スウェーデンの防衛大手サーブが、戦闘機「グリペン」の生産能力をブラジルで拡大するための基本合意を締結しました。世界市場での需要増を見据え、スウェーデン国外で唯一の最終組立拠点を強化する狙いです。
なぜ「戦闘機づくり」を海外企業に?
「戦闘機づくり」を海外企業に任せる――。そんな異例ともいえる動きが始まりました。
スウェーデンの防衛大手サーブとブラジルの航空機メーカー、エンブラエルは2026年7月、イギリスで開催されたファーンボロー国際航空ショーで、戦闘機「グリペン」の生産能力を拡大するための基本合意(HoA)を締結しました。
合意では、ブラジル・サンパウロ州のガヴィアン・ペイショット工場で、最大20機を追加生産できる体制を整えます。同工場はグリペンの最終組立を担っており、スウェーデン・リンシェーピングの生産ラインを補完する役割を果たします。
ただし、この枠組みはブラジル空軍向けの追加調達だけを想定したものではありません。サーブは、世界市場で今後見込まれる需要増に対応するため、生産能力そのものを強化することが狙いだと説明しています。
では、なぜブラジルなのでしょうか。
その理由は、エンブラエルが旅客機や軍用機を開発・製造する世界有数の航空機メーカーだからです。ブラジルは2014年にグリペンE/Fを36機発注し、その契約には大規模な技術移転も盛り込まれました。ブラジル人技術者は設計や試験、組立などのノウハウを習得し、2026年にはブラジルで組み立てられた初のグリペンEも公開されています。
今回の合意で何が変わる?
今回の合意により、ブラジルはスウェーデン国外で唯一のグリペン最終組立拠点としての役割をさらに強めることになります。海外企業に戦闘機の生産技術や品質管理のノウハウまで受け継がせる例は多くなく、その意味では、サーブがエンブラエルへ「暖簾分け」をしたような動きといえるでしょう。
背景には、中南米を含む世界市場で今後見込まれる需要増への備えがあります。各国で戦闘機の更新需要が高まれば、スウェーデン国内だけでは生産能力が不足する可能性もあります。その際、ブラジルの生産ラインを活用することで、サーブはより柔軟に受注へ対応できるようになります。
将来、新たな輸出契約がまとまれば、ブラジルで組み立てられたグリペンが第三国へ引き渡される可能性もあります。今回の合意は、これまで「スウェーデン製」というイメージが強かったグリペンが、ブラジルを第二の生産拠点として世界へ供給される体制づくりを加速させる節目の契約といえそうです。