冷房が付いているはずの地下鉄が暑いことがあります。特に東京メトロ丸ノ内線などで指摘されますが、これには車両や駅の構造的な問題、そして混雑などが複合的に絡んでいるようです。
車両のエアコンはどこにある?
冷房が付いている電車なのに、暑いことがあります。SNSでは、東京メトロの丸ノ内線をはじめ、比較的小さい電車が走る路線の駅ホームや電車内が暑いという投稿を見かけます。これらの地下鉄路線も車両や駅に冷房を導入していますが、車両の冷房はどこに備えているのでしょうか。
東京の地下鉄を例にすると、丸ノ内線と銀座線はトンネルの寸法が比較的小さく、特に天井と車両の屋根との間は狭くなっています。
一般的な電車は、電気を供給する架線(電車線)がトンネルの天井にあり、架線からパンタグラフを介して電気を取り入れて走っています。しかし、丸ノ内線と銀座線は第三軌条方式を採用しています。この方式は足元のレールの脇にもう1本レールを敷いて、そこから電気を取り入れています。第三軌条方式とすることでトンネルの寸法を抑え、地下鉄の建設費を抑制できる利点があります。
通勤電車の大半は、冷房が屋根にあります。冷気は暖気より重く下に流れるため、冷房は上に置く方が合理的です。これは、一般家庭でエアコンを天井に近い場所に取り付けるのと似ています。電車の場合は壁に付けるとスペースを圧迫するため、屋根に付けるのが最適となります。
しかし、先の理由で丸ノ内線と銀座線の車両は屋根に冷房装置をそのまま載せることができません。このため、冷房装置は車両の屋根と天井の間に埋め込む形で設けられています。
丸ノ内線と銀座線の車両の冷房は、屋根と天井の間にあるわずか30cm程度のすき間にあります。薄型の冷房装置が開発されて各車両の両端に1台ずつ、計2台です。
新幹線のように床下に冷房装置を設ける手もありますが、小さな地下鉄だと走行用の機器だけで床下は埋まっており、冷房装置に割くスペースがありません。仮に置けたとしても、トンネル内でホコリを吸い込んだり、逆に撒き散らしたりする恐れもあり、現実的なやり方ではないのかもしれません。
銀座線や丸ノ内線で使用されている冷房装置の能力は1台あたり23.3kW、1両だと46.6kWです。薄型という制約がありますが、丸ノ内線と同等の寸法(全長18m級)で地上を走っている車両に搭載されている冷房装置の能力と同等です。
丸ノ内線の電車はなぜ暑い?
しかし、どうして丸ノ内線は暑いのか。考えられる理由としては、混雑・冷房装置の場所・冷房装置からの排熱があります。
駅や電車内が常に混み合っていると、人の体温に冷房が負けてしまうことがあります。丸ノ内線では車両の大規模改修や、新型2000系電車への置き換えに際して冷房装置の能力が強化されており、以前よりは状況が改善されています。
次に、冷房装置の場所の問題です。実のところ、通勤電車に備えた冷房装置だけでは、超満員の車内を十分に冷やせません。完全に冷やすには冷房の能力を大幅に上げる必要があります。このため、通勤電車は冷房装置に加え、天井内などに送風機を備えて風を送ることで体感温度を下げる仕組みを採用しています。家庭でエアコンに扇風機やサーキュレーターを組み合わせると節電になる、という考えに似ています。
銀座線や丸ノ内線の車両も、天井内に送風機を備えています。しかし前述のとおり屋根と天井の間には余裕がなく、冷房装置のある車両両端に送風機を設ける場所が残っていません。そのため車内の端の部分は暑くなりがちです。
最後は、冷房装置の排熱の問題です。家庭用のエアコンは室内機と室外機があり、室内機からは冷たい空気が、室外機からは熱い空気が吹き出しています。
電車の冷房装置は、家庭用エアコンの室内機と室外機がワンセットになった構造です。冷たい空気が客室側に送られる一方で、屋根からは熱い空気を捨てています。電車が駅に停車すると、電車の冷房装置からの排熱で駅が暑いという結果を招いてしまいます。
地下鉄の駅の構内は狭い上に、大勢の人が利用することで、常に熱気がこもっています。駅にも冷房装置がありますが、トンネル内や駅の出入口は開放しているために、冷房能力を上げても冷たい空気は逃げてしまいがちです。さらに空気の入れ替えや、火災発生時は煙を排出する必要もあるため、駅には換気装置も備えています。常に空気が入れ替わっていますが、熱気がなかなか逃げないのが不思議なところです。
加えて、ヒートアイランド現象や昨今の地球温暖化で夏の最高気温が毎年のように更新されるとなると、いくら冷房装置の能力を上げても「いたちごっこ」になっているのが実態です。