サッカーのワールドカップ(W杯)のチュニジア戦で、滞空時間の長いヘディングなどで日本人初の1試合2ゴールを決めた上田綺世選手(27)。小学生時代を知る指導者は「とにかく体が小さかった。180センチを超えてヘディングが武器になるとは夢にも思わなかった」と語る。ただ、その小さな体には当時から、得点への大きな使命感が宿っていたという。
「吉田ケ丘サッカースポーツ少年団」(水戸市)監督だった坂本豊司さん(71)によると、上田選手がチームに入団したのは小学3、4年の頃だった。
「俺のせいだ」。得点できずに負ければ、そう言って涙を流した。同学年でも小柄で性格もおとなしかったが、ゴールへの意欲は際立ち、点を取ることだけが自分の使命と思っているように見えた。仲間がふざけていても一人でシュート練習に励む真面目さがあった。
グラウンドでの存在感は圧倒的だった。試合になれば「綺世にボールを渡し、任せる状態だった」。体格差のある相手にも粘り強く、どんな姿勢からでもシュートを打ち続けた。
印象に残るのは得点後の姿だ。ゴールそのものより、駆け寄る仲間に肩をたたかれることがうれしそうだった。坂本さんは「シャイだから自慢するようなところがない。派手なパフォーマンスをしないのは性格だろうね」と語る。
上田選手が日本代表で背負うのは、「点取り屋」として知られた元ドイツ代表FWユルゲン・クリンスマンと同じ背番号「18」。サッカーを始めるきっかけとなった父親がファンだったといい、少年団時代から好んで付けている。
少年団で飛び抜けた存在だったが、中学時代に所属した鹿島アントラーズの下部組織ではユース昇格を果たせず、挫折も味わった。それでもゴールへの執着を捨てることなく、日本代表に上り詰めた姿に、坂本さんは「根性は人一倍強かった」と振り返る。
坂本さんは21日、水戸市のパブリックビューイングで、少年団の児童らと試合を観戦。サイドネットに突き刺した上田選手のW杯初ゴールを「よく練習していた角度からのシュート。当時を思い出した」と懐かしんだ。
無得点だった初戦から一転、FWの本領を発揮し、「ほっとしている」と話した坂本さん。「しっかり休んでまた活躍してほしい」と次戦でのさらなる得点を願った。
〔写真説明〕サッカー日本代表の上田綺世選手(右)と坂本豊司さん(坂本豊司さん提供)
〔写真説明〕チュニジア戦の後半、自身2点目のゴールを決める上田綺世選手=20日、メキシコ・モンテレイ
〔写真説明〕チュニジア戦の後半、自身2点目のゴールを決め、ユニホームを指さし喜ぶ上田綺世選手=20日、メキシコ・モンテレイ
〔写真説明〕吉田ケ丘サッカースポーツ少年団を訪れた上田綺世選手(坂本豊司さん提供)