日本の19式にソックリ?“撃ったら即退避”が新常識に なぜ「タイヤ付き自走砲」が急増? 韓国が新型を発表、米陸軍も導入急ぐ背景

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タイヤのついた榴弾砲が流行を保有しているのは自衛隊だけではありません。実は世界で今トレンドともいえる兵器となっています。

トラックに載った自走砲が必要な理由

 韓国の防衛企業の米国現地法人「ハンファ・ディフェンス・USA」が新しい装輪式自走砲K9MH(Mobile Howitzer)を発表し、そのコンセプトが陸上自衛隊の最新自走砲と類似していることが注目を集めています。

 K9MHは、4軸8輪の装輪式(タイヤ式)車両に、K9自走砲の砲システムをベースにした砲塔部を搭載しています。従来のK9は履帯式(キャタピラ式)の自走砲ですが、これを装甲トラックのような車両に積載することで機動性が向上し、道路を使った高速移動や長距離移動が可能となります。

 ハンファ・エアロスペースが過去に公表した情報によれば、K9MHの最高速度は時速100km/h(K9は60km/h)、航続距離は700km(K9は360km)となっています。

 装輪式の自走砲といえば、日本の陸上自衛隊も19式装輪自155mmりゅう弾砲を装備しており、このK9MHとコンセプトと外見が非常によく似ています。この類似性は単なる見た目の問題ではなく、現代戦で生き残るために各国の軍隊が同じ答えへたどり着いた結果といえます。

やはり大きいウクライナ紛争での教訓

 K9MHはアメリカ陸軍が進めているMTC(Mobile Tactical Cannon:移動式戦術砲)計画に提案されており、この計画は現役のM777 155mm榴弾砲の更新を目指しています。

 M777は軽量で知られるりゅう弾砲で、展開能力は高いといわれていましたが、砲自体に自走能力がなく、通常は軍用トラックに牽引されて移動します。

 当然ですが、牽引式は移動状態から射撃までに時間が掛かり、発射地点を相手に探知されると反撃を受ける可能性が高く、発射地点を特定する対砲兵レーダーなどが普及した現代の戦場においては生存性に疑問が持たれています。

 実際、携帯式ドローンが日常的に使われているウクライナ紛争においては、火砲の位置は射撃後にすぐに探知されることが多く、移動までに時間が掛かる牽引式榴弾砲は、逃げる間もなく敵からの反撃で撃破されることが多いのです。M777はかなりの数がウクライナ軍に供与されているとされていますが、撃破例も多数報告されており、“牽引式のなかでは”素早く発射できるという利点はもはやないともいえる状況です。

 この戦訓を受け、アメリカ陸軍でも榴弾砲の運用方法を見直し、M777を更新する新しい榴弾砲は自走式であることが前提となり、同時に戦場での生存性を向上させるために、射撃陣地進入から射撃と離脱を速やかに行える高い機動性も求められました。

 このように、短時間で射撃し、敵の反撃が来る前に即座に陣地を変える戦術を「シュート&スクート」と呼びます。進入・射撃・離脱を素早く繰り返すことで、砲兵の生存性を高めるだけでなく、継続的に火力を投射して相手を制圧することも目的としています。

 この概念自体は決して新しいものではありませんが、ウクライナ紛争で、実際に戦場で想定していたような事例が多かったため、最近ではより注目されることとなりました。

世界中で配備されている装輪式自走砲

 実際、K9MHや19式に限らず、現在では世界各国で装輪式自走砲が存在しています。

 今回のアメリカ陸軍のMTC計画にも、韓国のK9MH以外にも、フランスのカイサル自走砲、スウェーデン・イギリスのアーチャー自走砲、ドイツのRCH 155自走砲、イスラエルのシグマNGが提案されており、一部の兵器は他国の軍隊で実戦配備済みとなっています。

 このほかにも、1980年代に配備されて装輪式自走砲のはしりとされる南アフリカのG6 、イスラエルのATMOS 2000、中国のPCL-181などが存在しています。

 MTC計画では、2026年7月に候補の中から試作車両の契約が結ばれ、試験・部隊評価を経て2028年後半の配備を目指しています。

 アメリカ陸軍が最終的にどの車両を選ぶにせよ、装輪式自走砲へのシフトは、現代砲兵の世界的潮流であることは間違いありません。