4月25日のAFCチャンピオンズリーグエリートでアル・アハリとファイナルを戦い、惜しくも0−1で敗れて準優勝に終わったFC町田ゼルビア。とはいえ、2024年にJ1初参入したチームがわずか2年あまりでアジア王者にあと一歩まで迫ったのは偉業と言っていいはずだ。
「(リヤド・マフレズと対峙して)元プレミアリーグだろうが何だろうか、みんな人間なんだなと思いました。手が届かないわけじゃないですし」と3バック中央に陣取る岡村大八も話していたが、それだけの自信と手応えをつかんで日本に戻り、明治安田J1百年構想リーグの終盤戦に気持ちを切り替えているのだ。
その一発目となった4月29日の水戸ホーリーホック戦は、超過密日程による時差と疲労を黒田剛監督も考慮。大幅なターンオーバーに踏み切り、PK戦の末に勝ち点2をゲット。幸先のいい一歩を踏み出し、5月3日は鹿島アントラーズの本拠地・メルカリスタジアムにやってきた。実のところ、町田はJ1昇格後、この地で一度も鹿島に勝ったことがない。「このスタジアムで勝つことが、日本では本当に1、2番に難しい」と古巣対戦となる昌子源も神妙な面持ちでコメントしていたが、今回こそは鬼門突破を果たしたかった。
その意気込みは前半から色濃く出ていた。町田はシステムのミスマッチを生かし、サイド攻撃を多用。序盤から林幸多郎、エリキらが次々とクロスに飛び込んで、鹿島ゴールを脅かす。開始16分のエリキの決定機は名手・早川友基に止められたが、前半のシュート数は5対3で鹿島を凌駕。ゴールこそなかったが、主導権を握りながら、試合を折り返した。迎えた後半、鹿島はギアを上げてきて、立ち上がり5分にワンチャンスから先制点を奪う。柴崎岳の右CKを鈴木優磨がファーで折り返し、これを昌子がヘッドでクリアした。しかし、クリアが小さくなり、柴崎に拾われ、頭で中に入れられたラストパスをレオ・セアラに仕留められてしまったのだ。
「チームとして一瞬、集中力を欠いた? そう言われても仕方ないところだと思いますし、テテのところで弾けたんちゃうかなと。レオをフリーにさせてしまったので。セットプレーは鹿島の強みの一つ。どんなに流れが悪くても取ってくるんで、彼らが先に先制すると難しくなりますね」と昌子は常勝軍団の底力を知るだけに、悔しさひとしおだった。
それでもわずか3分後に自身のFKから背後に抜けたナ・サンホに精度の高いボール供給し、テテ・イェンギの同点弾を演出したのはさすがと言えるだろう。「僕からの右足はチームの武器の一つ。今日はちょっと安定感がなくて、全体に精度を欠いていましたけど、あの場面は(植田)直通と濃野(公人)君の間が絶対に空いてくると思った。1本あるかないかのサンホへのボールを通そうと思っていたんで、そこを通せたのでOKです」と瞬時のリカバリーに昌子自身も手ごたえをつかんだ様子だった。
ここから一進一退の攻防が続き、鹿島に決定機も作られたが、1−1のまま90分が終了。PK戦へともつれ込んだ。名手・谷晃生が陣取っている以上、町田が有利かと思われたが、この日は下田北斗と前寛之が失敗。PK負けで勝ち点1にとどまった。
「でも、90分で見れば引き分け。相手がやりたいような試合はできなかったし、鹿島さんも多分俺らのことは嫌やと思ったと思う。今のウチは何点も取れるチームでは正直ないので、限られたチャンスを確実に決めることが大事。そこもサウジでACLEを経験して痛感した部分ではあるので、質を求めていきたいです」と首位・鹿島と1試合少ない中、勝ち点9差という厳しい現実を踏まえながら、昌子はあくまでJ1百年構想リーグ優勝を貪欲に狙っていく構えだ。
アジア王者に再チャレンジしようと思うなら、高いハードルをクリアしなければならない。2025年の天皇杯王者である町田はACL2の出場権は確保はしているが、今回のJ1百年構想リーグで優勝、もしくは準優勝して、ACLE参戦を果たしたいところ。残り試合を全勝するくらいの勢いと強さで突き進むべきなのだ。
「ACLE決勝前に『昌子選手とか中山(雄太)選手のように大舞台を経験している選手がいる』とみなさんからよく言われましたけど、2〜3人が知っていても意味がない。みんなで経験したことが来年、再来年に生きるんです。失点シーンで、幸多郎の相手だったトニーがオーバーヘッドしてるんですけど、あれって変な話、当たってなくても、痛がったら多分ファウルもらえてた。俺とか雄太があそこにいて、それをやっていたら、もしかしたらもらえていて、失点はなかったかもしれない。その後、マフレズがクロスを上げたシーンでも左足を空けていて、普段だったらできていたことができていなかった。そういうのをみんなで経験して、乗り越えていかないと、頂点はつかめない。僕はそう思います」
昌子がACLE決勝の重要局面を具体的に振り返ったように、そういった細部の積み重ねが町田を強くする。まさに黒田監督がそこを徹底してきたから、このチームは短期間で急成長できたのだ。その流れを持続させることが、キャプテンの指名である。頭を金髪にして、新たな気持ちでサッカーに向き合っている男の強靭なリーダーシップが、町田をより強い集団へと引き上げるに違いない。
取材・文=元川悦子
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