「暖機運転は必要ありません」本当か? 今も一定いる“儀式のように行う人”実際どうなの?

成長局面を迎える日本の電子部品

クルマのエンジンをかけた後、すぐに走り出しますか? それともしばらく待ちますか? いわゆる「暖機運転」ですが、現代のクルマにおいても本当に必要なのでしょうか。

現代のクルマに「暖機運転」は必要?

 かつてクルマに乗る際は、エンジンを掛けてからしばらく発進せずに待つ「暖機運転」を行うことが必須の“儀式”でした。今ではあまり見かけなくなりましたが、果たして現代のクルマは、本当に暖機運転をする必要がなくなったのでしょうか。

 暖機運転は、クルマを最後に走らせてからある程度の時間が経過し、エンジンの各部が完全に冷え切っている時に行うもの。人体に例えて説明するなら、運動を始める前の準備体操やストレッチ、ランニングなどのウォームアップのようなものでしょう。

 特に、昔はクルマのメカニズムが高度でなく、かつ各部品の工作精度も今より低かったため、暖機運転によってエンジン本体やオイル、冷却水などを適温まで暖め、回転を安定させる必要がありました。

 また暖機運転のやり方については、儀式のように時間をかけてやる人、比較的すぐに発進し、穏やかに走らせながら各部に熱を入れる人など、人によって行程に違いが多く、しばしばクルマ好きの間で議論のタネになることもあります。

 では、暖機運転は現代のクルマでも行う必要があるのでしょうか。また必要であるなら、どんな温め方が適切なのでしょうか。

 まず、暖機運転が全く不要になったかと言うと、そんなことはありません。しかし、電子制御の燃料噴射装置が当たり前になった今日のクルマでは、あまり長時間の暖気は必要がないでしょう。とはいえ、現行車でも排ガスの浄化を適切に行うため、多少の暖機運転によって冷え切った触媒を活性化させる必要があります。

 そこで春~秋の季節にかけては、アイドリング回転のまま30秒、長くても1分ほど待つほうがいいでしょう。そうすればエンジン各部にもオイルが巡り、温度も徐々に適温へと向かっていくと思います。

 その間にシートベルトを締め、ナビのセットなどを済ませておけば、1分はあっという間のはずです。現代の一般的な乗用車の場合、そこまで経てばおおむね適切に暖機運転ができたと言ってもいいでしょう。

「待ちすぎ」も「すぐ発進」もダメ! 正しい暖機運転の注意点

 ただし、暖機運転を適切に行うには、このほかにもいくつか注意したいポイントがあります。

 まず昨今のクルマのメーターには、水温が低すぎる際に点灯する警告ランプが備わっていますが、これが消えるまで、アイドリング回転のまま待つのはやめたほうがいいでしょう。走り出せばエンジン回転が上がり、燃料噴射量も増えて適温まで素早く温まります。逆に必要以上のアイドリングは、場所によっては騒音で近所迷惑となる恐れもあります。空ぶかしなどの行為は論外です。

 といっても、完全に冷えきった状態からエンジンを始動し、すぐに走り出すのも極力避けるのが無難です。いくら技術が進歩したとはいえ、クルマがオイルで潤滑する装置を無数に備えた機械であることには変わりありません。エンジンを掛けた後は、内部にオイルが行き渡るまで少しだけ待ち、ほどほどのところで走り出すのがベターでしょう。

 ちなみにメーカー公式の見解を挙げると、例えばトヨタは「通常の場合は暖機運転は必要ありません」と公式サイトに明記しているほか、車種によっては専用マニュアルに、暖機運転の項目がないケースも少なくありません。つまり暖機運転はメーカーとしても、今やそこまで意識する必要がないものなのかもしれません。

 しかし、これらはすべて気候が穏やかな場合に限った話です。元整備士である筆者(坂上猛禽:ライター)として、極端に寒い日や気温が低い場所では、今も一定時間の暖機運転が必要だと最後に強調しておきます。