2026年6月、オランダ海軍フリゲート「デ・ロイテル」が東京に初寄港しました。台湾海峡を通過して極東へ姿を現した同艦、欧州の海軍がインド太平洋へ展開する狙いを探ります。
東京に初めて来た! オランダ海軍の防空フリゲート
オランダ海軍のフリゲート「デ・ロイテル」が2026年6月15日から17日にかけて東京お台場にある東京国際クルーズターミナルに寄港しました。同国海軍司令官のハロルド・リーブレフス中将は、西沙諸島(パラセル諸島)周辺海域と台湾海峡を「デ・ロイテル」が航行したことに関連し「本艦は友好国を回るために最も論理的な方法で航海している。(通過した海域は)国際水域であり、今までの航海も法の支配や国際海洋法に基づいてきた」と話しました。
「デ・ロイテル」は、オランダ海軍屈指の大型戦闘艦艇で、デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級の3番艦として2004年4月に就役しました。建造は同国造船大手のダーメン・グループが手掛けています。全長は144.24m、幅が18.82m、排水量6048tで、乗組員数は227名。速力は30ノット(55.6km/h)です。
オランダ海軍では防空指揮フリゲート(LCF)に位置づけられており、航空機やミサイルといった脅威から艦隊全体の防空を担うとともに、遠征時に作戦指揮を行うオランダ海上部隊(NLMARFOR)の旗艦としても運用できようになっています。
同艦の防空能力を支えているのが、艦橋後方に置かれたAPAR(アクティブ・フェーズドアレイ・レーダー)とヘリコプター格納庫上に配置された「SMART-L ELR(Extended Long Range-radar)」です。特に「SMART-L ELR」は改修時に取り付けられた最新鋭のレーダーで、艦から半径約2000km以内の弾道ミサイルを探知・追跡することができます。
オランダ海軍は、弾道ミサイルを大気圏外で迎撃できるミサイルSM-3を保有していませんが、アメリカを含む他国の艦艇と情報を共有することで、弾道ミサイル防衛(BMD)の一翼を担います。
トマホークも搭載予定! 強力な武装と海軍の誇り
「オランダはNATO(北大西洋条約機構)の構成国の1つだ。海上自衛隊との共同訓練も行うことになるが、今後、日本とオランダが協力を行っていくうえで、相互運用性や連携の重要性を見つけていくことが大事だと思っている」(リーブレフス司令官)
「デ・ロイテル」は前甲板に40セルのVLS(垂直発射システム)を備え、スタンダード・ミサイル「SM-2ブロックIIIA」や「RIM-162発展型シースパロー(ESSM)」を発射できます。また、同艦は2025年3月にオランダの海軍艦艇として初めて巡航ミサイル「トマホーク」の発射試験に成功。同国は170発以上の「トマホーク」を取得する計画で、ゆくゆくはデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級4隻全てが運用可能になる予定です。
このほか対艦ミサイル「ハープーン」の4連装発射機2基や、敵の水上艦艇と潜水艦の両方を無力化できるMk46魚雷の発射管を搭載。主砲として艦首に 127mm単装速射砲1基、近接防御用に30mmガトリング砲「ゴールキーパー」を1基、備えています。ヘリコプターの運用能力も付与されており、東京寄港時にはNHインダストリーズが開発した多用途ヘリコプターNH90が搭載されていました。
艦名の「デ・ロイテル」は英蘭戦争で大きな功績をあげた海軍軍人のミヒール・デ・ロイテル提督が由来。オランダ海軍では代々、「デ・ロイテル」の名前が新型艦に受け継がれており、その人気の高さが伺えます。
台湾海峡を抜け日本へ インド太平洋へのコミットメントを強化
オランダ海軍艦艇の来日は、フリゲート「トロンプ」が2024年6月に長崎港へ寄港して以来2年ぶり。東京国際クルーズターミナルへの接岸は初めてとなります。
オランダ政府は2020年11月に「インド太平洋ガイドライン」を発表し、安全な航行と海上安全保障を促進するため積極的にコミットメントしていくことを示していました。同国は日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランドといった法の支配や航行の自由、開かれた国際秩序といった共通の価値を基盤とするパートナーシップを強化していくことを目指しており、今回の「デ・ロイテル」の展開でも共同訓練や交流を通じて、相互運用性の向上や国際的な安全保障協力の強化を図っていくことを目的としています。
リーブレフス司令官は「ここにオランダのフリゲートがいるということは、海が隔絶されたものではなく、ひとつに繋がっているということを示している」と述べたほか、「例えばロッテルダムは日本からは自動車が運ばれ、中国のコンテナ船が寄港し、ペルシャ湾からは原油タンカーがやってくる。海で何か問題が起きると、一か所に留まらない。そうした課題に対処するため日本などの友好国と一緒に法の支配に基づいて働けることを光栄に思う」とも語っていました。
今後「デ・ロイテル」は、ハワイ沖で行われる環太平洋合同演習(RIMPAC)に参加するため、太平洋を東進する予定です。