街のクルマ屋で保険に入れない! 損保の「代理店切り」国会でも問題視 ホントに「金融庁の指導」なんですか? 回答の“煮え切らなさ”

所得「1億円の壁」問題とは?

街の整備工場や小さなバイクショップなど損害保険会社の兼業代理店の“契約打ち切り”が加速しています。「金融庁の指導」による問題は国会でも取り上げられましたが、金融庁は自動車ユーザー(保険契約者)に向けた目立った動きを見せていません。

「保険契約者(=自動車ユーザー)の利益」が代理店打ち切りの理由に

 自動車保険界隈で「兼業代理店」と言えば、四輪車関係の販売や整備、バイクショップなど自動車関連を本業とする事業者が、自動車保険の代理店を兼ねているケースを指します。損害保険会社が兼業代理店との契約を、双方の同意なく強制的に打ち切ろうとする事例が顕在化しています。

 損保会社が打ち切りの理由とするのが「金融庁の指導がある」からです。

 ターゲットになっているのは、自賠責保険だけを取り扱う代理店と、任意保険の両方を取り扱う代理店。これらの多くは地方で整備を主体に中古車販売を行う小規模店やバイクショップです。ディーラーなどが進出しない人口減少地域を地盤として、地域の自動車交通を支えていますが、新規契約の増加が見込めず、契約保険料が少ない代理店です。

 本来、代理店契約は違法行為がない限り、一方的に打ち切ることはできません。打ち切りの理由に使われていることに、金融庁は困惑気味です。

「保険代理店の質の向上が必要です。しかし、この方針は代理店の整理に使っていただきたいという趣旨ではありません。保険会社が個別の代理店の事情をよく聞いて、対話によって不足している部分を引き上げ、顧客(=自動車ユーザー)本位の態勢を期待するものです」(保険課)

 一方で、自動車保険を専門に取り扱う専業代理店は、兼業代理店の打ち切りについてこう分析します。専業代理店とは、複数の保険会社と代理店契約し、自動車保険以外の保険も取り扱う保険専門ショップのことです。

「兼業代理店の顧客(名簿)が回ってくる話は聞いています。代理店の取りつぶしで我々の契約が増えることは歓迎ですが、保険会社も見捨てる地域で代理店だから採算が取れる、という話ではない。保険会社の合併やコスト削減でこうした事例が増えることは兼業、専業を問わず代理店全体が影響を受ける問題です」

 自動車ユーザーの多くは、自動車保険が必要だからと、わざわざ専業代理店を訪れることはほぼありません。この問題はユーザーの自動車保険へのアクセスを狭め、結果的に自動車ユーザー“皆保険”である自賠責ですら「無保険車」が増加する懸念が生じます。

 新車ディーラーで代理店資格を取り上げる動きはありませんが、新車以上に大きい中古車市場でこうした動きが広がることは、決して自動車ユーザーの利益にはつながりません。

 ただ、この代理店取りつぶしのきっかけは、金融庁が保険行政の基本とする「保険契約者(=自動車ユーザー)の利益」のために実施されているところに課題があります。

“民事不介入”を決め込む金融庁? 自動車保険の代理店、実数すら把握せず

 自動車保険の代理店取りつぶし問題は、国会でも1年前から指摘されていました。保険行政がテーマとなる参議院財務金融委員会では2025年6月18日、「自動車整備業などの自賠責保険取り扱い制度の維持を求めることに関する請願」が提出されています。

 このときは少数野党の提案のため不採択になっていますが、2026年5月26日、約1年後には同じ財務金融委員会で、「二輪車販売店などで自賠責保険の代理店契約が解除される事例が増加している件」について、公明党の杉 久武参議院議員から金融庁に質問が出ています。金融庁保険課は、次のように答弁しています。

「(保険業法の改正で)特に大規模な代理店、いわゆる特定大規模乗り合い損害保険代理店に対しまして法令等遵守責任者の設置等が求められておりますけれども、これらの体制整備義務は、中小規模の代理店は対象外としている(中略)法令上求められる体制整備等の対応を前提としつつも、規模や業務実態等を踏まえて、保険会社及び保険代理店におきまして実効性のある対応が図られるよう、引き続きしっかりと確認してまいりたい」

 ところが、金融庁は、そもそも自動車保険各社の自動車保険代理店が国内にいくつあるか、そのうち自賠責保険だけを取り扱う代理店がいくつあるのか、実態の基本的な把握すら怠っています。金融庁保険課は、その理由をこう説明します。

「保険代理店契約は民間のことなので、これまでは把握していませんでした」

 自動車保険を「顧客本位の業務に」という金融庁の理想が、結果的には保険契約の機会を狭める皮肉。「引き続きしっかりと確認する」という国会答弁は、何を根拠に、どこに確認するのか、という最も重要な具体性に欠けています。