楽天が陸自に「AI攻撃ドローン」を売り込み!? 「月1000機」作れるけど“買うだけ”では済まない無人機ならではの理由

食料品消費税1% 飲食業影響は?

楽天グループが欧州の防衛テック企業ヘルシングと提携し、同社の攻撃ドローン「HX-2」の日本への導入を支援していることが報じられました。しかし、こうしたドローンは機体を大量に買うだけでは十分ではありません。

楽天が陸自に「攻撃ドローン」を売り込み?

 楽天グループが、軍用ドローンの分野に新しく関わろうとしています。

 日本経済新聞などの報道によると、楽天はドイツを拠点とする防衛テック企業「ヘルシング」と提携し、同社の無人機システムの日本への導入を支援する模様です。ロイターも2026年8月17日、陸上自衛隊がヘルシングの「HX-2」を試験していると報じています。

 もっとも、楽天がHX-2を直接作るわけではありません。機体や関連システムの開発・製造を担うのはヘルシングで、楽天は日本国内での調達手続きへの対応や、日本側との調整など、導入を支援する役割を担うとみられます。

 HX-2はX字型の主翼を持つ電動式の攻撃ドローンです。最大航続距離は100kmで、装甲目標を攻撃するための成形炸薬弾頭などを搭載可能となっています。

AIを利用して自律的に目標の捜索や再識別などを行い、通信やGNSS(衛星測位システム)が利用しにくい環境でも任務を継続できるよう設計されています。なお、攻撃などの重要な判断に関しては、すべてがAI任せという訳ではなく、人間がその決定に関与します。

 そしてHX-2の特徴のひとつが、「数」を揃えることを重視している点です。

 ヘルシングは2025年、ウクライナ向けに6000機のHX-2を生産すると発表。南ドイツに設けた生産拠点「レジリエンス・ファクトリー1」についても、当初から月1000機以上を生産できる能力を持つとしています。

 こうした生産規模からも、HX-2は少数の高価な精密誘導兵器に依存するのではなく、大量生産・大量運用を強く意識した兵器といえます。しかし、単純にドローンの数を増やせば、それだけ戦闘力が高まるわけではありません。

 仮に1000機のドローンを用意できたとして、それをどう戦場へ運び、どこから発進させ、誰が多数の機体を指揮するのでしょうか。大量のドローンを戦力として使うには、機体と一緒に「大量に使うための仕組み」まで用意する必要があります。

ドローンを「コンテナ」で戦場へで輸送?

 同社のそうした運用思想を分かりやすく示したものが、2026年6月にフランスで開催された兵器展示会「ユーロサトリ」にありました。

 会場では欧州の大手防衛企業KNDSが、20フィートコンテナを利用したドローン発射システムの試作機を公開しました。これはドローンの輸送や展開、遠隔発進などを行えるようにしたシステムで、内部にはドローンの収納と発射のための装備が備え付けられていました。

 KNDSはこの開発で、攻撃用のHX-2を手掛けるヘルシングだけでなく、迎撃ドローンを開発する別の新興企業とも協力。攻撃用や迎撃用など、異なる無人機を運用できる共通のプラットフォームを目指しています。

 発表時に行われた記者会見でKNDSの担当者は、重要なのは単にドローンを発射することではないと説明し「ドローンを輸送し、補給し、電力を供給する。完全な戦場ミッション・ソリューションを実現するには、物流チェーン全体も考える必要があります」と答えました。

 ドローンが「弾」だとすれば、必要なのはそれだけではありません。それを保管して戦場へ運び、必要な場所から発射し、使い続けるための仕組みまで必要です。

 従来から戦車や装甲車、火砲などを手掛けてきたKNDSが、ヘルシングのような新興企業と協力している理由もここにあります。新しいドローンを開発するだけではなく、それを既存の軍隊の兵站や装備体系へ組み込み、実際に使える状態にする必要があるからです。

ドローンを買えば即「戦力」になるわけではない

 さらに、大量のドローンを戦場まで運んで終わりでもありません。それらをどう指揮するのかという仕組みも必要になります。

 ヘルシングが提供する「アルトラ(Altra)」は、多数のドローンや既存兵器を連携させるためのソフトウェア・プラットフォームです。HX-2をはじめとする攻撃ドローンに加え、偵察用ドローンや火砲、既存の戦場管理システムなどを連携させ、複数のHX-2を協調運用することもできます。

 ドローン兵器は、機体単独の性能だけでなく、複数の機体やセンサー、ほかの兵器を連携させることで、より広い範囲から目標を探し、得られた情報を攻撃につなげることができます。そのため、ドローンそのものと同様に、それらをまとめて動かすアルトラのような運用プラットフォームも重要になります。

 そして、ドローン兵器が戦車や装甲車、火砲といった既存の有人装備をすべて置き換えるわけでもありません。ユーロサトリでKNDSの担当者は、この点について「これは『有人か無人か』という二者択一の問題ではありません」と強調していました。

「最終的な任務の成否は、有人と無人の装備を、相互に連携できる形で組み合わせられるかどうかにかかっています」

 つまり、これまで軍隊が使ってきた有人の車両や火砲をドローンへ置き換えるのではなく、それらと新しい無人機を組み合わせ、ひとつの戦力として使うことが重要だという考え方です。

 仮に日本がHX-2を本格的に導入するのであれば、「何機買うのか」だけでは済みません。どのように補給し、どこから発進させ、多数の機体をどう指揮し、既存の自衛隊の装備や指揮系統へどう組み込むのかまで考える必要があります。

前述のように、楽天は陸上自衛隊に同社のドローンの導入を提案する方針であると既に報じられています。仮に購入となった場合、ドローンの運用を前提とした新しい部隊組織を作ることも必要になるでしょう。

 つまり、HX-2の導入が具体化すれば、焦点になるのは、欧州で進む取り組みを見る限り、HX-2という「機体」とともに、それを実際の戦力として使うための「仕組み」も問われることになりそうです。