初設定の「北アメリカ―北海道」直行定期便、勝機はある? 航空会社の“本気度” 日本支社長が明かした意外な利用法とは

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カナダの航空最大手、エア・カナダが北海道で初めてとなる北米直行の定期便を開設します。日本支社長は、好調な訪日客の利用だけでなく、日本からの乗り継ぎ需要など意外な利用法にも期待を寄せていることを明かしました。

「ジャパウ」が注目 カナダから“新千歳”直行!

 カナダの航空最大手、エア・カナダがカナダ西部バンクーバー(YVR)と札幌(新千歳、CTS)のあいだに直行便を2026年12月18日(バンクーバー発は12月17日)に就航します。北海道を発着する北米直行への定期便は初めてとなります。

 週3往復し、新千歳発は日曜・火曜・金曜で新千歳を19時55分に出発、時差の関係でバンクーバーに同じ日の11時10分に到着します。バンクーバー発は月曜・木曜・土曜で、13時25分にバンクーバーを発ち、新千歳着が翌日の15時35分です。期間は冬ダイヤ終了の27年3月26日まで(バンクーバー発は25日まで)。

 新千歳―バンクーバー線は、北海道と北米を結ぶ最速・最短の直行便となります。スキーにうってつけな日本のパウダースノーは「JAPOW(ジャパウ)」と呼ばれ、2025年に約4268万3600人と過去最高を更新した訪日旅行者を押し上げています。極上の「JAPOW」でスキーを楽しめる北海道ニセコ町などの保養地を訪れるカナダ人や、アメリカ人らの獲得を見込みます。

 ただ、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)がインタビューしたエア・カナダの伊藤正彰・日本支社長は「飛行機は双方向の需要が非常に大事なため、日本でもしっかりと需要を作っていきたい」として「意外な利用法」にも着目していることを明らかにしました。

※このインタビューは、2026年3月22日にニューヨーク・ラガーディア空港行きのエア・カナダ・エクスプレスAC8646便が消防車と衝突し、パイロット2人が死亡し、乗客ら数十人が負傷する事故が発生する前に実施されました。

バンクーバーにとどまらない?

 バンクーバーは超高層ビルや高層ビルが林立する大都市でありながらも、海と山が近接した美しい景観が持ち味です。バンクーバー都市圏(メトロバンクーバー)の2024年時点の人口は312万4079人に達します。

「空の玄関口」となっているバンクーバー国際空港に隣接して、公共交通機関「トランスリンク」の無人運転電車「スカイトレイン」の路線カナダラインのYVR空港駅があります。中心部のウオーターフロント駅との間を原則として28分で結んでおり、運行頻度が高いため便利です。

 ただ、伊藤支社長は「バンクーバー空港はエア・カナダのハブ(拠点)空港の一つのため、新千歳―バンクーバー線もカナダ国内とアメリカ、さらにメキシコ、ヨーロッパと結ぶ路線とつながり、潜在需要を掘り起こすのに十分な可能性がある」と強調し、バンクーバー以外の都市への乗り継ぎ需要にも期待します。

北海道-カナダの密接な関係

 たとえば、豊かな自然とオーロラ観賞で人気のあるカナダ北西部のホワイトホースやイエローナイフとバンクーバーを結ぶ路線とも、同じ日に接続します。また、日本との直行便がないアメリカ西部ポートランドとつなぐ路線にも乗り換えられます。

 また、伊藤支社長が意外な用途として挙げたのが、姉妹提携先の自治体の利用です。「カナダの自治体と姉妹提携を結んでいる北海道の自治体は26もある」と紹介し、一例として北海道が姉妹提携を結んでいるアルバータ州にある大都市のカルガリー、エドモントンとも乗り継ぎやすい利点を力説しました。

 新型コロナウイルス禍で見合わせていた提携先への自治体関係者の訪問や、学生らの語学研修なども想定されています。そこで、エア・カナダとしては「各自治体への働きかけもしっかりしながら、姉妹提携先との交流を強く深めてもらうようにしたい」と意気込みました。

「新千歳はゲートウェイになる」 国内の乗り継ぎも視野

 新千歳発着となるとどうしても北海道の需要に目が行きますが、伊藤支社長は「運航期間中は新千歳がゲートウェイ(玄関口)の一つになる」とし、日本における乗り継ぎ需要にも期待を込めます。

 エア・カナダが冬ダイヤ期間中に運航しているバンクーバー線は、今のところ成田空港発着だけです。東北地方の空港ならば新千歳―バンクーバー線と乗り継ぎやすい便もあるため「東北を含めて需要の掘り起こしになり、お客さまと旅行会社の選択肢が増える」と言います。

 例えば仙台空港は新千歳線が多く飛んでおり、青森空港も往復ともに乗り継ぎやすい時間にフライトがあります。

 そんな利便性を生かし、旅行会社に新千歳―バンクーバー線を利用した旅行商品を造成してもらうため、2026年4月上旬に北海道と東北地方の旅行会社向けのウェビナーを開催。カナダ観光局と各州・準州の観光局、アメリカの観光当局の担当者が観光名所などを紹介し、ツアーの企画や販売に役立ててもらうのが狙いです。

 伊藤支社長は「冬向けの商品がゴールデンウイーク前ぐらいに出てきて、販売が始まるイメージを持っている」と解説していました。

 さらに、新千歳―バンクーバー線は大阪(伊丹)、福岡の両路線とも乗り継ぎ可能なため「成田―バンクーバー線を補完でき、成田線が混雑している場合や、札幌に寄りたい場合に活用してもらえるかもしれない」と想定しています。

運航期間終了後はどうなる?

 就航後の新千歳―バンクーバー線は、前出の通り新千歳を2027年3月26日に出る便が最後となります。2027年の夏ダイヤには設定されていませんが、その後はどのような“航路”が待ち受けているのでしょうか。

 伊藤支社長は「一番大事なのは初年度なので、初年度にしっかりと結果を出し、利便性が高くなるような努力を当然していきたい」と説明。その上で新千歳―バンクーバー線を「しっかりと成長、発展させていきたい」と意気込みました。

 手本として挙げたのは、2022年12月に開設されたバンクーバーとタイの首都バンコクを結ぶ路線です。カナダ人が冬の間に温暖なタイを訪れる“避寒地”需要を見込んで就航し、当初は冬の間だけ運航していました。

 ところが、利用が堅調なため「2026年からは夏も含めて通年化されることになりました」と説明しました。

 伊藤支社長は新千歳―バンクーバー線も「数年をかけて通年化、もしくは運航期間を広げられるように、しっかりと視野に入れて取り組む」と力を込めます。旺盛な訪日旅行を追い風に、日本の需要も掘り起こして北海道発着の北米直行定期便を軌道に乗せられるのかどうかの真価が問われます。