日本一「ゴチャゴチャした航路」が誕生!? 橋脚だらけ船だらけを進む“フル電動船”がスゴすぎた!「高い操船技術ないと無理」ちなみに“国内初”

成長局面を迎える日本の電子部品

民間では国内初となるフル電動の旅客船「Nihonbashi e-LINER」が東京の日本橋―豊洲航路に就航。未来感ある船もさることながら、各種の工事が同時並行で進む日本橋周辺を縫うように進む操船技術にも舌を巻きます。

国内初!民間企業によるフル電動旅客船

 リチウムイオン電池を搭載した電動の旅客船「Nihonbashi e-LINER」が2026年4月26日、東京の日本橋―豊洲航路に就航しました。三井不動産が推進する舟運プロジェクト「&CRUISE」の一環で、観光汽船興業(中央区)が運航を担います。

 同様の完全電動の旅客船はすでに高知県営渡船の「浦戸」が2025年から運航を始めていますが、民間企業としては「Nihonbashi e-LINER」が国内初です。

 三井不動産日本橋街づくり推進部の市ノ澤伸幸氏は「とにかく音が静か。振動も少ないし、いわゆる化石燃料特有の匂いもない」と電動船ならではのメリットを強調します。まずは1日9往復体制でスタートし、買い物客や観光客を対象に利用拡大を目指します。

「Nihonbashi e-LINER」が結ぶのは、三井不動産グループが運営するショッピングセンター「アーバンドックららぽーと豊洲」と、首都高速道路の地下化が決まり三井不動産や野村不動産などによる新しい街づくり(日本橋リバーウォーク)が行われている「日本橋」の間です。

 現在の日本橋川周辺では、2027年秋のグランドオープンを予定している「東京ミッドタウン日本橋」や2030年代竣工予定の「日本橋室町一丁目地区プロジェクト」をはじめとした大規模な再開発が進行中。将来的に首都高の高架橋が撤去されると景観が大きく変わり、広大な親水空間が生まれます。

「&CRUISE」ではこうしたプロジェクトと連動し、日本橋エリアとウォーターフロントを舟運でつなぐことで、新たな拠点形成へとつなげていく方針です。

 9往復の始発は豊洲を午前8時45分に出発する便で、最終は20時55分に日本橋を出発する便となっています。基本的には毎日運航ですが、豊洲側にある跳ね橋「アーバンゲートブリッジ」のメンテナンスや、乗組員のシフトの関係から週1回から2回の運休日が設けられています。

「『Nihonbashi e-LINER』は、通勤というよりも日常使いに加えて、やはり観光利用がメイン。豊洲―日本橋だけでなく今後、お台場や晴海などに繋がっていくのが一番理想だと思っている。そちらへ回遊性を高めていくという意味では、従来の(東京都が主導して実証実験を行ってきた)『舟旅通勤』とはターゲットが大きく変わってくる」(市ノ澤氏)

 東京では舟運が「定期航路として日々の生活の中に溶け込んでいなかった」と市ノ澤氏は話します。「まずはちょっと体験していただいて、いろいろな使い方を逆に教えていただければ、それを踏まえて、当社の企画や方針に跳ね返ってくると思っている」と述べていました。

こんなゴチャゴチャした航路ほかにあるか!? 「コンテンツになる」操船技術

「Nihonbashi e-LINER」が就航している日本橋―豊洲航路のポイントは、フル電動船というだけではありません。多くの橋が架けられ、観光船も行き交う日本橋川を、首都高の橋脚の間を縫いながら、全長17mの船が進んでいくダイナミックさです。

 豊洲から乗船すると、船はすぐ右に向きを変え、旧晴海鉄道橋、春海橋、相生橋をくぐりつつ晴海運河を北上します。橋の高さ制限をクリアする必要があることから、「Nihonbashi e-LINER」は全体的にフラットな印象を受けるデザインとなっており、客室の窓が海面に近いため、船の速度や波を間近で感じることができます。

 永代橋付近まで来ると、ちょうど隅田川を下ってきた屋形船とすれ違いました。この隅田川との合流点は船の往来が多く、東京が水の都の側面を持つことを感じさせる反面、「Nihonbashi e-LINER」が安全運航に気を使う非常に混雑した水域を走る定期航路ということがわかります。

 船は針路を左に変え、日本橋川の入り口である豊海橋をくぐります。船体に対して川幅が狭く感じる日本橋川を航行していると、目の前には千石船のレリーフが埋め込まれた湊橋のアーチや首都高6号向島線とその橋脚が次々と迫ってきます。

 東京証券取引所などがある兜町を横目に、圧巻の江戸橋JCT、そして「東京ミッドタウン日本橋」の工事現場を通り過ぎると日本橋に到着。片道約25分の船旅でした。

「日本橋は今、首都高地下化で台船がところどころにある。それらを縫って船着場に着くのは操船の技術力が無いと無理。これが一つのコンテンツになると思っている」(市ノ澤氏)

 今後、日本橋の船着場は、首都高の地下化工事の進展に伴って「東京ミッドタウン日本橋」に近い、江戸橋寄りの位置へと移される予定です。変化の激しい東京・日本橋の現在を、間近で見られる「Nihonbashi e-LINER」でした。