「名前だけ有名」だった無人駅の逆襲がスゴい! 富士急が“増発の切り札”に大抜擢した全貌

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山梨県の富士急行線にある「寿駅」。縁起の良い名前で入場券が人気ですが、駅は無人。しかし今、増発を支える重要な駅へと変貌を遂げようとしています。

「寿」入場券、でも“本家”では買えない?

 富士山麓電気鉄道の富士急行線には、なんとも縁起のよさそうな「寿駅」があります。この「寿」という名前自体が、駅の大きなブランドになっています。

 代表的なのが「寿入場券」です。「幸せへの入場」という意味を込めた縁起物として販売されており、購入すると「寿」と書かれた専用の袋に入れて渡されます。さらに毎年正月には、その年の干支を描いた硬券タイプの「干支寿駅入場券」も登場します。単なるきっぷというより、お守りや記念品のような存在です。

 ところが面白いことに、この「寿入場券」を寿駅で買うことはできません。寿駅は駅員のいない無人駅だからです。入場券は富士山駅や河口湖駅など、別の有人駅で販売されています。名前は縁起物として知られているのに、その“本家”では入場券すら買えないのです。ただ、その姿もまもなく大きく変わろうとしています。

 では、実際の寿駅は現状どんな場所なのでしょうか。筆者が2026年8月に訪れてみると、ホームはひとつ、線路も1本だけのシンプルな構成でした。駅舎は無く、屋根付きの待合室が2つあるだけで、もちろん駅員もいません。専用の袋まで用意された「寿入場券」から何か特別な駅を想像すると、そのギャップはかなり大きなものです。

 富士急行線には観光客で賑わう駅がいくつもありますが、寿駅はそれらとは対照的で、地域の利用者を支える素朴な無人駅といった雰囲気です。

 ただ、開業当初からこの名前だったわけではありません。1929(昭和4)年の開業時は、所在地にちなんだ「暮地(くれち)駅」でした。しかし「暮」の字が「墓」に似ていることから、地域の発展を願って1981(昭和56)年に「寿駅」へ改称されています。「寿」という立派なブランドを持つ一方、その“本家”は小さな無人駅。このアンバランスさも、寿駅の面白いところでしょう。

小さな駅が「増発の切り札」に

 ところが、その小さな駅の姿もまもなく過去のものになります。ホームの隣では工事が進められていました。富士山麓電気鉄道は、2026年2月より寿駅に新たな線路とホームを設ける工事に着手。完成すれば、大月方面と河口湖方面の列車が寿駅ですれ違えるようになります。

 なぜ、これほど小さな無人駅を改良するのでしょうか。理由のひとつが、富士急行線の増発です。富士急行線は全線が単線のため、上下の列車がすれ違える場所が限られると、運行できる本数にも制約があります。そこで寿駅にもう1本線路を増やし、列車同士がすれ違えるようにするというわけです。

 工事の完成は2027年12月末の予定で、設備完成後の2028年3月にはダイヤ改正も予定されています。利用者の多い日中を中心に、それまで上下各毎時2本程度だった列車を約3本へ増やす計画です。これまで「寿」という名前が目立っていた駅が、今後は富士急行線の増発を支えるという、鉄道駅としても重要な役割を担うことになります。

 縁起のいい名前が先に有名になった「寿駅」。その“本家”もいま、大きく姿を変えようとしています。