ベンツが公開した最新鋭「軍用トラック」は戦車すらも軽々引っ張るほどのモンスタースペック! さらに現在の戦場に適した構造とは

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メルセデス・ベンツといえば、日本では高級車のイメージですが、欧州では軍用トラックのメーカーとして知られています。そのうちで最新鋭なのが「メルセデス・ベンツ・アロクス 4463AK 8×8/4」です。

戦車も引っ張る軍用トラック

 メルセデス・ベンツといえば、日本では高級車のイメージですが、欧州では軍用トラックのメーカーとして知られています。そのうちで最新鋭なのが「メルセデス・ベンツ・アロクス 4463AK 8×8/4」です。

 初公開は、2026年6月にフランス・パリ近郊で開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ」においてです。

 アロクスはメルセデス・ベンツ・トラックスが展開するモデルで、超重量物輸送向けの大型トラックです。実は日本でも2025年から正規導入が始まっており、風力発電設備や変圧器、大型インフラ機材などを運ぶ超重量物輸送向けとして販売されています。

 ユーロサトリで披露されたのは、そのアロクスをベースにした軍用仕様の車両となります。

最大の特徴は、総牽引重量(GCW)が最大250トンに達することです。これは車両単体の重量ではなく、トラクター本体とトレーラー、積載した戦車、さらには装甲や弾薬などを含めた車両全体の重量を指します。これにより、70トン級の最新主力戦車を積載した大型トレーラーでも余裕を持って牽引できます。

 エンジンは直列6気筒ディーゼルのOM473で、最高出力625馬力、最大トルク3000Nmを発揮します。このトルクの数値は、たとえ数百トン近い積み荷を積載したとしても、坂道でも重さを感じさせずに力強く発進できるレベルです。なぜ、これほどパワフルなのかというとこの車両は、軍隊での戦車輸送などを想定して作られている重牽引仕様だからです。

 後部にはトレーラーを接続するトレーラーカプラーの他に、25トン級ウインチを2基装備。この車両自体は敵と直接戦う車両ではありませんが、戦車や装甲車の長距離移動を支える貴重な支援車両であり、地味ながら軍の機動力を支える重要な存在だといえるでしょう。

 では、なぜここまで大きな牽引能力が必要なのでしょうか――背景にあるのは、現代の主力戦車の重量増加です。

 たとえばフランス陸軍のルクレール戦車は、おおむね50トン台後半の重量と言われていますが、最新型のルクレールXLRでは63トンにも増加しています。ドイツのレオパルト2も改良を重ねるごとに重くなり、最新型のレオパルト2A8ではその重量はなんと70トン級にも達します。近年の主力戦車は、装甲強化や搭載機器の増加などによって、”肥満化”ともいえる重量増加傾向にあります。

 これら重量級戦闘車両を輸送するには強力なパワーと輸送能力が必須となります。本トラックの牽引力の目安となるGCWには、重い主力戦車の重量だけでなく、トラック本体やトレーラーの重量や燃料・弾薬なども含むことになり、これらを確実に牽引するには250トンという数字は決してオーバーなものではありません。現代の主力戦車を運ぶ軍用トラックには必要不可欠な能力だといえるでしょう。

 ただ、アロクス 4463AK 8×8/4は馬力や牽引力が高いだけでなく、軍用トラックとしての独自のカスタマイズが他にも施されているといいます。

軍用車両としてのキモは脚周り

 欧州の大型トラックでは、GCW が200トンを超える重量級輸送に対応したモデルは珍しい存在ではありません。しかし、アロクス 4463AK 8×8/4は軍用トラックとして特別な改良が施されています。

 運転席は欧州の防衛企業KNDS製の防護キャブを備えており、防弾性や、地雷・IEDへの防護が考慮されています。また、CBRN(化学・生物・放射性物質・核)防護用加圧フィルターや後方視界用カメラなども組み込まれています。

 そして、ダイムラーの関係者が軍用車両として重要な装備として挙げたのが、タイヤの空気圧調整システムです。これは、路面状況に応じてタイヤの空気圧を変えることが可能で、泥濘地や未舗装路といったグリップ力の低い路面では、空気圧を低くしてタイヤと地面の接地面積を増やして走破性を高めることができます。

 また、メーカーの担当者によると、本トラックの軍用車両としての一番の特徴は、後輪がシングルタイヤ仕様となっていることです。一般的な大型トラックでは、タイヤ1つあたりの荷重を減らすために、後輪がダブルタイヤとなっているのが一般的です。

 この仕様についてメーカー担当者は「ダブルタイヤで泥地を走ると、後輪が互いに干渉しながら回転し地面を掘ってしまうことがあります。この車両はシングルタイヤのため、空気圧を下げて接地面積を広げることができ、オフロード性能が向上します。トラックの能力で重要なのは、馬力だけではありません。車軸構成や駆動系全体です」と説明します。

 ダイムラートラックは今回のユーロサトリにおいて、防衛事業を統括する新ブランド「ダイムラートラック・ディフェンス」の立ち上げも発表しました。今後は他の防衛企業との連携を進めながら、軍用車両のラインアップを拡充していく方針です。アロクス 4463AK 8×8/4は、重量化が進む現代の主力戦車を支えるだけでなく、ダイムラートラックが防衛分野を本格強化していく姿勢を象徴する1台です。