【ベルリン時事】ドイツで保守政党連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派、社会民主党(SPD)の連立によってメルツ政権が発足して6日で1年。連立与党内で不和が目立ち、直近の世論調査では政権の支持率は15%(公共放送ARD)と発足以来最低の水準に落ち込んだ。政権浮揚の鍵を握る景気回復は、原油高やトランプ米大統領の高関税政策に阻まれている。
独経済はコロナ禍以来成長しておらず、メルツ政権は「経済再建」を最優先に据えた。ただ、屋台骨の自動車産業は米関税や中国メーカーとの競争激化を受けて、最大手フォルクスワーゲン(VW)が国内で5万人の人員削減を余儀なくされるなど苦境が続く。
政権は国防支出の拡大や巨額のインフラ投資を打ち出し、今年の成長率は1%超えが見込まれていた。しかし、米国のイラン攻撃に端を発した原油高が経済を圧迫。さらにトランプ氏は今月に入って対EUの自動車追加関税を表明しており、独シンクタンクのIFO経済研究所は「貿易戦争に発展すれば、景気後退に陥りかねない」と警鐘を鳴らす。
連立与党は、インフレ対策や年金改革を巡り、市場重視の保守連合と福祉拡充を目指すSPDの路線対立が顕在化。これに対し、支持を広げているのが極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。
公共放送ZDFの4月の調査によると、党別の支持率でAfDが26%と初めて首位となった。移民排斥が旗印だったAfDだが、最近では原発再開などを前面に出し「真の経済改革が実行できるのはAfDだけだ」(ワイデル共同党首)と訴えている。3月に南西部バーデン・ビュルテンベルク州で行われた州議選では、労働者票を取り込んで倍近く票を伸ばした。
トリアー大のウーベ・ユン教授(政治学)は、政権の批判票だけでなく「政策に対する有権者の共感も強まっている」と解説。連立与党は内部で妥協点を見いださなければ、「支持率はさらに下がる」と予測した。
AfDの支持率上昇について、イエナ大のトルステン・オッペラント教授(政治学)は「政権が自らつくった(対立の)イメージ」が原因になっていると指摘。民主主義に本来必要なはずの妥協が「当てにならない」と見なされていると分析した。
〔写真説明〕ドイツのメルツ首相=4日、ベルリン(EPA時事)