故障した車や車検切れなどで廃車を予定しているクルマが、被災地支援のチカラになります。廃車予定の車を全国から350台募るプロジェクトです。手放すはずのクルマが、なぜ人の役に立つのでしょうか。
車検切れでも故障車でもOK! 廃車が支援になる仕組み
2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測した「令和8年熊本地震」が発生しました。
この地震を受けて、ちょっと意外な支援の呼びかけが始まっています。それが「廃車予定の車を全国から集める」というものです。
このプロジェクトを立ち上げたのは、宮城県石巻市に本部を置く日本カーシェアリング協会です。同協会によると、車検切れや故障などで廃車を予定している車350台を全国から募集し、約1400万円の寄付金確保を目指します。実施期間は2026年8月1日から12月25日まで、対象は日本全国です。
「廃車予定の車が、どうして支援になるのか」と、不思議に思うかもしれません。カギとなるのが「リサイクル寄付」という仕組みです。
寄付された車は、協会と連携する自動車リサイクル事業者などが原則無料で引き取り、廃車・リサイクルによって生まれる部品や資源の価値を寄付金に変えます。公道を走れない車や故障した車でも、部品や金属などの資源として価値を生み、それが支援の元手になるというわけです。
寄付する側の手続きも複雑ではありません。同協会によると、問い合わせフォームか電話で連絡し、書類を用意して引き取り日を調整、指定の日時・場所で車を引き渡すという流れです。寄付金額が確定すると、感謝状とともに報告が届きます。
リサイクル寄付で得たお金は、被災地で「走れるクルマ」を無償で貸し出すための費用に充てられます。
災害で自分の愛車を失うと、買い物や通院、片づけ作業など、日々の暮らしがたちまち立ち行かなくなります。そこで役立つのが、無償で借りられる車なのです。
集めたお金で“走れるクルマ”を貸す 石巻発の助け合い
今回の熊本地震では、すでに現地から支援の要請が届いています。同協会によると、熊本県内で災害ボランティアセンターを運営する社会福祉協議会から計30台分の車両支援要請が寄せられており、今後、約150台の車両を現地に配備する予定です。貸し出す車両は、すべて寄付で集まったものだといいます。
寄付される車1台が、どれくらいの支援につながるのかも見えてきます。同協会は、寄付される車1台当たりの平均寄付額を約4万円と見込んでいます。これは2025年のリサイクル寄付による平均寄付金額4万349円にもとづく数字です。
こうした活動には、長い歴史があります。日本カーシェアリング協会は、2011年4月、東日本大震災後の宮城県石巻市で設立された非営利団体です。自動車の寄付を募り、仮設住宅の住民で車を共同利用するカーシェアリングを始めました。同協会によると、これまでに約2400台の車の寄付が集まっているといいます。
一方で、こうした支援を続けるには、まとまったお金が必要です。同協会は、熊本での車の無償貸出支援に必要な財源を総額約3400万円と見込んでいます。
被災地で車を貸し出すには、車両の確保だけでなく、整備や修理、被災地への運搬、保険への加入、貸出拠点の運営、現地スタッフの配置などに継続的な費用がかかるためです。
そこで財源は、確保を見込む助成金が約1600万円、クラウドファンディングや企業からの寄付が約400万円、そして今回の廃車プロジェクトによる寄付が約1400万円という組み立てで確保する計画だとしています。
同協会は現在、熊本地震に加え、鹿児島県薩摩川内市や、栃木・群馬での豪雨災害の被災地でも車の無償貸出支援を行っています。廃車プロジェクトで熊本の財源を確保できれば、クラウドファンディングなどの資金を、ほかの被災地域の支援にも柔軟に回せるようになるといいます。
廃車を予定していた車が資源に生まれ変わり、被災地で走る別の車を支える。手放すはずだった1台が、めぐりめぐって誰かの暮らしを助ける。そんな“クルマのバトンリレー”が、いま全国に呼びかけられているのです。