【パリ時事】ローマ教皇レオ14世(70)が2025年5月に就任し、8日で1年となった。滑り出しは平穏だったが、トランプ米大統領との対立が次第に表面化。平和・反戦を訴えて譲らず、「世界最大の権力者」に物申す希有(けう)な存在として、信徒以外からも注目を集めている。
「皆さんに平和があらんことを」。昨年5月、教皇はバチカン市にあるカトリック教会の総本山サンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を現し、第一声を発した。史上初の米国出身の教皇。トランプ氏は「何という喜び、栄誉だろう」と祝った。
欧米メディアが「慎重」「控えめ」「沈思黙考」と評す教皇の物腰も相まって、最初の数カ月は波風なく過ぎた。半面、移民ら社会の弱者に寄り添い、トランプ氏とたびたび衝突したフランシスコ前教皇の路線を継承する考えを早々に表明。威圧と傍若無人な振る舞いがトレードマークのトランプ氏との間に亀裂が入るのは時間の問題だった。
昨年9月、トランプ氏が国連総会演説で気候変動を「史上最大の詐欺だ」と否定すると、教皇は「地球温暖化について語る人々を笑う者がいる」と非難。同11月には、トランプ政権による移民の扱いを「極めて敬意を欠く」と切り捨てた。
米イスラエルが今年2月末に対イラン軍事作戦を開始後は「力の誇示はたくさんだ」などと停戦を要求。トランプ氏は「教皇は犯罪、核兵器に弱腰で、外交政策に関してひどい。米大統領を批判する教皇は要らない」と猛反発したが、教皇は「トランプ政権を恐れない」と一歩も引かなかった。
憂慮したルビオ米国務長官は今月7日、バチカン市国で教皇に面会。両者は「健全な2国間関係を促進する共通の決意」(教皇庁)を確認し、事態の沈静化で一致した。
ただ、「休戦」が長続きする保証はない。トランプ氏と教皇の立場は一朝一夕に変わりそうにないからだ。外交筋は「バチカンには軍事力も経済力もない。あるのは道徳的権威だけだ」と指摘。非暴力、愛、人間の尊厳といった基本理念についてメッセージを発信するのは、教皇にとってごく自然な行為だと強調した。
〔写真説明〕6日、バチカン市で子供らと話すローマ教皇レオ14世(中央)(EPA時事)