ついに「国産LNG船」建造再開へ 日本にエネルギーを運ぶ船は国産で!カギは「韓国との協業」に? 国内最大手が検討

ソフトウェア市場の拡大に期待

造船国内最大手の今治造船がLNG船の建造再開を検討しています。檜垣社長は日本のエネルギー安全保障上の重要性を強調。建造の課題克服を目指す方針です。

国内最大手に期待がかかるLNG船建造再開

「日本政府の要望に応えて、LNG(液化天然ガス)船の建造を前向きに検討している」――今治造船の檜垣幸人社長は2026年7月23日に開いた記者会見でそう述べました。今治造船は他社とも連携しつつ、国産LNG船の建造再開に向けた取り組みを進めていく方針を示しています。

 檜垣社長は「LNG船は日本で有望な輸送手段。今回、ホルムズ海峡で問題が起こっても、中東に頼らないLNGの調達を日本は構築しており、それをLNG船が運んだことによって、電気が止まることはなかった」と強調します。

 日本は経済活動に必要な電力の約7割を化石燃料による火力発電に頼っており、その中で天然ガスは約3割を占めています。LNGの年間輸入量は約6500万トンで、このうちオーストラリアから約40%、マレーシアから約15%を調達しています。これに加えてロシアやアメリカ、インドネシア、パプアニューギニア、ブルネイなど調達先が多角化しており、中東やホルムズ海峡への依存度が非常に低い水準となっているのが特徴的です。

 当然、全て専用の船で運ばれており、日本郵船、商船三井、川崎汽船といった邦船大手が運航に携わってきました。しかし外航LNG船の新造は主に韓国や中国の造船所が手掛けており、日本での建造は2019年の引き渡し船を最後に途絶えています。

途絶えた「国産」復活への使命感と“高いハードル”

「日本向けのLNGを運ぶ船を、どうやって日本で建造できるか、またどうやって日本のオーナー(船主)で持っていくかというのは、これは大事な使命だと思う。きちんと対応していかないとという責任感は、業界として持っている」(檜垣社長)

 政府も7月21日に閣議決定した「日本成長戦略」でLNG船の建造再開を明記しており、2035年以降に年間3―5隻のペースで新造ができる体制の整備を目指すとしています。

 しかし、建造再開に向けてはさまざまなハードルがあります。日本の造船所がかつて得意としていたのは、球形タンクを載せたモス型(球形独立タンク方式)と呼ばれるタイプのLNG船。これに対して近年はタンクの内部を薄くてしわがあるステンレス鋼「メンブレン」で覆ったメンブレン型のLNG船が主流になっています。

 日本船主協会の長澤仁志会長は6月の会見で「世界中のトレーダーがメンブレンを選んでいる。サイズも17万立方メートルから20万立方メートルぐらいになるため、その潮流を外れたものを作ったところで、全く使い物にならない」と断言。メンブレン型LNG船の新造整備が最適解であるとの認識を示しました。

カギは「韓国との協業」?

 一方でメンブレン型LNG船について、政府の官民投資ロードマップ(工程表)では「設計・建造ノウハウを有しておらず、建造に必要な設備も整備されていない」と指摘されています。今治造船もメンブレン型のLNG船を建造した経験はありますが、コスト的に厳しく、2019年以降は大規模な案件があっても様子見をしていました。

 檜垣社長は「タンクの防熱工事に人手を相当取られる。全体的に人材不足の中でどう確保するかということが一番大きな問題だ。LNG船を建造する各企業同士でコストが上がらないような方法を考えなければいけない。当社グループや他の造船所も含め、企業間の垣根を越えた人の融通というのは、必要になってくるのではないか」と述べています。

その上で「メンブレン型LNG船の建造では防熱工事等のパネルは、韓国から買ってきた経緯がある。今後もサプライチェーンを考えると、韓国造船といろいろな意味での協業が出来れば良いと思っている」と話していました。

 今治造船の2025年度の売上高は、前年度比29%増の6005億円です。「大型コンテナ船の竣工が始まったことに加え、円安にも恵まれて、6000億円台の大台を超えることができた」と檜垣社長は説明。2025年度の受注は81隻、406万総トンを獲得し、手持ち工事量は4年分を確保しました。今年、グループ会社となったジャパンマリンユナイテッド(JMU)の2025年度の売上高は3980億円で、これを合わせるとグループ全体で1兆円規模の売上となっています。

 檜垣社長は「LNG船はもう10年近く作っていない。韓国や中国はずっと連続建造をしており、そこと10数年ぶりに再開する造船所との価格、コスト差というのは、どうしても出てくるのではないかと思っている。それでも、日本にとってLNG船は必要な船というのは間違いない」と語っていました。