シンガポールの象徴マーライオンの近くにあるモスバーガーで「和牛バーガー」を発見。しかし、その正体は日本産ではなくオーストラリア産でした。その背景と、シンガポールならではの食体験をレポートします。
マーライオンの近くで見つけた「和牛バーガー」
シンガポールの象徴として知られるマーライオン。その周辺には観光客向けのレストランやカフェが数多く並んでいますが、実は最も近い飲食店のひとつに、日本発祥のファーストフードチェーン「モスバーガー」があります。
店内に入ると、おなじみのロゴや注文システムは日本とほぼ同じ。しかしメニューを見てみると、この国ならではのご当地商品も数多く並んでいます。
そのなかで筆者の目を引いたのが、「和牛(Wagyu)」の文字を大きく掲げたハンバーガーでした。定番の「MOS Cheese Wagyu」だけでなく、「Teriyaki Wagyu」「Teriyaki Truffle Wagyu」「Double Mushroom Wagyu」など、日本ではあまり見かけないバリエーションが用意されています。
さらに驚いたのは価格です。これらの和牛バーガーはおおむね9シンガポールドル前後で販売されていました。日本円に換算すると1000円程度で、高級和牛を使った商品としてはかなり手頃な印象です。
「和牛」と聞けば、多くの日本人は黒毛和牛やA5ランクの高級牛肉を思い浮かべるでしょう。筆者も当然そう考え、「これって日本の和牛なんですよね?」と店員に尋ねてみました。
すると返ってきた答えは意外なものでした。
「違うよ、オーストラリア産だよ」
店員は迷うことなく即答します。和牛なのにオーストラリア産とはどういうことなのか。筆者は一瞬、頭の中が混乱してしまいました。
海外で「和牛」といえば実はオーストラリア産が主流?
じつはモスバーガーで使われていたのは、日本産和牛ではなく「オーストラリア和牛(Australian Wagyu)」と呼ばれる牛肉でした。
これは日本の和牛血統を持つ牛をオーストラリアで繁殖・肥育したもので、現在ではオーストラリアは日本国外最大級の和牛生産国として知られています。現地では日本から導入された和牛の血統をもとに生産が行われており、なかにはアンガス牛など他品種との交雑種も数多く存在します。
価格は日本産和牛より大幅に安く、シンガポールのファーストフード店やカジュアルレストランで「Wagyu」と表示されている商品の多くは、このオーストラリア和牛です。
また、交雑によって脂の量や肉質も調整されているため、日本の高級和牛ほど脂が強くなく、ハンバーガーやステーキとして食べやすいのも特徴です。位置付けとしては超高級食材というより、「一般的な牛肉よりワンランク上のプレミアム食材」といったところでしょう。実際、モスバーガーでも通常のバーガーよりやや高価な上位商品として販売されていました。
筆者も実際に和牛バーガーを注文し、店先の屋外席で味わってみました。目の前にはマーライオン公園と高層ビル群が広がっています。
日本生まれのハンバーガーチェーンで、オーストラリア産の和牛を使ったバーガーを食べる。そして視線の先にはシンガポールの象徴であるマーライオン――。
日本、オーストラリア、シンガポールという3か国がひとつのハンバーガーの中で交差する、不思議ながらも実にシンガポールらしい体験でした。