愛知県のJR春日井駅には、王子製紙春日井工場と接続する専用の貨物線があります。地元民でも“知る人ぞ知る”という存在のこの線路について、どのように使われているのか調べてきました。
王子製紙春日井工場から、機関車が出動!
日本屈指のターミナル駅である名古屋駅から中央本線で20分ほどの場所にあるJR春日井駅。この駅から一本だけ脇にそれる形で分岐しているレールがあります。それが王子製紙春日井工場に続く専用線です。
昨今、貨物は鉄道からトラック輸送にシフトしているため、各地に残っていた貨物の引き込み線も次々と姿を消しています。そうしたなか、王子製紙春日井工場の専用線は今も現役。工場の稼働に合わせて貨物列車が行ったり来たりしています。そんな現役の貨物線の状況を取材してきました。
JR春日井駅は春日井市の中央付近にあり、市の中心駅として1日当たりの乗降客数も2万5000人弱にのぼります。駅の構造は2面3線で、南側に設けられた側線から駅の南西側にある王子製紙春日井工場へ向けて1kmほどの長さの専用線が敷かれています。
王子製紙は王子グループの中核企業として、主に新聞用紙および印刷・情報用紙の生産・販売を行っています。その王子製紙の主要な工場の1つが春日井工場です。この工場は、春日井市でも最大級の規模となっています。
詳しい運転日時は公開されていませんが、2026年度の『貨物時刻表』を参照すると、名古屋臨海高速鉄道が運行するコンテナ貨物列車が平日の朝10時3分に春日井駅へ到着すると記されています。
どうやらこちらのコンテナが王子製紙の貨物となっており、到着後に春日井工場内へと引き込まれるようです。
いざ出動! 駅と工場を結ぶ日常の風景
筆者(鈴木伊玖馬:乗りもの好きライター)が現場で見た感じでは、コンテナ貨物列車の到着から40分ほどで、王子製紙春日井工場の門が開き、王子製紙所有の小型ディーゼル機関車が出発します。この機関車は専用線をゆっくり通り、5分ほどで春日井駅に到着。側線に留置されているコンテナ貨車と連結します。
その後、機関車はコンテナ貨車を曳いて春日井工場へと戻っていきます。交差道路を通過する際は北門辺りにある踏切が作動し、車両の行き来を遮断。専用線ですが、その様子は普通の電車と変わらないように見えました。
なお、前出の『貨物時刻表』によると、12時30分に春日井駅からコンテナ貨物列車が出発すると記載されています。おそらく、この出発に合わせて工場での積み替えが終わったコンテナ貨車を、再度小型ディーゼル機関車が牽引。春日井駅に戻すのだと思われます。
「工場と駅を繋ぐ線路があり、それが今も現役で使われている」と聞くと、工場の規模の大きさを感じます。とはいえ、作業が午前中というのもあってか、地元の人でもその存在を知っている人は少ないでしょう。
春日井市で育った筆者も数人に聞いてみましたが、その存在を知る人はやはり多くありませんでした。ただ、筆者の母は「数年前に昼頃、付近をクルマで走行中に一度だけ踏切で止められた記憶がある」と話していました。おそらくコンテナ貨車を春日井駅に戻す作業に遭遇したのだと思います。
ちなみに、春日井駅で行われる一連の作業は、JR春日井駅西側にある「上条跨線橋」からよく見ることができます。ゆっくりとディーゼル機関車や貨物列車が動いているのを見るのは、なかなか風情があり、とても面白く感じました。
【知る人ぞ知る風景?】可愛らしい機関車が重くて長いコンテナ列車を引っ張る様子(動画で見る)