自衛隊にピッタリじゃないか? エアバスのキーマンがわざわざ来日して売り込んだ新型「無人機」の正体 「ヘリの代わり」だけじゃない万能さよ!

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エアバスが開発中のUASについて、同社グループのキーマンが来日して説明しました。じつは、自衛隊のニーズに応える製品として、日本へ売り込みを図っている可能性があります。

高性能な「戦術UAS」日本に売り込みか?

 2026年6月18日、エアバスの防衛部門エアバス・ディフェンス・アンド・スペースで、同社が開発を進めているUAS(無人航空機システム)「SIRTAP」(サータップ)のプログラムディレクターを務めるモデスト・レブエルタ氏が来日し、メディアブリーフィングを行いました。

 SIRTAPはスペイン国防省との契約に基づいて開発が進められている自律飛行型UASです。サイズはアメリカ軍などが運用しているMQ-9などのMALE(中高度長時間滞空)に分類されるUASより一回り小さく、ウクライナが使用している「バイラクタルTB2」などと同じ、戦術UASに分類されます。

 動力にはガソリンエンジンを使用しており、MQ-9などと同様、機体後部にプロペラを置く推進式を採用。最大飛行時間は20時間以内、最大運用高度は2万フィート以下、最大速度は時速100ノット(約185.2km)以下と発表されています。

 見通し線内の最大運用可能距離は200kmですが、通信衛星を介した見通し線外運用での最大運用可能距離は2000kmにまで拡大可能で、飛行性能、制御可能距離とも戦術UASとしては高いレベルにあると言えるでしょう。

 最大ペイロード重量は200kgで、標準装備で機首部に装備されている光学/赤外線センサーのターレットを除けば、130kg以上を搭載できます。想定主任務はISTAR(情報収集・監視・目標捕捉・偵察)ですが兵装搭載能力も備えています。

 このSIRTAPはスペイン航空宇宙軍とスペイン陸軍が運用しているUASを後継する予定です。また、スペイン海軍も現在強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」で運用しているEAV-8「ハリアーII」が退役した後「ファン・カルロス1世」に搭載する固定翼機が無くなってしまうことから、SIRTAPを同艦で運用するための調査を行っています。

なぜいま日本に来たの?

 筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は2026年の2月にスペインを訪問してSIRTAPの製造現場を見学しています。それから間を置かずにレブエルタ氏が来日してメディアブリーフィングを行った理由は、二つあると考えられます。

 ひとつは、陸上自衛隊へSIRTAPをアピールする狙いがあったと見るべきでしょう。

陸自ヘリの後継にぴったり?

 防衛省は令和5(2023)年度から、総合ミサイル防衛能力やスタンド・オフ防衛能力などによる抑止が機能せず、万が一攻撃を受けた際に、無人装備品(アセット)を活用して人的損耗を抑えつつ、非対称な戦い方により侵攻を阻止・排除することを目的とする「無人アセット防衛能力」の整備を推進しています。

 その一環として陸上自衛隊が運用するOH-1観測ヘリコプター、AH-1S対戦車ヘリコプター、AH-64D戦闘ヘリコプターを順次退役させ、その後継にUASを充てる計画です。導入されるUASが1機種なのか、複数機種になるのかは不明ですが、筆者が耳にしている陸上自衛隊がUASに求めている能力を、SIRTAPは充たしています。

 SIRTAPは固定翼機のためヘリコプターのようなVTOL(垂直離着陸)能力はありませんが、250m以下の滑走での離着陸が可能で、ヘリコプターに準ずる運用柔軟性を持つと考えられます。

 また、これは真偽のほどが定かではないのですが、防衛省が令和8(2026)年度防衛予算の概算要求にMALEに分類されるUASの取得費を計上したところ「高価すぎて数が揃えられない」との理由で政府に却下されたという話もあります。

 SIRTAPのような戦術UASは飛行性能や兵装・センサーの搭載量はMALEには及びませんが、MALEに比べて安価なので、数を揃えやすく、陸上自衛隊のニーズには適しているのではないかと筆者は思います。

もう一つの用途「スタンド・イン・ジャマー」とは?

 2026年7月6日付の読売新聞は、相手のミサイルなどの射程圏内に入り、電磁波でレーダーや通信を無力化する無人の電波妨害機「スタンド・イン・ジャマー」を自衛隊が導入する方向で検討に入ったと報じています。

 アメリカはスタンド・イン・ジャマーとしてF/A-18F戦闘機をベースに開発された電子攻撃機EA-18G「グラウラー」を運用していますが、有人機の場合、撃墜されると乗員が戦死したり、捕虜になるリスクがあることから、そのリスクのないUASに任せようという声が大きくなっています。

 読売新聞はスタンド・イン・ジャマーを「無人の電波妨害機」と断っていますので、日本政府と防衛省が導入を検討しているスタンド・イン・ジャマーはUASだと思われますし、レブエルタ氏の来日にはSIRTAPをそのベース機とする可能性を探る目的もあったのではないかと思われます。

「あのとき話してたことの意味が分かった…」

 前に述べたように筆者は2月にスペインを訪問してSIRTAPの話を聞いているのですが、この時点で、スペイン国防省からは要求の出ていない電子戦機化の話が強調されていました。その時は将来の可能性の一つくらいに思っていたのですが、エアバスが日本政府のスタンド・イン・ジャマーのニーズを把握していたとすれば、電子戦機化の構想が強調されていたことにも合点がいきます。

 レブエルタ氏はブリーフィングで、日本製機器のSIRTAPへの搭載可能性を示唆していました。防衛省はUASへの搭載を想定した電波妨害装置の研究を2024年度から始めており、28年度の完了を目指しています。

 氏はSIRTAPに搭載する機器を開発できる日本企業との話し合いも来日の目的の一つだと述べていました。そこには、防衛省が進めている研究結果を基に電波妨害装置を開発・製造できる企業、という意味も含まれているのかもしれません。