このクルマがカワイイって思うのって世界共通なの? 「35年前の日産車」が海外で大ウケな件

成長局面を迎える日本の電子部品

“元カノ”は超かわいい日産フィガロ──マイカーのことは“ガールフレンド”だと思っている筆者が、イギリスでのフィガロのフィーバーぶりに対し複雑な胸中を語り明かします。

“元カノ”がいまや世界のスターダム!?

「イギリスで日産フィガロが盛り上がっているらしい」

 この話を聞いたのはいつごろだったでしょうか?

 かなり以前、おそらく15年以上前に、タイの☆☆☆クラスのホテル(ホテル名は覚えていない)のエントランスに、フィガロが「ド〜ン!」と置かれオブジェ化されている写真をヨメがネットで見つけてきたことに端を発します。

 この時思ったのは、「ああ、よき余生を送っている個体も存在するんだなあ、フィガロの元オーナーとしてはうれしいばかりだよ」。

 しかしその後、海を越えてタイのみならずイギリスへ渡っている個体が複数存在することを知ります。その台数が5〜6台程度ならば珍騒動で済む話なのですが、なんと4桁の台数らしいのです。なぜイギリスでフィガロが? 元オーナーである筆者には気になる話です。

日産がフィガロに与えたアイデンティティとは

 ますはここで、フィガロを振り返ってみましょう。

 1980年代終わりから90年代初頭まで、世はバブル景気まっただ中。もちろん日本車もその波に乗り、高級車はもちろん、小型車に至るまで、新しい技術やデザインがどんどん形になり、クルマ好きにとっては天国のような時代でした。

 そんな中、「日常の中のちょっとしたお洒落、優雅な気分を気軽に楽しめる個性的なパーソナルクーペ」をテーマとして企画され、レトロ調にデザインされた小型のオープンカーが日産のフィガロでした。

 その当時、日産のアプローチとして話題を集めたのが、初代K10型マーチをベースに、レトロなデザインや過去の名車を彷彿とさせるデザインの限定モデルを作る「パイクカー」のプロジェクト。1987年に登場した丸目でパンプキンイエローのBe-1を皮切りとし、89年にはSUV風のパオが、さらなる第3弾として1991年にデビューしたのがペールカラー&デコラファッションのフィガロでした。

 1960年代のイギリス車に感化されたオープントップスタイルを持ち、かわいらしい見た目のボディに987cc 直列4気筒SOHCターボチャージャー付きエンジンを搭載し、76馬力を発揮(いわゆる“どっかんターボ”仕立て)。インテリアにおいても60年代の英国車を思わせるような気の利いた細工が各所にあしらわれていました。

 こうした日産の試みは大当たりし、中でもフィガロは大ヒット。当初、生産台数は8000台とアナウンスされていましたが、あまりの人気のために2万台まで増産され、3回にわたり抽選販売が行われたほどでした。なお、新車販売価格は187万円と当時としてはかなり高価でした。

エリック・クラプトンが愛したフィガロ?

 さて、本稿のテーマは「いまイギリスでフィガロが盛り上がっているらしい」というものですが、実はイギリスでのフィガロ人気は近年始まったことではないらしいのです。日本と同じ右ハンドルということもあり、かなり以前から多くの中古車がイギリスに輸出され、かつてのロンドンにはフィガロ専門の中古車店まであったようです。

 このイギリスでのフィガロ人気に一役買ったのが、イギリスの超大物ギタリスト、エリック・クラプトンが日本で中古車状態のフィガロを買い求めたこと、という噂があります。あのクラプトンがわざわざ日本でフィガロを!? しかし残念ながら、クラプトンが日本ツアーの合間に中古車ショップでフィガロを買い求めたというエピソードには特に裏付がないようです。

 ただ、イギリスでのフィガロの根強い人気は事実のようで、同地にはオーナーズクラブが存在し、2016年には誕生から25周年を記念してウォリックシャーでフィガロのオーナーズ・ミーティングが大々的に開かれた……という話を聞かされると「マジかよ!」とつぶやくしかないわけです。

 現在はオックスフォードシャーにあるフィガロ専門店がレストア車の販売、イギリスの法律に対応した車検(MOT=イギリスで義務付けられている自動車の年次点検制度)に対応、整備を手掛けており、日産がすでに製造廃止したパーツのリプロダクト品は、イギリス国内のみならず日本をはじめ世界中からネット購入することができるといいます。

 また現在、アメリカでは「25年ルール」でフィガロはクラシックカーとして認められています、これにより、イギリスからアメリカへの輸出、一般ユーザーへの販売及び登録が可能になり、海外での人気がより高まっているそうです。

 フィガロが懐かしのイギリス車っぽく見えるのは、どうやら世界共通の感覚のようです。つまり、開発当初に日産がフィガロに与えたアイデンティティは、時を経た現在においても、本場イギリスのみならず世界のクルマ好きにまで認められているということ。今さらながら、「オレの“元カノ”(=フィガロ)ってすごいだろ!」と自慢したくなるほどです。

 でも……昨今でも街角でフィガロとすれ違うと、元カノへの想いが今なお振り切れないのです……インテリアのベタベタ=成形劣化さえ直してくれる業者が見つかれば、いまもきっと乗り続けていたはずなのに(泣)。