空飛ぶドローンが海中探査機を運ぶ!? “日の丸飛行艇の名門” が挑む「世界初!」の連携システム

2026年工作機械好調の要因は?

救難飛行艇US-2などで知られる新明和工業が、JAMSTECと共同で無人飛行艇の試験を成功させました。無人飛行艇で海中探査機(AUV)を運び、広大な日本のEEZを調査するという、世界に類を見ない壮大なプロジェクトの全貌に迫ります。

飛行艇の「名門」が手掛けた無人飛行艇

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)と新明和工業は2026年6月9日、JAMSTEC所有の水中小型ビークル「HSV」と新明和工業の無人飛行艇「XU-M II」を用いた試験を2か月前の4月9日に共同で実施したと発表しました。

 この試験では、自動飛行で飛来したXU-M IIが兵庫県芦屋沖の海面に自動着水し、あらかじめ水深15mに潜航中であったHSVから、取得した観測データ(海底画像)などを送信。これを音響通信によってXU-M IIがリアルタイムで受信するというもので、試験は成功しています。

 各国で今日、無人航空機の開発・運用が盛んになっている中、世界的に見ても稀有な存在である無人飛行艇の開発を日本が進める狙いは、どこにあるのでしょうか。

 そもそも、XU-M IIを開発した新明和工業は、第二次世界大戦以前から水上機や飛行艇の開発・製造を行ってきた「名門」です。川西航空機を前身とし、戦後は海上自衛隊向けに対潜哨戒機PS-1や救難機US-1/-1A、そして現在運用中のUS-2といった飛行艇を世に送り出してきました。同社の飛行艇は、世界で唯一、波の荒い外洋での離着水が可能という世界最高水準の性能を誇っています。

 この飛行艇に関する技術とノウハウ、さらにはボーイング787などの民間航空機の部品製造で蓄積した技術を生かし、同社は2015年から固定翼無人機の研究開発に乗り出します。そのひとつとして試作したのが、無人飛行艇「XU-M(Experimental Unmanned/Utility aircraft–Marine type)」です。

2029年度に実証用無人飛行艇の設計開始

 XU-Mは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)とPP(ポリプロピレン)樹脂によるセミモノコック構造で、全長3.0m、翼幅4.0m。電動モータとガソリンエンジンを動力とするプロペラ推進で、2022年9月には初飛行を実施し、無人飛行艇の自動離着水制御に必要な各種データ取得に成功しました。

 その後、同社は2024年4月、内閣府の「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」に参画することを発表。JAMSTECを代表機関とする共同チームの一員として研究開発課題「海空無人機による海洋観測・監視・調査システムの構築」において、無人飛行艇実証機の開発を担当することになりました。

 この課題では、無人飛行艇を用いてAUV(自律型無人探査機)を目標海域へ迅速に運搬・投入し、AUVによる海洋調査終了後は自動で揚収・帰還する海空無人機の技術開発を目指しています。

 この技術開発のために試作した無人飛行艇XU-M IIは、2029年度に設計を開始する大型無人飛行艇の5分の1スケールとなる、全長3.86m×全幅5.5m×全高1.05mの双胴型で、双発のプロペラ推進です。

 同社が過去に製造したことがなかった双胴艇体を採用したのは、AUVの運搬など多種多様なミッションでの活用を念頭に置いたためで、これによって主翼中央のパイロンや艇体内部に積載能力を確保でき、幅広いミッションへの対応が可能となっています。そのほか、XU-M IIの設計にあたっては、XU-Mで得られた知見を活かして構造の最適化を図り、CFRP製フルモノコック構造の軽量な艇体を実現しました。

海と空の連携! 2033年度の実用化に向けたロードマップ

 また、自社開発の飛行制御システムを搭載し、制御/電源/推力系統に冗長設計を盛り込んでおり、洋上でのエンジン遠隔始動も可能です。

 4月のXU-M IIと水中小型ビークルによる試験のほか、海空無人機プロジェクトでは現在、風浪環境下でも安定した自動離着水を実現する技術や、AUVの軽量化と高精度な位置制御技術、複数の無人機を統合的に運用する技術の開発が進められており、2028年度には、各種要素技術を統合した海空無人機の試作システムによる海域試験の実施が予定されています。

 この結果を踏まえ、2029年度には実用化を見据えた無人飛行艇(全長17.5m程度)の設計に着手し、2033年度までに、無人飛行艇とAUV(全長4m程度)を組み合わせた実証システムによって、航続距離片道200海里(370.4km)、調査水深2000mといった観測技術の確立を目指しています。

 海と空の無人機を組み合わせた、世界に類を見ない海洋調査システムが実現すれば、継続的な海中調査や海洋のモニタリング、資源探査などで迅速にデータが回収でき、日本のEEZ(排他的経済水域)における調査能力の飛躍的な向上につながるでしょう。