日本の装備品輸出「売れるモノ/売れないモノ」が鮮明に? “三原則”改訂で商機拡大 「あれも欲しい」に応えられるのか

約50年ぶり 小売業に迫る大改革

防衛装備移転三原則が改訂され、殺傷能力を持つ装備品の輸出も可能になりました。では、輸出する装備品の「売れ筋」になり得るのは、一体何なのでしょうか。

「あぶくま型」が初の移転事例に?

 小泉進次郎防衛大臣は2026年5月31日、フィリピンのギルベルト・テオドロ国防大臣と会談し、海上自衛隊のあぶくま型護衛艦を「除籍後速やかに移転をする」ことで合意したと発表しました。

 日本政府は“日本の安全保障に資する”という条件付きで、防衛装備品の海外移転を認める「防衛装備移転三原則」を閣議決定したのが2014年4月のことですが、この時海外移転が認められていた防衛装備品は、殺傷能力を持たない「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」に使用する装備品に限定されていました。

 政府は2026年4月21日に防衛装備移転三原則を改定して、護衛艦のような殺傷能力を備える防衛装備品の海外移転を可能にしています。その改訂前の4月18日にオーストラリアとの間で、海上自衛隊が運用するもがみ型護衛艦をベースとする汎用フリゲートの移転契約を締結していますが、この汎用フリゲートは改訂前の防衛装備移転三原則でも認められていた「共同開発」に該当するため、純粋な殺傷能力を持つ防衛装備品にはあたりません。

 フィリピンへの移転が濃厚となったあぶくま型護衛艦は、艦齢36年から33年に達しており、早晩、海上自衛隊からの退役も見込まれています。順調に進めば自衛隊での使用を想定して開発・製造された殺傷能力を持つ防衛装備品の海外移転は、あぶくま型が初となると考えられます。

 メディアやネット上ではこの勢いに乗って、日本製の防衛装備品がバンバン売れていくという期待や、それに対する懸念の声も聞かれますが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は当面、売れるものと売れないものに、大きな差が生じると考えています。

「売れないモノ」の筆頭は

 売れないものの筆頭に挙げられるのが航空機でしょう。

 日本は海上自衛隊が運用しているP-1哨戒機とUS-2救難飛行艇、航空自衛隊が運用しているC-2輸送機を、インドやUAE(アラブ首長国連邦)といった国々へ提案してきました。

 3機種とも改訂前の防衛装備移転三原則でも海外移転が可能な装備品ですし、筆者は競合機に比べて能力が劣っているとも思わないのですが、価格の高さや海外での実績の乏しさ、他国軍と比べて要員のレベルが比較的高い自衛隊での使用を想定して開発されたことなどから、実現には至っていません。

航空機は輸出よりも、まず…

 日本の航空機関連メーカーの意見を取りまとめている一般社団法人日本航空宇宙工業会(SJAC)は5月26日に会長会見を行い、SUBARU取締役の中村知美前会長(5月26日付で退任)が記者からの質問に答える形で「防衛装備品の国際共同開発の流れは変わらないと思う」と述べました。

 そのうえで、イギリス、イタリアと共同で行っている新有人戦闘機開発プロジェクト「GCAP」を順調に進めることで、日本の航空技術力をアピールしていけるのではないか、との考えを示しています。

 筆者もまずはGCAPを順調に進めて、諸外国との間の関係を深めたその先に、単独開発する航空機を移転する道は開けるのではないかと思います。

 陸上の装備品はどうでしょうか。フィリピンは同国で行われた多国間軍事演習「バリカタン26」に参加した陸上自衛隊の16式機動戦闘車や10式戦車に高い関心を示しているとも報じられています。

 しかし、車両の海外移転も難しいのではないかと筆者は思います。

 16式の生産は数年のうちに終了する見込みですが、10式戦車の新規製造と大規模改修は今後も長期に渡って続く予定ですし、メーカーの三菱重工業は25式偵察警戒車、24式機動120mm迫撃砲などの生産も行っていますので、海外からの需要に対応するのは難しいと考えられます。

「売れるモノ」の筆頭は

 最も売れそうな防衛装備品は艦艇でしょう。

 前に述べたようにオーストラリアとは汎用フリゲートの契約が締結されていますが、この汎用フリゲートについては、現在オーストリアと準同型艦のフリゲートを運用しているニュージーランドでも、同国海軍の新型フリゲートの候補に選定されています。また、もがみ型もインドネシアなどが関心を示しています。

 海上自衛隊が運用している護衛艦や潜水艦に対しては、フィリピンだけでなくインドネシアなども関心を持っています。このため防衛装備庁は2025年9月、「東南アジアにおける艦艇の維持整備体制」つまりアフターサービス体制の構築に向けた体制の細部検討役務の一般競争入札を行っています。

 日本は商船分野で中国と韓国の後塵を拝していますので、日本製の戦闘艦など売れないという意見も見受けられますが、韓国はともかく、中国から戦闘艦までは買いたくないと考えている国は少なくありませんし、中古であれば品質、価格とも韓国への競争力は十分にあると筆者は思います。

 いずれにせよ日本は挑戦を始めたばかりのチャレンジャーなのですから、あれもこれもではなく、可能性の高いものに注力して、メインターゲットと位置づけているアジア太平洋諸国の信用、信頼を勝ち取っていくべきなのではないかと考えます。