アメリカ政府監査院(GAO)は2026年7月17日、海軍艦艇の近代化に関する報告書を公表し、ズムウォルト級駆逐艦の近代化改修の遅れを指摘しました。
艦の改修とミサイル開発両方で問題あり?
アメリカ政府監査院(GAO)は2026年7月17日、海軍艦艇の近代化に関する報告書を公表し、ズムウォルト級駆逐艦の近代化改修の遅れを指摘しました。
アメリカ海軍では、水上打撃能力の一環として通常型即応打撃(Conventional Prompt Strike:CPS)極超音速ミサイルを搭載するため、ズムウォルト級駆逐艦3隻に極超音速ミサイルの発射能力を付与する改修を進めています。しかし、この計画は約24か月遅延しているとのことです。
原因は艦そのものと、搭載される極超音速ミサイル(CPS)の双方にあるようです。艦に関しては、2026年1月時点で改修工事は94%完了していたものの、予定外の追加作業が発生したことで工程が遅れました。また、同級はステルス性を重視した特殊な設計を採用しており、レーダーや戦闘システム、ネットワークシステムなどが独自仕様となっているため、維持・整備コストが高く、保守も難しいとされています。
また、CPSについては品質管理と生産上の問題が発生しており、現在の生産能力は年間12発という目標を大きく下回っている点が課題として挙げられています。同ミサイルは陸軍の長距離極超音速兵器(LRHW)や、将来的にはバージニア級原子力潜水艦にも配備される予定であり、ズムウォルト級への十分な供給体制を整えるには時間を要するとみられます。
なお、これらの遅延に対する改善策としてGAOは、ズムウォルト級についてはミサイル搭載だけでなく、その後の運用・整備まで見据えた投資計画を策定することを提言しています。また、CPSについては、海軍と陸軍がそれぞれ別々に予算や優先順位を決定している現行の体制を改め、投資や生産計画を一元的に調整できる包括的な戦略を構築すべきとしています。
ちなみに、ズムウォルト級はアメリカ海軍の方針転換の影響を何度も受けてきた、不遇ともいえる艦です。当初は既存のアーレイ・バーク級駆逐艦などを更新するため、レーダー反射断面積を大幅に低減した高いステルス性を備える次世代駆逐艦として計画され、合計24隻を建造する予定でした。
ところが、この計画は最終的に3隻まで縮小されました。主な理由は、155mm先進砲システム(AGS)用として開発されたLRLAP(長射程対地攻撃砲弾)の価格です。この砲弾はGPSと慣性航法装置による誘導に加え、ロケット補助推進を備えた高度なものでしたが、1発あたりの価格が1億円を超え、巡航ミサイル並みに高騰する見通しとなりました。その結果、ズムウォルト級は主砲を事実上運用できない状態に陥りました。
その後、CPSを搭載し、極超音速ミサイルを運用するミサイル艦として生まれ変わる計画が進められました。しかし、この改修についても艦の複雑な構造が障害となり、計画は長期化している状況です。