観光目的ではない都市間輸送の特急列車で、座席のグレードが最も高いのは、恐らく近畿日本鉄道の「ひのとり」でしょう。レギュラーシートが新幹線グリーン車並みの座席間隔を誇る豪華特急に乗車しました。
名阪甲特急の新たな看板車両
近畿日本鉄道の特急列車のうち、より停車駅の少ない最速達タイプを「甲特急」といいます。中でも大阪難波と近鉄名古屋を結ぶ「名阪甲特急」には、21000系「アーバンライナー(現・アーバンライナーplus)」や21020系「アーバンライナーnext」といった、その時代の看板車両が投入されてきました。
2020年、その名阪甲特急に登場したのが80000系電車「ひのとり」です。通常の特急料金に加えて「ひのとり特別車両料金」が設定されており、運用上も「特別な車両」として区別されています。豪華車両を観光特急に投入する事例は全国で見られますが、毎日運転される都市間特急を豪華車両にしたのは非常に珍しい事例といえます。
2026年1月の水曜、大阪難波から近鉄名古屋まで「ひのとり」に全区間乗車しました。大阪難波は朝8時発です。早めに到着したため7時30分発の近鉄名古屋行き「アーバンライナー」を見たところ乗車率は20%ほど。デラックスシートの利用者は3人のみとがら空きで出発していきました。
8時発の「ひのとり」の入線が近付くと、ホームに人が増えてきました。今回は1号車のプレミアムシートを予約。1号車と6号車はハイデッカー構造で、前面展望も楽しめる特別車両です。乗車後に全車両を巡回したところ、大阪難波出発時点で、1号車18人、2号車13人、3号車12人、4号車18人、5号車22人、6号車8人の乗車でした。
レギュラーシートが定員197人に対して65人(乗車率32.9%)、プレミアムシートが定員42人に対して26人(乗車率61.9%)で、プレミアムシートの人気の高さが伺えます。プレミアムシートは1+2列の皮張り座席で座席間隔が1300mm、座席幅以外は新幹線グランクラスにも劣りません。
ハイデッカーのプレミアムシートは設備もサービスも抜群
ハイデッカー構造の眺望は抜群です。最前列はガラス張りで前面展望を楽しめます。ただし、運転士が日よけを使った場合はそれほど前が見えません。
展望が楽しめる座席番号は、大阪難波発は1号車7番の列。近鉄名古屋発は6号車か8号車1番の列です。混乱しやすいので、ネットで購入する際に間違えないように注意が必要になります。他のプレミアムシートと料金を別にして、最前列を「展望プレミアムシート」として設定しても良いのではないでしょうか。
座席自体は枕の好みが分かれる(位置を下げたいときにあまり下げられない)程度で、ゆったりとしていて、非常に快適。シートヒーターは「ほんのり温まる」感じです。ただし、インアームテーブルの安定性が悪く、展開するとガタツキ音がします。音が出ないような工夫がしてほしいところです。
プレミアムシートの車両は、デッキ部分にカフェスポットがあります。2時間程度の乗車ではもったいないほど立派な設備で、コーヒーの味も上々です。この日は利用客が多く、行列ができていました。
大阪上本町ではあまり乗車がなかったものの、鶴橋、大和八木で多くの乗車があります。8時28分着の大和八木で、プレミアムシートの下車客がいたことは驚きました。
大和八木から次の津までは1時間近く停車しないため、もう一度車内を見に行きました。1号車と6号車のプレミアムシートは満席、レギュラーシートは2号車37人、3号車38人、4号車38人、5号車42人なので、定員197人に対して155人乗車(乗車率78.7%)と盛況でした。
レギュラーシートの座席間隔1160mmは新幹線グリーン車と同じであり、バックシェルがあっても圧迫感はありません。座席形状はとても良くできており、2+2列座席の特急形電車の頂点に立つとすら感じられます。横幅に不足を感じなければ、「アーバンライナー」のデラックスシートと同等か、それ以上の座席と思われます。
レギュラーシートの一部車両の車端部にはフリースペースがあり、母親が子供をあやしていました。「しまかぜ」のパウダールームでも感じましたが、近鉄の特急車両は乗客の多彩なニーズをくみ取っていると感じられます。
9時24分着の津ではそれほど乗降は見られず、大半の乗客が近鉄名古屋までの乗車でした。プレミアムシートの快適性により、全く疲れの残らない約2時間でした。