空自と海自で運用されてきた傑作ターボプロップ輸送機C-130「ハーキュリーズ」。とくに海自の機体は中古のリプレイス機のため更新が迫っています。防衛省で後継機選定に向けた調査を開始するなか、候補になりそうな機種を比べてみました。
ついに動き出した? 海自C-130輸送機の「後継選び」
防衛装備庁は、昨年(2025)年9月に「固定翼輸送機の整備の方向性を検討するための情報提供企業の募集」を出し、2か月後の11月に「固定翼輸送機に関する代替案分析」業務の一般競争入札を行いました。
これをきっかけに、航空自衛隊と海上自衛隊が運用しているロッキード・マーチン製のターボプロップ輸送機、C-130「ハーキュリーズ」の後継機選定に向けた動きに、国内外から注目が集まっています。
航空自衛隊は現在、第1輸送航空隊(愛知県小牧基地)でC-130Hと空中給油機能を付与したKC-130Hを計16機運用しています。一方、海上自衛隊は第61航空隊(神奈川県厚木基地)でC-130Rを6機運用しています。
導入と運用開始は航空自衛隊の方が早かったものの、全機が新造であったのに対し、海上自衛隊は米本土でモスボール保管されていた中古機のリプレイス仕様なため、こちらの方が可動率が低く、先に更新されるのではないかとも言われています。そこで、ここではC-130Rの後継に挙がっている「候補機」の顔ぶれを見ていくことにしましょう。
C-130Rは、アメリカ海軍が砂漠で保管していた中古のKC-130R空中給油機を使用可能な状態に再生した機体で、2011年3月の東日本大震災における空輸任務で飛行時間が急増し運用停止時期が前倒しになったYS-11M輸送機の後継機として導入が決定しています。
現在は、2014年12月に引退したYS-11Mに代わり、日本全国への人員・物資の輸送に使われています。
防衛省・海上自衛隊はC-130R後継機の導入に向けた予算要求をしていませんが、情報提供企業を募集したことから、早ければ今夏の2027(令和9)年度概算要求で機種選定に向けた何らかの動きが見られるかもしれません。その場合、どのような機種が候補に挙がるのでしょうか。
「候補機」と見られる顔ぶれ
まず必須条件としては、太平洋上の重要な拠点である硫黄島や南鳥島まで余裕を持って運用できる航続距離と十分なペイロードに加え、約1370mという南鳥島航空基地の短い滑走路に発着可能な能力が必須と考えられます。
そのうえで効率を重視するならば、C-130シリーズでエンジンやプロペラなどを換装して飛行性能を向上させたC-130J、もしくはそのストレッチ型であるC-130J-30が最有力候補といえるでしょう。なぜなら、搭乗員や整備員がC-130Rの取り扱いになれていることを鑑みると、新機種導入にあたり必要な教育訓練を効率化できるからです。
なお、最大ペイロードは約20t(C-130J-30)と他の候補機に比べ少ないですが、離陸滑走距離930m、着陸滑走距離427mという短距離離着陸性能は無視できません。
しかしながら、世界に目を向けると、老朽化したC-130をC-130Jで更新しないケースも見られます。その際の選択肢として近年、採用が相次いでいるのが、ブラジルのエンブラエルが開発したC-390「ミレニアム」です。これまでに母国ブラジルだけでなく、ポルトガルやハンガリーに納入され、オランダやチェコ、スウェーデンなどのNATO(北大西洋条約機構)加盟国や韓国などが採用を決めています。
C-390はエンジンこそターボファン双発ですが、大きさはC-130と同規模で、最大ペイロードは26t、航続距離は最大ペイロード時で2000kmとなっており、空中給油機型もあります。
日本でもエンブラエル社製の機体は、リージョナルジェットが日本航空やフジドリームエアラインズなどで運用されていますが、軍用機を採用した実績はありません。
しかし、すでにPR活動を開始したようで、昨年開催されたDSEI Japan 2025にエンブラエルは初めてブースを設け、その壁面には自衛隊塗装のKC-390の絵が描かれていました。
海自の任務に最適な機種とは
C-390と同じターボファン双発の輸送機としては、川崎重工業が開発した国産機C-2もあります。
C-2は、最大ペイロード36t、航続距離は最大ペイロード時で4500kmと、C-390より一回り大きい輸送機です。両者を比べると、輸送能力を重視すればC-2、機体価格を重視すればC-390という選択になるでしょう。
一方で、不整地や短距離での離着陸が求められる戦術輸送機では、ターボプロップエンジンの需要は根強いものがあり、これまではC-130がその需要に応えてきました。しかし、エアバスが開発したA400Mの出現以降、世界のターボプロップ戦術輸送機の市場は新旧対決の構図となっています。
そこで新設計のターボプロップ機としてラインナップに挙がってくるのがA400Mです。同機は、C-130と同じターボプロップ4発ながら、機体サイズは一回り大きく、最大ペイロードは37t、航続距離は最大ペイロード時で3300kmと、飛行性能や輸送能力でC-130J/J-30を上回っています。採用国はC-130Jの23か国には及ばないものの、エアバスを構成するフランスとドイツ、スペインをはじめ、NATO諸国を中心に10か国を数えます。
これら4機種の候補機を見る限り、現代の輸送機として十分な性能や実績を有していることから、どの機種が選定されても、おかしくはありません。選定作業の開始はまもなくです。今後進むであろう、自衛隊新型輸送機の行方を引き続き注視していきたいと思います。