【ワシントン、北京時事】米イスラエルの対イラン攻撃が招いたエネルギー危機が、米中関係に影響を及ぼしている。原油輸送の要衝ホルムズ海峡を舞台に、米国とイランがそれぞれ封鎖措置を講じ、中東産原油に頼る中国への供給が滞る恐れがあるためだ。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談まで1カ月を切る中、両国の駆け引きが続く。
◇大型商談の布石
「海峡封鎖により、中国の買い付けが一時的に停止するとみている」。ベセント米財務長官は15日、ホワイトハウスで記者会見し、米軍がホルムズ海峡周辺で開始した海上封鎖が、中国の原油購入に影響を及ぼしているとの認識を示した。
ロイター通信が報じた欧州調査会社「ケプラー」の調べによると、中国は2025年にイランの輸出原油の8割超を購入。1日当たり約138万バレルと、中国が海上輸送で購入する原油の13.4%を占めるという。
イランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、米軍がイラン港湾に出入りする船舶の航行を阻止する封鎖で対抗したことで、イラン産を含む中東産原油の中国への流入は支障を来している。トランプ氏は「中国のために海峡を開放する」と語るが、封鎖を通じて中国に揺さぶりをかける思惑も透けて見える。
トランプ氏は「数週間後に訪れた際、習主席はしっかりと抱きしめてくれるだろう」と秋波を送る。狙うのは5月訪中時の大型商談の実現だ。米国産原油や天然ガスの売り込みを図る構えで、一連の動きはその「布石」とも受け取れる。
◇もろ刃の切り札
17日夜、イランが海峡の「全面開放」を発表すると、中国メディアは一斉に速報した。習政権はイランの決断を歓迎する姿勢だ。
イラン産原油の輸送が滞っても、中国がロシアなどからの代替調達でしのぐことは可能とされる。だが、輸入原油の4割以上がホルムズ海峡を通過しており、中東全体でみると依存度は高い。封鎖の影響は小さくない。
習政権は封鎖長期化への懸念から友好国イランへの同調姿勢を弱め、圧力へとかじを切った。王毅共産党政治局員兼外相は15日、イランのアラグチ外相との電話会談で「海峡の正常な航行は国際社会の願いだ」と強調。対米協議の継続も促し、早期沈静化へシグナルを送った。
ホルムズ海峡封鎖の影響の大きさを踏まえ、中国は原油調達先の多角化を進めている。米国からの購入も視野に入れているとみられ、対米交渉の切り札とする可能性もある。だが、競争相手からの調達は「もろ刃」の一手ともなりかねない。首脳会談をにらみ、資源調達を巡るつばぜり合いが激化しそうだ。
〔写真説明〕トランプ米大統領(右)と中国の習近平国家主席(AFP時事)