ペットボトルや日用品などで当たり前になった「リサイクル素材」。しかし、高い強度と安全性が求められる自動車の製造において、リサイクル材を活用することは極めて困難。しかし、最近では自動車業界も変化しているようです。
自動車の素材は「バージン材」が当たり前? メーカーが挑むリサイクル技術の最前線
最近、さまざまな製品で「リサイクル素材を使用!」といったキャッチフレーズを目にします。こうしたリサイクル素材の活用について、自動車メーカーはどのように取り組んでいるのでしょうか。
2026年5月27日から29日までの3日間、パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展 2026」では、各社ともこうした課題に取り組んでいることをアピールしており、そのなかでホンダとマツダを取材してきました。
そもそも、リサイクル素材を活用するといっても、その裏側には複雑な仕組みや工夫が用いられています。
たとえば、コンビニなどで目にするペットボトルは、素材として使われている樹脂がそのまま回収・再利用される仕組みが社会的に整っています。そのうえで、ある程度使いまわしても劣化が抑えられる工夫が施されているのです。
では車体が大きく、かつ高い安全性が求められる自動車の構成材はどうなのか、というと実はそう簡単にはいきません。
製品の生産に使われるもともとの新規材料は「バージン材」、リサイクルされる素材を混ぜ込んだ材料は「リサイクル材」「再生材」などと呼ばれます。バージン材は素材そのままの性能が保証されているのに対して、リサイクル材は回収・再生させる過程で不純物が入ったり、素材の品質そのものが劣化してしまったりすることが一般的です。
そのため、高い強度が求められる自動車部品の品質を鑑みると、「バージン材のみを使ったほうが良い」というのはある種「当たり前」のように捉えられていました。
とはいえ、環境に対する影響や持続可能な資源の調達といったことが強く意識されるにつれ、「バージン材100%使用の製品だけ使いたい」という業界の意見は見直されるようになっています。
ホンダやマツダが目指す「100%リサイクル」への高い壁
ホンダも、これまでクルマを製造する際に必要なアルミ材はバージン材100%の配合で用いていたものの、現在では素材の一部を再生材に変更する取り組みを進めています。通常であれば不純物の混入などで品質が落ちてしまうところを、優れた加工・選別技術によって同等の強度や耐久性を持たせることに成功しているとのことです。
今回、同社ブースには発売されたばかりの最新小型EV(電気自動車)「Super-ONE(スーパーワン)」が展示されていましたが、同車の内装マットには再生PET材を、バンパーについても再生材を使用していることがアピールされていました。
一方、新型「CX-5」を発表したマツダは、業界に先駆けて2005年から導入している使用済みバンパーを新車バンパーに生まれ変わらせる「バンパー・トゥ・バンパー」の取り組みをさらに推し進めており、将来的には自動車のバンパーを100%リサイクルする計画を立てています。
しかし、この「100%リサイクル素材での製造」という構想は、道のりが極めて厳しいのが現状です。全国規模で自動車の廃材を効率よく回収する仕組みを整えなくてはいけないうえに、回収される廃材についても使い回せるだけのグレードのものを揃えなくてはいけません。
ホンダの担当者からは、「いずれ100%再利用素材の自動車を作ってみたい」といった意見も聞かれましたが、その実現可能性も含めてまだまだ途上であることは否めません。それでも、環境や資源に対する負荷を大幅に抑えた自動車の普及が進めば、「自動車に求められる品質のあり方」そのものが、今後大きく変わっていく可能性は十分に考えられるでしょう。