「やっぱり原子力潜水艦にします」→引き渡しまでの“つなぎ”も高い! 戦力空白を埋める「海自潜水艦のリース」の現実味 豪州

2026年、駆け込み事業承継に注目

オーストラリアが、老朽化した潜水艦の運用延長を決定しました。背景には原子力潜水艦導入までの戦力空白を防ぐため、代替案として日本の潜水艦を投入する案もありますが、購入するわけではありません。

「やっぱ原潜にします」→引き渡しまでの“つなぎ”どうする?

 オーストラリア国防省が2026年5月末から、老朽化した海軍のコリンズ級通常動力攻撃型潜水艦6隻の運用寿命を約10年間延長するための改修作業を順次行います。5月20日付の時事通信が報じました。

 コリンズ級は1996年から2003年にかけて就役しています。同級の耐用年数は30年間と見積もられており、オーストラリアは2010年代半ばから、後継する通常動力攻撃型潜水艦の選定を行っていました。

 後継計画には、日本、フランス、ドイツの3か国が最終候補として残り、オーストラリア政府は2016年4月にフランスの提案を採用。潜水艦を開発するフランスの造船企業「ナバルグループ」と正式契約まで行っていました。しかし、2023年3月18日に行われたオーストラリア、イギリス、アメリカ3か国の安全保障枠組み「AUKUS」(オーカス)の首脳会談で、コリンズ級を後継する通常動力潜水艦の導入は取りやめとなりました。

 オーストラリアは当初、新造艦の導入を模索していましたが、同国のリチャード・マールズ副首相兼国防相は2026年5月、アメリカ海軍が運用している「バージニア」級攻撃型原子力潜水艦を中古で導入し、将来的にはイギリスと次世代攻撃型潜水艦「SSN-AUKUS」を目指すと発表しています。

 この中古のバージニア級は2030年代からの引き渡しが予定されており、冒頭で述べたコリンズ級の改修は、バージニア級が引き渡されるまでの海洋戦力の空白化を防ぐことを目指すものです。

 コリンズ級の改修は2026年に退役を予定していた「ファーンコム」から順次行われる計画で、ただ運用寿命を延長するだけでなく、搭載兵器の更新なども予定されています。それだけに経費も多く、現時点で110億オーストラリアドル(約1兆2400億円)と見積もられています。

 オーストラリアは2022年にナバルグループへ、通常動力型潜水艦のキャンセルに伴う違約金として5億5500万ユーロ(約1000億円以上)を支払うことで合意していることもあって、今回決定したコリンズ級の改修に巨額の資金を投じることへの批判の声は小さくありません。

 このため、巨額の資金を投入するよりも、コリンズ級後継艦のコンペで敗れた日本のそうりゅう型潜水艦を“リース”で導入し、バージニア級が引き渡されるまでの「つなぎ」として運用した方が、コストパフォーマンスに優れているのではないかという声も上がっているほどです。

 筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は、さすがにそうりゅう型のリースはあまり現実味のある話だとは思っていませんが、防衛装備品のリースは、例がないわけではありません。

そういえば自衛隊もリースだった

 自衛隊が創設された1954(昭和29)年から1960年代までの日本は貧しく、自衛隊の主力装備品もアメリカからリースされていました。日本がある程度経済的に余裕ができ、自国で防衛装備品を開発できるようになって以降、リース装備品は順次アメリカに返却されています。

 ちなみにアメリカから海上自衛隊にリースされたキャノン級護衛駆逐艦(海上自衛隊での呼称はあさひ型護衛艦)は1975(昭和50)年にアメリカ海軍に返却されていますが、これを米海軍はフィリピン海軍に譲渡。そのうちの1隻「ラジャ・フマボン」は2018年まで同海軍で運用されていました。現在のアメリカは余剰となった防衛装備品を無償譲渡していますので、キャノン級のような例は少なくなっています。

 一方、チェコ空軍とハンガリー空軍のサーブJAS39「グリペン」戦闘機は、サーブとスウェーデン、そしてチェコ、ハンガリー両政府の間で締結されたリース契約に基づいて運用されています。

 グリペンのリースは、2000年代初頭に購入を考えていたチェコとハンガリーが大洪水に見舞われて購入資金が尽きてしまったことに対する一種の救済措置ですが、それでもサーブはリース料のほかに、両空軍の要求の変化に応ずる能力向上改修を手がけて、ばかにならない改修料を手にしています。

リースは装備品輸出の“手札”のひとつ

 現在、サーブの子会社である造船企業のコックムスは、ポーランドから新通常動力攻撃型潜水艦「オルカ級」の優先価格交渉者に選定されています。

 ポーランドとコックムスの交渉は仕様要求や引き渡し時期のギャップから難航しており、選定に敗れた韓国のメディアなどでは「ご破算になって韓国の逆転受注もありうるのでは?」と報じられていますが、コックムスは現在スウェーデン海軍が運用している通常動力攻撃型潜水艦「セーデルマンランド級」のリースを“切り札”として、契約をまとめる意向のようです。

 日本は2026年2月に防衛装備移転三原則を改定し、殺傷能力を持つ防衛装備品の輸出が可能になりましたが、日本がメインターゲットとしているアジア諸国は、かつてに比べれば豊かになったとはいえ、防衛費が潤沢なわけでもありません。

 防衛装備品のリースによって日本の防衛に支障が出てしまうようでは本末転倒ですが、リース期間中に日本の防衛産業が利益を得られる可能性もありますし、アジア太平洋の安定に寄与するのであれば、海外へのリースも考えてみてもよいのではないかと筆者は思います。