意見が分かれる「慣らし運転」じつは超細かく指定する車種もある!? イマドキ必要なのか?メーカーの見解は

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新車購入時にかつては必須とされた「慣らし運転」。部品の精度が上がった現代では不要という声も聞かれますが、メーカーによってその考え方は異なり、なかには非常に細かい手順が指定されている車種も存在します。

今や不要? 新車の「慣らし運転」

 新車を購入したことがある人なら、クルマ好きの人でなくとも「慣らし運転」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。慣らし運転とは、工場から出荷されたばかりのクルマの部品同士を摺り合わせて、なじませるための運転のことです。

 自動車はエンジンや駆動機関をはじめ、あらゆる部分が多数の部品で構成されています。そのため、各部品の工作精度が今ほど高くなかった時代には、例えば「新車時から走行距離がある一定の値に達するまでは、エンジンの使用回転数を何千回転以下に抑える」といったことが求められたのです。

 こうした慣らし運転の行程は、かつて新車を買ったドライバーならほぼ誰もが行う“儀式”のようなものでした。しかし現在は部品の精度も上がり、「慣らし運転は必ず行うもの」という一般認識ではなくなったように思います。一方「今も慣らし運転は必要だ」という意見の人も、筆者(坂上猛禽:ライター)の周りには少なくありません。果たして、慣らし運転は今も必要なものなのでしょうか。

 慣らし運転の必要性について考える際、ひとつの指標となる資料が存在します。それはメーカーがモデルごとに製作し、必ず車載されている車両の取扱説明書です。取扱説明書には慣らし運転の具体的なステップを含め、そのクルマに乗るうえで必要となる事柄が明記されています。これを見れば、そのクルマに慣らし運転が必要かどうかも一目瞭然というわけです。

 では最初の例として、トヨタのハイブリッドカーの説明書を見てみましょう。エンジンは電子制御であり、単にスタートスイッチを押しただけでは始動せず、コントロールユニットが必要と判断した時にしか掛からない仕組みです。そのためか、取扱説明書にはそもそも慣らし運転に関するページ自体がありません。

 さらに興味深いことに、トヨタは高負荷での運転シーンも多いであろうスポーツカーの「GRヤリス」についても、説明書の中で慣らし運転を必須としていません。慣らし運転に類する記載を探してみても「急加速を避ける」「エンジンや駆動系に過大な負荷をかけない」など、ごく一般的な項目のみです。つまり、一般常識の範囲での運転ならば、慣らし運転は特に必要ないと受け取れます。

 また、他の国内メーカーの公式見解を調べてみても、明確に新車時の慣らし運転を必要としているモデルはない模様。唯一、スバルは公式HPで「(走行距離)1000kmまでエンジン回転数は4000rpm以下を目安にしてください」と明記していましたが、厳格な指示はそれだけです。

 このようにメーカーによって多少の温度感の差はあるようですが、どのメーカーも「急」とつく動作を禁じている以外、慣らし運転を必須とはしていないようです。

最近まで生産していた「慣らし運転必須」なモデル

 しかし、そんな近年のモデルでも、説明書で慣らし運転の具体的な行程を記しているモデルが、ごく最近まで存在しました。

 それは、先ごろ2026年3月に生産終了となったばかりの「GRスープラ」です。本モデルの取扱説明書には「(走行距離が)2000kmを超えるまでは、2000rpm以下(のエンジン回転数)で走行する」よう、はっきりと書かれています。

 GRスープラはドイツのBMWとの協業で誕生したスポーツカーで、エンジンはBMW製。実は輸入車は、今でも新車時に慣らし運転をするよう、取扱説明書で指示している車種が多く存在するのですが、こうした記載もまた、GRスープラの生い立ちが垣間見えるポイントでしょう。

 また、同じく現在は終売してしまったモデルですが、2025年8月まで生産されていた日産「GT-R」(R35型)の取扱説明書には、昔ながらの新車時の慣らし運転の行程が事細かに指示されていました。

 まず、新車時から走行距離500kmまでは「アクセルはパーシャル(一定に踏み込んだ状態)のみでゆっくりと踏み込み、エンジン回転数は3500rpm以下に抑える」「急ハンドル・急ブレーキはNG、悪路走行も禁止」といった指示がされています。GRスープラなどと比べると、慣らし運転のステップは格段に“儀式”的です。

 しかし、R35型GT-Rの慣らし運転はこれで終わりではありません。説明書の記述は「走行距離が500~1000kmの間は1~3速でアクセルはゆっくり踏み込み、全開加速はNG」「走行モードはできる限り『COMFモード』を選択し、サスペンションがストロークしやすい状態で走行する」と続きます。

 さらに「走行距離1000km~2000kmの間は、シフトレバーをMレンジに入れ、エンジン回転数は高めにキープしつつ、1速~4速の間でシフト操作を繰り返す」と、エンジンだけでなく、トランスミッションも各部をなじませるよう指示されています。

 R35型GT-Rは、これらをこなしつつ2000kmを超えた時点で「ディーラーにてアライメント点検・調整」を受けるまでが、慣らし運転の行程として明示されています。世界のスーパーカーと並び立つ性能を持つモデルだけに、まるでレーシングカーのような入念さです。

 とはいえ、これはかなり極端なケースです。今日の国産車において、慣らし運転は「昔ほど厳密には必要ないが、個別に指示されている場合は見落とさないようにする」と認識しておけば、ほとんどのモデルで間違いないでしょう。

 その一方、面倒な作業に思える慣らし運転も、見方を変えればクルマとドライバーとの距離を縮める“対話のための時間”とも捉えられます。慣らし運転が必要ないとされる現代のクルマでも、丁寧に扱ってあげればそれだけクルマへの愛着が湧いてくるでしょう。新車を買ったら、最初の1000kmほどは優しくじっくり乗ってみるのも良いかもしれません。