「日本の主力戦車」が大改造へ!「車体を延ばそう」「車輪増やそう」もはや別モノに? 乗員待望の人道的装備も!?

「エアコンの2027年問題」とは?

陸上自衛隊の10式戦車が、2026年の富士総合火力演習で主砲の射撃展示を見送りました。しかしその裏では、防御力などを大幅に向上させる“生まれ変わる”ための能力向上計画が進行しています。

総火演の“華”が見られず。しかし

 2026年6月7日、陸上自衛隊東富士演習場で「総火演」こと令和8年度の「富士総合火力演習」が行われました。ただ、陸上自衛隊の主力戦車である10式戦車は、4月21日に発生した主砲暴発事故を考慮して「再発防止に万全を期す」(荒井正芳陸上幕僚長談)ため、主砲の射撃展示の実施は見送られることとなりました。

「総火演」の「華」の一つである主砲の射撃展示が見送られたため、今年の総火演では脇に回った感のある10式戦車ですが、数年後の総火演では、「生まれ変わった」姿で、主役の座に返り咲くことになると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は考えます。

 10式戦車はその名が示す通り、2010(平成22)年に部隊使用承認を取得し、同年から調達が始まりました。調達開始からは15年以上、2002(平成14)年の開発開始から四半世紀近く経過していますが、射撃統制装置や機動力などの面では、他国の主力戦車と比べても引けを取らない能力を備えていると筆者は思いますし、今後も長期にわたって運用していける装備品だとも思います。

 ひと世代前の主力戦車で旧ソ連の主力戦車との正面対決を意識して開発された90式戦車は、防御力を重んじるあまり、戦闘重量が50.2tに達する事実上の「北海道専用戦車」になってしまいました。その反省から、10式戦車は本州以西にも配備するため、極力軽量かつコンパクトな戦車として開発されました。

 10式戦車の開発時の状況や陸上自衛隊のニーズを鑑みれば、このコンセプトは間違っていないと筆者は思います。しかし、軽量かつコンパクトな戦車としたことで、防御力や乗員の生存性の面において、戦闘様相の変化に対応できなくなりつつあるのも事実です。

イスラエル製システムを追加へ

 そこで、防衛省・陸上自衛隊は10式戦車の防御力を強化するための追加装備を計画しています。

 ひとつは、レーダーでドローンや対戦車ミサイルの接近を感知すると、コンピュータが接近してくる物体の方向を計算して自動的に迎撃体を発射し、迎撃体の直撃、または爆風の衝撃波により脅威を無力化する「アクティブ防護システム」です。

 また、乗員の生存性を向上させるため、戦車の指揮を執る車長がハッチから身を乗り出さなくとも、車内からの操作で機関銃などを射撃できる「リモート・ウェポン・ステーション」(RWS)も追加する計画です。

だから「大幅に生まれ変わる」のだ!

 10式戦車に追加装備されるアクティブ防護装置については、イスラエルのエルビット・システムズが開発した「アイアンフィスト」が、またRWSも同社の製品の搭載が決定したと筆者は耳にしています。

 アイアンフィストはドイツのレオパルト2A8などに搭載されるアクティブ防護システム「トロフィー」(約800kg)に比べれば軽量ですが、それでも重量は約400kgに達します。RWSの重量はユーザーの要求によって変化するので、一概に何kgとは言えませんが、現状の10式戦車が砲塔上に装備している7.62mm機銃を搭載するタイプでも、その重量は数百kgに達すると考えられます。

 そこで防衛省・陸上自衛隊は、アクティブ防護システムとRWSの追加装備によって生じる重量の増加に対応するため、10式戦車の車体を若干延長し、無限軌道(キャタピラ)の内側で、履帯を支えたり回転を伝えたりする複数の小さな車輪の「転輪」の個数を、現状の5つから6つに増やすことを計画しています。

 既に実績のある戦車にアクティブ防護システムとRWSを追加装備することは、世界的なトレンドとなっていますが、追加装備の重量増加に伴う機動力の低下を抑えるため、車体の延長や転輪の増加を行う事例は、筆者の知る限りほかに例はありません。

 前に述べたように10式戦車は日本全土で運用する前提で開発されており、開発当時は大きな脅威と考えられていた、ゲリラやコマンド部隊との市街戦への対応能力を重視していたため、極力車体をコンパクトにまとめる必要がありました。

 しかし現在の陸上自衛隊では高い防御力を持つ24式装輪装甲戦闘車やAMV XPなどを市街戦に充てて、10式戦車は国家対国家の正規戦の切り札とすべく、北海道と九州に集中配備しています。このため10式戦車は現状ほどコンパクトである必要はなく、むしろ転輪の増加や車体の延長により、柔軟な運用ができる戦車として、長期にわたって使い続けていくことは賢明なのではないかと筆者は思います。

乗員が超嬉しい「アレ」がつくかも!?

 また、10式戦車の乗員にとって気になるであろうポイントもあります。それは「エアコン」です。

 10式戦車には乗員用のエアコンが装備されておらず、8月に総火演が開催されていた頃は、暑さで乗員の負担は相当なものだったと筆者は耳にしています。

 今回計画されている能力向上計画には乗員用エアコンの装備は含まれていないものの、アクティブ防護装置などの追加に伴って増える電子機器を冷却するためのエアコンの強化も計画されています。あくまでも電子機器用ですが、エアコンが発する冷風は乗員の肉体的な負担を軽減することは間違いなく、生まれ変わる10式戦車は、現状よりも乗員に優しくなるものと思われます。