欧州の次世代戦闘機「開発中止!」→日本のGCAPへの参加は「あり得ない」これだけの理由

2027年、エアコン価格は上昇へ

ドイツとフランスが進めていた次世代戦闘機「NGF」の共同開発が中止となりました。ドイツが日英伊の「GCAP」に合流するとの観測もありますが、軍事ジャーナリストは「可能性は極めて低い」と分析します。

プロジェクトの核「有人戦闘機」の共同開発は頓挫

 ドイツのフリードリッヒ・メルツ首相は2026年6月10日、同国の首都ベルリンで開幕した国際航空宇宙ショー「ILA Berlin 2026」の開会演説で、フランスとの次世代戦闘機共同開発を、今後追求しないことでフランスのエマニュエル・マクロン大統領と合意したことを明らかにしました。

 ドイツとフランス、スペインは2019年6月に、第6世代戦闘機「NGF」(New Generation Fighter)と、NGFを中核とする航空システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)の共同開発で合意していました。NGFはドイツとスペインが運用しているユーロファイターと、フランスが運用しているダッソー・ラファールをそれぞれ後継するものです。

 しかし、NGFの共同開発計画の合意は難航を極め、2025年初頭ごろから、実現しないのではないかと見られていました。

 今回メルツ首相が明らかにしたところによれば、FCASの「キモ」とでも言うべき指揮統制システム「コンバットクラウド」などの共同開発は継続される見込みで、共同開発を追求しない、すなわち共同開発が中止となるのはNGFだけのようです。

 FCASの中核となるNGFの共同開発計画が中止となったことから、一部メディアではドイツとスペインが、日本、イギリス、イタリアが第6世代戦闘機を共同開発する「GCAP」に合流するのではないかとも報じられていますが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)はいくつかの理由で、その可能性は極めて低いと考えています。

「話し合いどころではなくなった」頓挫の理由

 NGFの共同開発が頓挫した最大の原因は、共同開発参加国の企業がどの程度開発と製造を行うかを定めた「ワークシェア」の合意ができなかった点にあります。

 もともと、筆者は2019年6月に開催されたパリ・エアショーの会場で、有人戦闘機すなわちNGFの開発はフランスのダッソー・アビエーションが、有人戦闘機と行動を共にする「CCA」(協調戦闘機)の開発はドイツとスペインのエアバスがそれぞれ主導すると聞いていました。

 それから7年の間に何があったのか、本当のところはわからないのですが、エアバスがNGFの開発と製造への関与を拡げることを主張し、それに腹を立てたダッソー・アビエーションが姿勢を硬化して、話し合いどころではなくなったとも言われています。

スゴい顔ぶれの「ドイツチーム」が結成

 NGFの開発中止を公にしたドイツは同日(2026年6月10日)、NGFに代わる第6世代戦闘機を開発する企業連合プロジェクト「Team Gen 6」の立ち上げを発表しています。メルツ首相はこのプロジェクトの主導権はドイツが握るべきだと述べており、この方針が変わらない限り、日英伊が対等に進めているGCAPに加わるのは難しいでしょう。

 Team Gen 6にはエアバスの防衛部門、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース、オートフルーク、ディール・ディフェンス、ヘンゾルト、リープヘル、MBDA、MTUエアロ・エンジンズ、ローデ・シュワルツといった錚々たる企業が参加しています。

 これだけの顔ぶれを納得させるだけのワークシェアをGCAPが捻出することは、ほぼ不可能ですし、あえて捻出しようとすれば、GCAPの計画が空中分解する可能性が高いと思われます。

無人機に傾注するドイツの動き

 航空自衛隊のF-2戦闘機の退役開始が2035年に設定されていることから、GCAPで開発される有人戦闘機は2025年の就役が予定されています。これに対してNGFは2040年代半ばの就役が見込まれていました。

 この背景には、2040年代半ばまで、ドイツとスペインはユーロファイター、フランスはダッソー・ラファールの能力向上と、CCAを組み合わせて運用することで、ロシアなどに対する優位性が保てると考えていたのでしょう。

 NGFの前途が怪しくなってきた2025年に入ってから、ドイツはCCAの開発と戦力化に傾注しています。

 前に述べたILA Berlin 2026では、Team Gen 6のメンバーであるエアバス・ディフェンス・アンド・スペースがCCAのU760「レイブンストーム」を発表していますし、同じくTeam Gen 6のメンバーであるディール・ディフェンスも、ユーロファイターの主兵装である空対空ミサイル「IRIS-T」を搭載するUAS(無人航空機指システム)「コブラ600」を発表しています。

 これらのUASは2030年代に入ってからの実用化が見込まれていますが、エアバスがアメリカのクラトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズと組んで開発を進めているCCA「ヴァルキリー」は2029年の配備開始を目指しています。

だからドイツが頼んできても「やめとけ」

 ドイツの無人戦闘機への傾斜は産業界と軍に限った話ではなく、たとえばメルツ首相は2026年3月に政治ポッドキャスト「Machtwechsel」に出演した際、「20年後も有人戦闘機はまだ必要なのか」「そんな高コストで開発する必要があるのか」と述べています。ボリス・ピストリウス国防相も、第6世代戦闘機を開発するのではなく、CCAの統御能力が高いF-35(ドイツは35機の導入を予定)の追加調達も選択肢の一つだと述べており、ドイツの考える第6世代戦闘機は、必ずしも有人戦闘機ではない可能性もあります。

 他方、GCAPに参加しているイタリアのレオナルドのロレンツォ・マリアーニCEO(最高経営責任者)はディフェンスニュースに対して「ドイツの(GCAPへの)参加はより多くの資金や能力を得られる可能性がある一方で、開発スケジュールに影響を及ぼす可能性には留意すべきだろう」と述べ、ドイツの参加に慎重な姿勢を示しています。

 GCAPに正式メンバーとして参加している3か国の中で、最も早く新しい有人戦闘機を必要としているのは日本でしょう。開発スケジュールを乱さずにできるだけ早く就役にこぎつけたいのであれば、日本国としてドイツのGCAPへの参加は、謝絶すべきだと筆者は思います。