「軽のタクシーは嫌だっ!!」…と思っているのは、お客じゃない? 規制緩和に冷ややかな業界 地方は歓迎?

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国土交通省がタクシーへの軽自動車導入に関する意見募集を行っています。これまで使われなかった理由は、じつは事業者側の事情が大きく、普及のカギも事業者が握っている側面があります。

「タクシーに軽自動車」は人手不足解消に役立つか?

 国土交通省が2026年4月から、タクシーへの軽自動車導入に関するパブリックコメント(国民からの意見募集)を行っています。認められていなかった「軽自動車のタクシー」実現のための規制緩和ですが、なぜ、これまで無かったのでしょうか。

 東京都心で営業するタクシー歴20年以上の運転手の声です。タクシーの営業車に軽自動車を導入する是非について聞いてみました。

「知ってますよ。今度、導入するってやつですよね。運転するかって言われると、私は乗らないと思いますけど……」

 タクシーの営業車は、普通車、大型車、特定大型車だけで、軽自動車の区分がありませんでした。厳密には福祉タクシーへの活用とEV軽自動車を営業車として使うことは認められていたのですが、駅付けや街中を流すタクシーの営業車としては使えませんでした。

 軽自動車導入の声が聞こえなかった理由を、運転者の立場で、こう説明してくれました。

「タクシーに使えない理由を、安全性能や車両耐久性だと思う人もいるかもしれませんが今の時代、それは違うと思いますね。我々からすると、ロングが狙えない。稼げない車両なのです。軽自動車は運転してても疲れるんです。それと、会社(法人タクシー)はタクシーの格が落ちると思うでしょうね。ハイグレードのクラウンやレクサスを使う個人タクシーは、逆に差別化ができると喜ぶかもしれませんが」

 ロングとは長距離の乗車のこと。都内で営業するタクシーにとっては、羽田や成田空港、都県境を越える深夜移動を差し、タクシードライバーの収入を支える要因のひとつです。

 そうしたなか、国土交通省物流・自動車局はタクシーの営業車に軽自動車が使えることを盛り込んだ関係通達の改正に踏み切ろうとしています。営業車の車種区分を定めた通達「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度について」に、新たに軽自動車を設定します。

 物流・自動車局は、軽自動車の活用に向けて慎重な議論を重ねてきました。全タク連(全国ハイヤー・タクシー連合会/川鍋一朗会長)は2024年3月18日、意見書「内燃機関系軽自動車タクシーの導入について」で、希望する全ての営業区域を対象に、決定後の即時実施を求めました。

 ほとんどのタクシー1台の利用が平均1.38人という実情を前提に、乗員を除く定員3人でも活用は可能。サポカーS(低速衝突被害軽減ブレーキ+ペダル踏み間違い急発進抑制装置)搭載車で安全性も担保できる、と踏み出したのです。

軽自動車導入でも、タクシー料金は同じ

 ただ、利用者にとって重要な課題が、利用料金について、軽以外の普通車と同等を全タク連が求めたことです。パブコメ実施中の現行で、物流・自動車局は希望する営業区域への導入を前提に、運賃についてはパブコメ終了後に検討を考えています。全タク連は、これまでと同一料金を求めています。

 維持コストが割安な軽自動車であれば運賃への反映も期待したいところですが、ここにも事情があります。冒頭のタクシードライバーはこう話しました。

「今の営業車の区分になる前には『小型車』と『普通車(中型車)』があったんですよ。小型車は乗客定員3人、普通車は5人というのもあって、定員が少ない分だけ安かった。でも、小型車乗り場にはほとんどタクシーの待機がなくて、いつもトラブっていた。タクシーのドライバーは歩合がほとんど。同じ労働で実入りが少なくなるから、運転する人が少なかったんですよ」

 タクシーの小型車は、車両の変遷で定員の差異がなくなり、東京23区ではほぼ10年前に姿を消しています。タクシー各社で運賃を決定できる余地も生まれ、車種で一律に価格を決定するスタイルから、経営戦略による運賃決定も柔軟になった側面があります。

 それでもなお軽自動車のタクシーを“解禁”する最大の目的は、軽サイズに慣れた女性ドライバーの採用をしやすくすることなどから、地方部の人手不足解消に役立つことが期待されています。タクシーも公共交通のひとつと考えられていますが、地方部でのタクシーは予約すら受付できない状況が各地で生まれています。タクシーの選択肢が広がるというより、タクシー維持のために背に腹はかえられない、という地域が待ちわびている施策かもしれません。

 こうした背景もあり、軽自動車のタクシー導入も全国一律で歓迎されているわけではありません。では、利用者はどう考えるか。国交省のパブコメは5月16日まで受け付けています。