中国・福建省の最前線基地で撮影された1枚の衛星画像が波紋を呼んでいます。そこに写っていたのは、現代戦では到底通用しないはずの旧式戦闘機「J-6」でした。なぜ今さら半世紀前の骨董品が引っ張り出されたのでしょうか。
戦闘機としては通用しない老朽機の新たな使い方
中国の成長とともに東アジアの戦略環境が悪化しつつある現在、「台湾有事」はもはや抽象的なシナリオではなく、具体的な軍事計画として各国の防衛当局に共有される段階に至っています。
そうした緊張の只中において、人工衛星から撮影した1枚の画像がいま話題となっています。台湾海峡沿岸に位置する福建省の龍田空軍基地において、旧式戦闘機J-6の存在が確認されたというのです。
J-6は、ソ連が開発した戦闘機MiG-19を中国がライセンス生産したモデルです。原型のMiG-19は、1950年代に登場した東側初の実用超音速戦闘機として知られ、双発エンジンによる優れた機動性と単純明快な構造は、当時としては優れた迎撃性能を実現していました。
しかし、設計自体は第2世代ジェット戦闘機の水準であり、ステルス性や高度なセンサー融合、ネットワーク化戦闘能力などは備えていないため、現代戦には対応できる機体ではなく、もはや第一線の戦力とは見なされていません。
それにもかかわらず、いまなお相当数のJ-6が稼働状態で維持されているという事実は、わずかに残存する旧式装備と観点にとどまらず、「別の役割」を与えられている可能性もあると推察できます。すなわち、無人化された自爆型ドローン、言い換えれば巡航ミサイルとしての再利用です。
実はJ-6の自爆型ドローン化は突然現れたものではなく、かなり前から知られていました。
その役割は近年の戦場におけるドローン運用の潮流とも合致します。安価で大量に投入可能なプラットフォームを用い、敵の防空システムが対応できないほどの飽和状態で攻撃する手段に使うという発想は、すでに複数の紛争で実証されています。
老朽戦闘機を「過去の遺物」と侮るなかれ
元々有人機であるJ-6は既存の自爆型ドローンと比べても大きく、機体容積を活かして相当量の爆薬を搭載可能です。加えてジェット機としての高速性能を保持している点で、通常のプロペラ式ドローンとは一線を画す脅威となり得ます。
中国は老朽化した航空資産を、廃棄対象としてではなく戦力体系の一部として再利用しているのだと言えます。無人機へと改修することで、パイロットの損耗を回避しつつ、敵防空網への突入を前提とした「使い捨ての特攻兵器」として運用するのであれば、そのコストパフォーマンスは極めて高いと言えるでしょう。
さらに重要なのは、これらの機体が前線に近い航空基地へ進出したという点です。後方の保管施設ではなく、台湾にほど近い福建省の基地に姿を見せたというのは、実戦運用を想定した配置、または訓練の一環と見るのが自然であり、それは中国側がこの「無人J-6」を一定の戦術的価値を有する戦力として評価していることを示唆しています。
すなわち、第一波攻撃における防空網の消耗誘発、あるいは重要目標への飽和攻撃といった任務に投入される価値があると見なされている可能性があります。
航空作戦が、最先端のステルス戦闘機や精密誘導兵器といった存在に重点が置かれていることに変わりはありませんが、それと並行して、低コストで大量投入可能な「準ミサイル的航空機」を組み合わせることで、より複雑かつ対処困難な攻撃体系を構築する。そこにJ-6の新たな価値を見出しているのがわかります。
このような動きを鑑みると、台湾海峡を巡る軍事バランスは、こうした多層的な戦力運用によって、従来の定量的比較では測りきれない段階へと移行しつつあると捉えることが可能です。
J-6という過去の遺物が、無人化という新たな役割を与えられることで再び戦場に姿を現した事実は、軍事技術の進化が必ずしも「新しいもの」だけによって担われるわけではないことを、改めて示していると言えるのではないでしょうか。