アメリカ空軍は開発中の戦闘無人機から空対空ミサイルを発射する試験を成功させ、有人戦闘機と無人機による連携作戦が現実味を帯びてきました。
無人機からのAIM-120ミサイル発射試験
2026年7月15日、アメリカ空軍は開発中の協調戦闘無人機(CCA)アンドゥリル・インダストリーズ製YFQ-44「フューリー」において、AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルの発射試験に初めて成功したと発表しました。これは一発のミサイル発射という技術的成果にとどまらず、航空戦力の思想そのものが変わり始めていることを示す出来事です。
AIM-120は、アメリカ空軍をはじめ西側諸国の戦闘機が長年にわたって運用してきた中距離空対空ミサイルです。今回の試験では、YFQ-44の機体外部にミサイルを搭載して発射しました。開発初期の兵装試験としては合理的な方法ですが、CCAが目指す最終的な姿を考えれば、今後の重要な課題は機体内部のウェポンベイへの兵装搭載です。
空対空ミサイルを機体内部に収容できれば、兵装によるレーダー反射断面積の増大を抑え、CCA本来のステルス性を生かした作戦運用が可能になります。敵のレーダー網に探知されにくい状態で前進し、必要な局面で兵装を使用する。これは、CCAが従来型無人機とは異なり、将来的には高度なステルス無人戦闘機として空対空戦闘そのものに参加することを意味します。
無人機で「パイロット一人あたりの戦力」を数倍に
しかし、CCA構想の核心は、無人機によって有人戦闘機を置き換えることではありません。むしろ有人機を航空戦力の中核に据えながら、その周囲に複数の無人機を組み合わせ、一人のパイロットがより大規模な航空戦力を指揮することにあります。いわゆる「ロイヤル・ウィングマン(忠実な僚機)」として、CCAは有人戦闘機に随伴し、センサーによる情報収集、敵の探知、電子戦、攻撃などを分担します。
現在、アメリカ空軍ではYFQ-44と、ジェネラル・アトミクス製YFQ-42という二つのCCAが並行して開発されています。両機は空対空戦闘を含む高脅威環境での運用を想定していますが、CCAという概念が目指す任務領域はそれだけではありません。攻撃、偵察、電子戦、通信中継、さらには敵の防空システムや戦闘機部隊を混乱させる囮としての運用まで、任務に応じて役割を変えることが想定されています。
この柔軟性は、現代の航空戦において極めて重要です。敵の防空網が高度化するほど、すべての任務を高価な有人戦闘機だけで遂行することは難しくなります。そこでCCAを前方へ進出させ、敵のレーダーやミサイルシステムを探知し、電子攻撃を仕掛け、必要であれば自ら兵器を使用します。
その間、有人戦闘機はより後方から戦場全体を把握し、複数のCCAを統合的に運用します。この構造が実現すれば、航空戦における「パイロット一人あたりの戦力」は従来とは比較にならない規模へ拡大するでしょう。
戦闘無人機は「飛べる」段階から「戦える」段階へ
アメリカ空軍が最終的に約1000機という大規模なCCA戦力を構想する背景には、戦闘機の高コスト化があります。F-35や次世代戦闘機F-47 NGADのような高度な有人機は、取得費だけでなく、パイロットの育成、整備、稼働率の維持、基地インフラなどにも巨額の費用を必要とします。
一方、CCAは有人機より低コストで取得できることが期待されており、また、平時には訓練飛行を行う必要がないため、運用コストを大幅に削減できます。そして実戦では有人機投入をためらうほど危険な空域へ送り込むことも可能になります。
さらにCCAは、人間のパイロットが一機ずつ操縦することを前提としていません。人間から与えられる命令は「この空域を偵察せよ」「敵部隊を妨害せよ」「この目標を攻撃せよ」といった抽象的かつ包括的なものとなり、その具体的な飛行経路やセンサーの使用、編隊内での役割分担を無人機側が自律的に判断します。
戦闘空間では状況が刻一刻と変化します。敵機が現れ、ミサイルが飛来し、通信が妨害される。そのような環境で、CCAが複雑な交戦規則を遵守しながら適切に判断し、必要な場合にはAIM-120のような実戦兵器を運用するには、高度な人工知能と信頼性の高い通信ネットワークが不可欠であり、その実現にはまだ時間がかかります。
しかしYFQ-44から放たれた一発のAIM-120は、無人機が「飛べる」段階から「戦える」段階へ移行するための一歩であると言えるでしょう。そしてその先にあるのは、戦闘機という存在そのものを大きく変革させる、航空戦の新たな時代なのかもしれません。