昨年12月にH3ロケット8号機の打ち上げが失敗してから半年足らず。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は異例とも言える早さで原因究明と対策を講じ、打ち上げ再開にこぎ着けた。背景には、原因特定につながる物的証拠が残っていたことに加え、既に6号機の機体が準備済みだったなどの「巡り合わせ」もあった。
ロケットの打ち上げ失敗では、問題のあった機体そのものが失われることがほとんどで、原因究明が難しくなる。エンジンが途中停止した1999年11月のH2ロケット8号機では、海底からエンジンを回収できたが、極めてまれな事例だ。通常は、飛行中に送られてきた機体各部のデータや、製造時の記録などを突き合わせて仮説を立て、再現試験で検証するなど地道な作業の積み重ねが必要で、再開までに年単位の時間を要することも少なくない。
23年3月のH3初号機の場合は、H2Aで実績のある第2段エンジンが着火に失敗したことが直接要因だった。電気系統でショートが起きたことまでは突き止めたが、数カ月たっても発生箇所を一つに絞り込めず、すべてに対策を講じたことも遅れの一因となった。
H3・8号機では、失敗直後のデータ解析などで衛星搭載部の破損が直接の要因だと特定。その後、後続機用に製造、保管されていた搭載部の検査で、ほぼ全てに破損につながる剥離が見つかった。部品同士を接着する工程に原因があることも分かり、補修などの早期の対策につながった。
液体燃料エンジン3基を用いる今回の機体は、初号機に次いで打ち上げられる計画だったことも大きかった。初号機の失敗で順番が遅れたものの、鹿児島県・種子島宇宙センターで準備が進められていたため、早期打ち上げが可能になった。
初号機と2号機の開発責任者としてどちらも経験したJAXAの岡田匡史理事は、早期再開について「多くのミッションが待っているが、やるべきことをやらずに打ち上げることはあり得ない。『スケジュールありき』ではない」と強調。「2号機もやり切ったという感覚だった。今回も同じ感覚だと思う」と話した。
〔写真説明〕打ち上げ前の燃焼試験を行うH3ロケット6号機。機体の第1段は2023年に既に鹿児島県・種子島宇宙センターに搬入されていた=3月15日、同センター(JAXA提供)