遭遇できたら超ラッキー! JRの超豪華「特別車両」その運行回数は? 至高の内装を誇る現代の“鳳輦”

運賃値上げで鉄道保守工事に注目

我が国で皇族が鉄道に乗車されたのは、1872年に最初の鉄道が開業した時のことです。その時から天皇陛下が乗られる特別列車は「お召列車」と呼ばれるようになりました。現代のお召列車を担うE655系を紹介します。

鉄道開業とお召列車の誕生

 日本で初めて鉄道が開通したのは、1872(明治5)年の新橋~横浜(現・桜木町)間ですが、正式開業日とされ、後に「鉄道の日」となった10月14日には、すでに皇族の姿がありました。明治天皇と関係者が乗るお召列車が横浜まで往復したのです。

 この時は「形式A」と呼ばれる上等車が御乗用車となっていました。客室は3室に分かれており、当時は「サロン車」と称されていたようです。

 天皇の専用車両として初めて製造されたのは、1876(明治9)年に製造された「形式AJ」で、現在もさいたまの鉄道博物館で保存されています。当時の美術工芸の粋を尽くした御座所には、玉座としてのソファと小型の円形ソファが置かれていました。

 車体に天皇の意思(「停止」「徐行」「適度」)を機関士に伝える「運転制禦装置」があり、実際にこの装置によって列車を停止させたこともあったそうです。

 形式AJは、1911(明治44)年に鉄道院が車両称号規程を制定したことにより、「御料車」と呼ばれることになりました。それまでは「玉車」、あるいは「鳳車」とも呼ばれていました。「御料車」は各種18両が製造され、このうち「1号御料車(3代目)」「2号御料車(2代目)」「3号御料車(3代目)」「14号御料車」が現存。さらにこのうち最も新しいのが「1号御料車(3代目)」で、1960(昭和35)年に製造されました。同車は、供奉車の460号・340号・330号・461号と固定編成を組んでいますが、これらの供奉車は1931(昭和6)年の製造であり、当時すでに老朽化が進んでいました。

新時代の皇室用車両E655系「なごみ(和)」

 こうしたことから、JR東日本は2004(平成16)年、皇室・国賓用として新たな車両の製造を発表しました。それがE655系「なごみ(和)」です。名前には「ご乗車になる全てのお客様になごんでいただきたい」という思いが込められています。それまでの「お召列車」とは異なり、皇族や国賓が利用する「特別車両」を外して、「ハイグレード車両」による団体専用列車として運行することも想定していました。

 車両の性質上、JR在来線のどの電化区間も運行できるように直流1500ボルトと交流20000ボルト(50/60Hz)に対応するほか、地下区間も走行できます(実際に京葉線東京駅に乗り入れた実績があります)。また、機関車牽引で非電化区間も運行できるようにディーゼル発電機を2基搭載しています。このため、前頭部の連結器は電車用ではなく、機関車と連結可能な密着自動連結器となっています。パンタグラフも狭小トンネル対応で、耐寒耐雪仕様です。

 走行性能は当時のE653系特急形電車に類似し、最高130km/h、起動加速度2.0km/h/sといったスペックも同じです。なお、「特別車両」はE257系、E653系、E657系に組み込まれて試運転が行われたこともあります。

 外観は品格を高く保つために「漆色」で、光線の当たり具合で色合いが変化する分光性塗料の「マジョーラ塗装」が施され、3本の金帯が配されています。実車を見ると、角度によって見え方が変わり、高級感のある色合いです。側面の一部機器類はカバーで覆われ、お召列車として運行するときは前頭部の連結器もカバーで覆います。

 E655系は6両編成ですが、うち5両の「ハイグレード車両」は営業上「グリーン車」という扱いです。車内は木目調のパネルが張られており、荷物棚はハットトラック式で「蓋」が付いています。座席は電動式リクライニングシートで1+2列。座席間隔は1160mmで新幹線のグリーン車と同じです。

 座席の表面には市松模様があり、上品な印象です。付帯設備は枕、レッグレスト、インアームテーブル、座席背面のマガジンポケット、ドリンクホルダー、読書灯、スポット照明と盛りだくさん。運行開始当時はこれに加え、各席にシートモニターが装備されていて、車内販売の注文、ゲーム、テレビ放送の閲覧、ビデオ・音楽のコンテンツが楽しめました(現在は撤去)。

 座席の座り心地は、JR東日本のグリーン車の中でもおそらく一番柔らかい座席で、グランクラスに通じるクッション性を感じます。座面は少しだけリクライニング時に沈みます。リクライニング時のレッグレスト展開にも無理はなく、筆者(安藤昌季:乗りものライター)が乗った際の会津若松→上野間の約5時間も疲れなく過ごせました。ただ、全体としては質実剛健な印象で、座席の横幅が非常に広いとか、インテリアが華美とか、そうした豪華さは感じません。

孤高の存在 E655系のVIP車両と特別車両

 3号車は「VIP車両」で、専用のグリーン席が設置されています。基本構造は他の車両と同じですが、座席は黒い総革張りで高級感が増しています。団体利用時も別料金が設定されている区画です。実際に座った人に聞いたところ「革張りなので、リクライニング時にやや滑りやすい」とのことでした。

 3号車にはVIP個室や応接間、ドレッサーコーナーも設けられており、床のじゅうたんには枯山水を思わせる模様があしらわれるなど、高級感が強い車両です。なお、車両間通路の横の壁面に折り畳み座席があるのは、要人警護を必要とするこの車両ならではの特徴です。

 特別車両のE655-1は、皇室、あるいは国賓が利用する場合のみ連結されます。他の車両には「クモロ」などの分類記号がありますが、この車両にはありません。

 室内構成は次室、特別室、休憩室、トイレ。天皇陛下や皇后陛下がお乗りになる特別室は、大分県産の高級杉材を壁・天井・テーブルに用いています。ソファは菊柄の絹織物が張られ、床には9種類の伝統文様を配した手織りのじゅうたんが敷かれています。休憩室には寝台にもなるソファと、三面鏡付きの化粧台があります。

 2007(平成19)年の登場以来、皇室・国賓用のお召列車として運行されたのは13回のみ。今上天皇は特別扱いを避けられるお考えから、特別車両は今後も国賓来日時などに限って運行される超レア車両となるのでしょう。

 E655系は、制度上は専用のグリーン料金も設定されていますが臨時列車として一般販売されたことはなく、特別車両と3号車のVIP個室以外がJR東日本の旅行商品で乗車可能です。今後も孤高の存在であり続けるであろう車両といえます。