サッカーのワールドカップ(W杯)日本代表、伊藤洋輝選手(27)の最大の武器は左足だと、かつての指導者やチームメートは口をそろえる。その精度と強度のあるキックは、攻撃の起点として期待されている。
小学校卒業後、ジュビロ磐田の下部組織に所属。中学・高校を通じてプレーした。
「中学3年生で大学生に間違えられた」と逸材ぶりを語るのは、当時監督として指導に当たった世登泰二さん(59)。トップチームの練習試合で得点を決める姿を見た記者から「あのすごい選手はどこの大学から参加しているんですか?」と聞かれたという。
当時、すでに身長は180センチを超え、ピッチ上での態度も堂々としていた。左足から繰り出すキックは精度、強度ともに際立っており、「はまったときは、Jリーグでも見たことのないようなシュートを放っていた」と振り返る。
自信と向上心、負けん気の強さも群を抜いていたが、「てんぐになるところもあった」。中3の時の韓国遠征では、初戦で大活躍後、気を緩めたのか、2試合目の動きが緩慢になった。「チームのためにプレーしていない」と途中交代させると、ベンチでユニホームを頭からかぶり号泣。気持ちを入れ替え、その後は「またすごいパフォーマンスを見せた」。
適性を見極めるため、フォワードからセンターバックまでさまざまなポジションで起用した。「僕、どこですかね」「きょうのプレーはどうでした」と貪欲に吸収し、プレーだけでなく、精神面でも成長していった。
当時のチームメートで、高校でも同級生だった牧野恋音さん(26)は「左足は飛距離も精度もずばぬけていた」と語る。ロングパス一本で局面を打開することも多く、「(ボールを)預けておけば何とかしてくれた」と振り返るほど絶対的な存在。「とにかく真面目で寡黙。教室でもストレッチしているようなキャラだった」と明かす。
忘れられない場面がある。牧野さんが居残り練習中、通りかかった伊藤選手がゴールライン付近から蹴ったボールは、スパイクも履いていないのに軽々とハーフラインを越え、すさまじいキック力を見せつけた。
「攻撃の起点となるキックを当たり前に出してほしい」。世界が注目する舞台で、かつてのチームメートの活躍が見られることを、牧野さんは心から楽しみにしている。
〔写真説明〕サッカーW杯のオランダ戦前半、クリアする日本代表の伊藤洋輝選手=14日、米ダラス