輸送機からミサイルを大量発射!? 無改造で“爆撃機に化ける”配備目前の米軍システム「1000機が即座に爆撃機へ」

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兵士や物資を運ぶための輸送機を、必要なときだけ長距離ミサイルの発射母機に変える仕組みを、アメリカ空軍が実用化しようとしています。

輸送機をミサイル発射プラットフォームに

 輸送機といえば、兵士や車両、弾薬を戦域へ運び込むための航空機です。C-130「ハーキュリーズ」やC-17「グローブマスターIII」は、アメリカ軍の兵站を支える役割を担ってきました。しかし現在、輸送機に爆撃機の役割を与えようとする動きがあります。

 2026年4月、アメリカ空軍は「Dragon Cart(ドラゴン・カート)」の2027年中の実用化を決定しました。これは輸送機を必要な時だけ“長距離ミサイルの発射プラットフォーム”へと変えることができるシステムです。

 ドラゴン・カートはこれまで「ラピッド・ドラゴン」と呼称されていました。2021年から実証試験が進められてきた計画であり、発想そのものは驚くほど単純です。輸送機の貨物スペースに長射程巡航ミサイルJASSMを搭載した「パレット」を積み込み、そのまま空中投下するのです。

 パレットとは貨物を積載するための板状の荷台であり、これに貨物を固定することで荷積み・荷下ろしを効率的に行うことが可能です。パレットのサイズは可変であり、C-130ならば4発搭載のパレットを3基・最大12発、C-17では9発搭載のパレットを5基・最大45発、それぞれJASSMを積み込むことが可能です。

必要な時だけ搭載できる利便性の高さ

 2022年11月、アメリカ空軍はMC-130JからJASSM-ERミサイルを用いた実射試験に成功しました。貨物室から通常の物資空中投下の手順でパレットを投下し、パレットがパラシュートによって安定すると、そこから巡航ミサイルが分離して飛翔していくという仕組みです。

 重要なのは、機体に改修の必要がなく、標準的な貨物投下手順によって投射できるということです。通常の貨物と同じようにミサイルが装填されたドラゴン・カートを搭載し、後部ランプから投下する。任務が終われば、航空機は再び輸送機として使用できます。つまり輸送機という既存インフラを、必要な時だけ長距離打撃力として利用するのです。

 その意味は、プラットフォームの数を考えると一段と明瞭になります。アメリカ空軍のC-17、C-130、KC-130を合わせると1000機を超える規模に達し、これは爆撃機の総数を大きく上回るものです。ドラゴン・カートにより、爆撃機を新たに大量生産することなく、長距離打撃に利用できる航空機の母数を大きく拡張できます。

敵にとっては警戒監視の負担が爆増

 アメリカ空軍では高価で高性能な巡航ミサイルだけではなく、より安価な兵器を大量に投入する方向へ舵を切っており、開発中のAGM-188「ラスティダガー」などの低コスト巡航ミサイルの大量調達構想が進展しています。こうした兵器とドラゴン・カートが結びつけば、輸送機は一度の任務で多数のスタンドオフ兵器を投射する「ミサイル母機」として機能することができるでしょう。

 これはアメリカ空軍と対峙する側にとって、極めて厄介な問題です。大型爆撃機は機数が限られ、その出撃準備や運用拠点も比較的把握しやすいですが、輸送機は世界各地の基地で日常的に運用され、兵員輸送、物資輸送、空挺作戦など多様な任務に投入されています。その中から、どの機体が通常の輸送任務に就き、どの機体が巡航ミサイルを搭載しているのかを外見だけで判別することは容易ではありません。

 この構造は、敵に求められる警戒範囲そのものを拡大させます。従来なら爆撃機を中心に監視すればよかったものが、ドラゴン・カートの実用化によって輸送機まで長距離打撃能力を備え得るなら、後方に存在する多数の輸送機が潜在的な攻撃プラットフォームとして意識されることになります。

 予定通り2027年にドラゴン・カートが実用化されたならば、それ以降C-130やC-17が輸送任務の傍ら、長距離巡航ミサイルを投射する光景が現実のものとなります。爆撃機でなければ実現できなかった長距離打撃能力を、輸送機にも付与できる時代が始まり、輸送機と爆撃機を隔てる境界は曖昧なものとなるでしょう。