ホルムズ海峡の事実上の封鎖など中東情勢の緊迫化を受け、日本の海運大手3社が2027年3月期の業績予想で軒並み減益を見込んでいます。各社は燃料費高騰などのコスト増に直面するなか、どのような対策を講じようとしているのでしょうか。
「二重の封鎖」で軒並み減益予想
「ホルムズ海峡を巡る情勢により、海上輸送の安定確保が、国際社会にとって、いかに重要であるかということが、改めて強く認識されている」――
商船三井が開いた決算会見の冒頭、同社の田村城太郎社長はそう述べました。ホルムズ海峡と紅海という「二重の封鎖」に直面する中で発表された日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手海運3社による2027年3月期通期業績予想は、いずれも経常段階以降が減益になるとしています。
アメリカとイスラエルが2026年2月28日にイランへ攻撃を行い、それに伴ってホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となって以降、中東情勢は極めて緊迫した状況が続いています。日本は原油の9割を中東地域から輸入しており、今の状態が長引けば長引くほど、経済に大きなダメージを受けることになります。
出光タンカーが管理する「出光丸(IDEMITSU MARU)」や「ENEOSオーシャン」が管理する「ENEOS ENDEAVOR」などがペルシャ湾の外に出ているものの、まだ多くの日本関係船舶が取り残されており、同海域の混乱は全社的に運航コストを大幅に押し上げる要因となっています。
まず日本郵船は前年同期比で経常利益が12%減の1850億円、純利益が8%減の1950億円になるとの見通しを示しています。商船三井は経常利益が18%減の1450億円で、純利益が20%減の1700億円と予想。川崎汽船は経常利益が8%減の1000億円に、純利益は29%減の950億円になると見込んでいます。
各社で共通している点は、通年でスエズ運河の通峡ができず、アフリカ最南端の喜望峰を経由するルートが継続すること、中東情勢の緊迫とホルムズ海峡の封鎖状態が第1四半期(6月末)まで継続し、「7月以降は順次、正常化していく」という前提で業績の予想を行っている点です。しかし、6月に入っても中東情勢は未だ打開の糸口が見えません。
商船三井の田村社長は「業績予想の一番のポイントは、ホルムズ海峡の実質的な封鎖がどの程度続くかを見通すという点だ」と語ります。
航路の迂回長期化や地政学的リスクにより、船用燃料価格が大幅に上昇しています。2026年度業績見通しにおける燃料油の平均価格を見ると、川崎汽船の前提では2025年度通期実績の1トンあたり528ドルから697ドルへ、日本郵船では539.11ドルから741.08ドルへと、大きなコスト増が織り込まれています。商船三井も超低硫黄燃料油(VLSFO)の単価が531ドルから655ドルへ上昇するとしています。
いいお客さんだった中東向けにも運べない
これに加え各社は滞船の発生によって運航効率が低下。対象海域を航行する際の戦争保険料の上昇がダイレクトに利益を圧迫します。中長期的に中東情勢の悪化が世界経済の下押し要因となった場合、荷動きそのものが鈍化し、全社的な市況下押しにつながる潜在的リスクも指摘されています。
「一番大きいのは、燃料油の価格上昇だ」と商船三井の田村社長は現状について話します。
「コストが増えるという直接的な影響に加えて、増えた分を価格運賃に転嫁できない部分がマイナスの影響になる。具体的には短期の契約の比率が多いコンテナ船、自動車船、ケミカル船で、この3つを合わせると240億円ぐらいのインパクトになるのではないか」
日本郵船の曽我貴也社長も「コストの部分で、特に大きいのは燃料価格」と話します。「(業績見込みの前提のとおり)7月1日にホルムズ海峡が開き、その段階ですぐに燃料価格が正常化するかどうかというのは、全く見えない」としました。
輸送契約を主体とする製品輸送やケミカル輸送では、中東向け出荷の減少や配船ルートの停止がダイレクトに響いています。さらに、航路の迂回や停滞による運航費の増加がそのまま損益悪化に直結しているような状況です。
リスク回避のために“陸送”
日本郵船は自動車船事業について中東情勢の緊迫による費用の増加や、輸送台数の減少によって139億円の減益を見込んでいます。
同社の曽我社長は「自動車に関しては、日本やタイなどアジアから中東の方に持っていくのが圧倒的に多く、中東各国の方々から大型の車両を大変好んで買っていただいていた」と高級車の根強い人気について説明します。
「購買欲は盛んで輸送の需要はあるものの、ホルムズ海峡は入れない。そこで別なルートを開拓するため、すでに動き出している。例えばオマーンなど安全なところで荷物を降ろして、陸上のロジスティクスを通じて湾岸諸国へ運ぶルートというのもあり得る」
一方で、中東以外の調達ルート(米国発など)へのシフトや、トレードパターンの複雑化(航海日数の長期化)が起きると、船腹需給が一時的にタイト化し、スポット運賃市況が上昇するという側面もあります。ただし、これも全体に及ぶコスト増を完全に相殺するには至っていません。
曽我社長は「ホルムズ海峡が封鎖されることによって、日本へ原油の大半がそう簡単に入ってこなくなる。各メーカーが石油やナフサを使って生産していたものが今まで通りにはできない。そういう部分が、おそらく今後出てくる可能性はあるだろう」と危機感を示しました。