日本でも導入された「レッドサラマンダー」の新型
フランス・パリ近郊で開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ」で、日本でも導入されている水陸両用救助車「レッドサラマンダー」の流れをくむ新型車両が展示されました。
レッドサラマンダーは、もともとシンガポールのSTエンジニアリングが軍用装軌車両「ブロンコ」をベースに開発した水陸両用救助車です。現在、同社ではこの技術を民生・災害対応向けに発展させた「EXTREME V」というシリーズを展開しており、ユーロサトリでは従来サイズの民生モデルに加え、今回初公開となる小型モデルも模型で披露しました。
レッドサラマンダーは、浸水地域やぬかるんだ地形、雪上など、通常の消防車や救急車では進入が難しい場所で活動するための特殊車両です。車体左右に履帯を備え、水に浮いて進むことも可能で、大規模水害などで孤立した住民の救助や物資輸送に使用できます。
日本でも災害対応用として導入されていますが、レッドサラマンダーとして配備されたのは愛知県岡崎市消防本部の1両のみです。なお、2021年には同様の機能を有する「レッド・ヒッポ」が大阪市消防局に配備されていますが、一般的な消防車のように全国各地へ大量配備されているわけではありません。そのため、2013年の配備から実際に出動した回数は限られておりますが、大規模災害の際に、道路の破損や陥没、橋の崩落などが考えられるため、このような特殊車両が一部の自治体に置かれています。
今回展示された小型モデルは、従来型よりもコンパクトになり、市販部品を積極的に採用することで価格を抑えたのが特徴です。担当者によると、現行の第2世代モデルは約65万ユーロ(約1億2000万円)ですが、新型となる第3世代モデルは約40万ユーロ(約7400万円)を目標としているとのこと。特殊車両としては大幅な低価格化といえます。
さらに運用重量も従来の約14トンから約12トン程度へ軽量化される見込みです。装甲を持たない民生・災害対応専用モデルとすることで、より導入しやすく、扱いやすい車両を目指しているといいます。この規模の車両ですと、もしかしたら日本の道路環境に適しているかもしれません。
特殊車両は「持っている」だけでは使いこなせない
今回の新型で興味深いのは、単に性能を高めるのではなく、「安くして数をそろえやすくする」方向に進化している点です。
災害対応車両は、いざという時に現場へ投入できなければ意味がありません。ところが、配備数が少なければ、必要な地域へすぐに向かわせることが難しくなります。また、普段から扱う機会も限られるため、隊員が車両の特性を十分に把握し、効率的に運用するノウハウも蓄積しにくくなります。
レッドサラマンダーは水陸両用能力と全地形対応能力を備えた車両ですが、どんな悪路や水上でも縦横無尽に移動できる夢の車両というわけではありません。実際に運用するには、想定される地域での日々の訓練とノウハウの積み重ねが必要です。それがあって初めて、実際の災害現場で有効に活用できるのです。
その意味で、今回展示された低価格の新型モデルには大きな意味があるといえます。1台の高価な特殊車両を広域で共有するのではなく、より多くの地域にまとまった数を配備できれば、日常的な訓練の機会も増やせます。結果として、車両本来の性能を災害現場で十分に発揮できるようになります。
災害対応車両は、性能だけでは人命を救えません。必要な場所へ迅速に投入でき、日頃から使い慣れた隊員が運用して初めて、その能力は最大限に発揮されます。EXTREME Vの新型が目指しているのは、まさにそうした「運用できる特殊車両」という新しい方向性です。この運用思想は、災害大国ともいわれる日本にも合致しているかもしれません。