋谷線を通って、都心に至る通行機能を確保します。
会場には、地震により通行できなくなった国道246号の新二子橋と、3号渋谷線(上り線)渋谷入口付近を模した道路が置かれ、それぞれ前者では30cmの段差、後者では段差30cmと目開き50cm、そして横転した乗用車を含む5台の放置車両を撤去・克服する作業が行われました。
道路啓開に欠かせない特殊アイテムたち
まず道路啓開部隊は、車両の啓開の前にドローンを現地に向かわせ、現場の状況を把握したうえで、作業プロセスを決定。放置車両をカメラで撮影した後、車両の移動を行った旨の通知書を車体に貼り付けます。
これは2014年に改正された「災害対策基本法」に基づく措置で、災害時において放置車両が緊急車両の通行を妨げる場合は、道路管理者が所有者に断りなく、車両を移動させることが可能となっています。
その後、横転した車両以外は、各タイヤの下に設置するローラー付きの「ゴージャッキ」という器具で4輪のうち3輪を持ち上げ、道路脇へと人力で移動されました。また、牽引が必要な車両は「トーイングローダー」と呼ばれる特殊車両によって次々に撤去。横転した車両も、レッカー車で引き起こしたうえで移動されました。
そして作業は道路の応急復旧へと進みます。
はじめに段差や目開きの大きさを測定し、持ち運びに優れる「軽量段差修正材」を使って道路をクルマが通れるようにしていきます。段差は発泡ガラス素材を詰めた「軽量土のう」(1袋およそ5kg)や、発泡ポリスチレンやFRP(繊維強化プラスチック)でできた「EPSスロープ」、ゴムマットなどで克服。また、目開きはFRP製の「F-Deck」という渡し板で対応していきます。
こうして、車両と段差によって通行できなくなっていた道路は1車線分が通れるようになりました。最後はトヨタ「ランドクルーザー」の道路パトロールカーや大型クレーン車など、緊急車両が実際に走行して点検が行われました。
今回の訓練に当たり、首都高速道路の東京西局長である松尾俊寛さんは「先日発生した『令和8年熊本地震』や『令和8年8月千葉豪雨』も踏まえ、被災地への救助・救援活動を支える道路啓開は、道路事業者としての役割、行うべき使命であり、我が事として捉えています」とコメント。災害発生時における、通行ルート確保の重要性について強調しました。