「あれ、Google地図と違う…!」 熱海の激エモ「鉄道めがねトンネル」の謎 「あるはずの“地形”が無い!」

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地図では川なのに、現地には橋も川もない――熱海の鉄道ガード下で発見した地図と現地のズレ。その原因は歴史にありました。

Googleマップでは「川の上」のはずが…

 スマホを使った道案内に欠かせない「Googleマップ」ですが、ときにその地図と地形や道路の実際が符合しない経験をお持ちの方も多いでしょう。静岡県東部の駅からパワースポットへの道すがらにも、そうした地図と実際の地形が大きく異なる場所がありました。

 東海道新幹線も停まる静岡県の熱海駅、その隣駅が「来宮駅」です。JR東海道本線・伊東線、東海道新幹線が並走する区間にある伊東線のみが停車する駅で、丹那トンネル、新丹那トンネルへと吸い込まれる一方、伊東線は以東方面へ分岐していきます。

 この来宮駅を最寄りとする来宮神社は、樹齢2100年以上と言われる御神木などがパワースポットとして知られます。来宮駅から歩いて行くと、左手には飲食店や商店が、右手には熱海警察署の庁舎があります。そして「国道135号」方面に分かれる「福道町」交差点を過ぎると、すぐに「来の宮ガード南」交差点の信号が目に入ります。

 Googleマップでは、この信号の手前で「糸川」を渡ることになっています。しかし、現地に橋や川はまったく見えません。そして「地図上で川を渡った」とされる先が、来の宮ガード南交差点で、左手には石積みのアーチが美しいトンネルがふたつ、並んでいます。

トンネルの入口の壁面にはJR東日本が設置した看板があり、交差点名の由来となった「東海道本線 来宮ガード」という名称であることがわかります(JR東日本では“の”は表記せず)。トンネルの上には東海道本線と伊東線が走っています。

 このトンネルをくぐり、反対側に出てみると、東海道新幹線の高架橋下で正面に見えるのが「来宮神社」です。神社の参道の鳥居に向かって進むと、左手に糸川の流れが確認できます。ここでようやく、Googleマップ上の川と現況が一致します。

 では下流側はどうなっているのでしょうか。さきほどの来の宮ガード南交差点は丁字路ですが、南側には建物があり、その横は切り立った崖のようです。この周辺は全体的に、海へ向かってなだらかに下がっていく斜面の地形です。

 そこで福道町交差点まで戻り、いったん坂を下ったところから、人がすれ違えるくらいの狭い路地を伝ってこの建物の裏側にあたる場所を探ります。すると左手に駐車場が開ける向こうに、川の流れが確認できました。

 あらためてGoogleマップと照らし合わせると、この川は糸川に間違いありません。では来宮神社からこの崖下まで、糸川はどういう流れをたどっているのでしょうか。

川はどこへ? 答えはトンネルの中に

 この区間の東海道本線と伊東線は、切り通し、トンネル、築堤などで、高低差のある地形を克服しています。来宮ガードのある場所は、糸川の作った谷地形をまたぐ築堤が作られ、現在の県道20号、そして糸川の流れを石積みのアーチ橋で渡る構造としました。これが現在の“2連の道路トンネル”のルーツとなったのです。

 熱海の街が発展し、来宮の山側にも市街地が広がるようになると、小型車がすれ違うのがやっとという車道の幅員が課題となります。そこで、糸川が流れている西側のトンネルを暗渠化し、それぞれを一方通行とすることで、ボトルネックの解消を図ったのです。

 つまり冒頭でご案内したGoogleマップの地図と現況とのズレは、Googleマップが糸川を西側のトンネルの下を通る暗渠として表記できていないことによるものだったのです。「地理院地図」をはじめ他のウェブサービスの地図でも、このガードの横に「川が流れている」ように表記されているものがあります。

 ちなみにこの西側のトンネルの来宮神社側の壁面には、かなり古ぼけてはいるものの、「来宮暗きよ 105K633M58」という銘板が確認できます。この距離表記は東京駅、つまり東海道本線の起点からのキロ程でしょう。

 なお、来宮神社側からは、この二連のトンネルのはるか上を東海道新幹線の高架が走っている光景を一望することができます。

 すでに開通から60年あまりが経ち、沿線各地で風景の一部として馴染んでいる東海道新幹線ですが、開通当時はいにしえの風情が残る石積みアーチの二連トンネルと、未来を感じさせる“超特急”の高架が、見事なコントラストを描いていたと思われます。ただその新旧の対比も、ここで1300年以上にわたり信仰を集めてきた来宮神社の時の流れからすれば、ほんのわずかな時間差なのかもしれません。